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ハッピーアワーではまった落とし穴:東心斎橋での意外な出来事

 不肖がよく飲み歩く北新地には、着飾った女性のいる高級店のほかに、実は数百円でビールを飲むことのできるお店も多々あります。「平日の8時半まではハッピーアワーです」と、生ビールが半額になるサービスも見かけます。

 時はさかのぼって、1998年(平10)9月1日

 すさまじい残暑の中、不肖は大阪の電気屋街である日本橋をうろついていました。海外勤務していた後輩君に頼まれ、パソコンの修理に歩き回っていたのです。
 残暑に加えて室外機から熱気が漂い、蒸し暑いったらありゃしない。

 用事を終えた不肖は、当時の行きつけだった東心斎橋のバーへと向かいました。
 そう、お目当てはハッピーアワー。1杯800円の生ビールが400円になる。
 道中ずっと
「暑い。のどが渇いた。冷房の効いた店で生ビールを飲もう」
 
と、そればかり考えていました。 

 確か午後6時ごろだったから、ハッピーアワーには十分に間に合う。
 どうやら最初の客だったらしく、店内は僕だけ。

 顔なじみのバーテン君に「生ビールお願いします!」と叫んだ僕は、それから延々と飲み続けました。
 チェーンスモーカーならぬ、チェーンドリンカー状態。あっという間にピルスナーを空けるから、中には白い泡を残したままです。

 あまりの飲みっぷりに目を見張るお兄ちゃんたちの前で、たぶん10杯は一気に飲んだでしょう。
 あれほどの酒量をあれほど立て続けに短時間に飲んだのは、後にも先にもこのときだけです。それほどのどが渇いていたし、それほどうまかったんです。

 大満足して上機嫌の僕は、バーテン君たちにお礼を言って財布を開けました。

「ありがとう。ハッピーアワーのおかげで、こんなにたくさん飲むことができました」

 彼らの顔色がサッと変わったのが、薄暗い店内でも分かりました。

「あの…。ハッピーアワーは、きのうで終わったんです」

 なんと! 不肖が当てにしていた半額サービスは、夏季限定だったんです。
 だから当然、通常料金。食事もせず、隣に「一枝」さんも座らず、ただビールだけに8000円。

 以来「ハッピーアワー」の看板を見ると、注意書きがないか慎重に見極めています。
 幸か不幸か「期間限定」にはその後、お目に掛かりません。

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