行政書士開業に向けての準備について その2
行政書士登録までにすること・してはいけないこと
今日も行政書士を始めたい人に対してのメッセージとなります。
だいたい行政書士になって失敗する方というのは、滑り出しから順調にスベり出している人がほとんどなんですよ。
ですから滑り出す前からスベらないようにちゃんとしておかなければいけないということです。
そんなお話です。
開業講座の類に騙されない
行政書士試験合格者、あるいは行政書士試験受験を検討されている方向けに、開業講座みたいなものがいろんなところで開かれています。
例えば、資格試験対策を教えている資格学校。例えば、有名な事務所を既に運営している有資格者。その他何パターンかありますが、よく言われているのが以下のようなことです。
行政書士法に定められている業務にこだわってはいけない
専門性を打ち出せ
事務所のホームページは立派なものを作れ
私はこれ、全部間違っていると思います。それではひとつひとつ解説していきましょう。
行政書士法の外にある仕事はする価値無し
以前「行政書士には『行政書士はこの書面を書きなさい』という決まりがない」みたいな話は申し上げましたが、それでもやっぱり行政書士がするに相応しい仕事っていうのはあると思うんですね。
以前に話題に出したのは、許認可関係書類と事業計画書でしたね。あとは入国管理の仕事ができることも申し上げました。
それ以外にも、多くの方がご存じではないでしょうか、免許の試験場前には多くの行政書士事務所が立ち並んでいます。そして試験場に提出する書面を依頼者に代わって代筆しています。まるで行政書士が作らなければ受け取ってもらえないかのような口ぶりで書面の代書を行っていますが、あれ別に行政書士が書かなければ受け取ってもらえないような性質のものではありません。最近は免許の試験場の職員も柔らかくなりまして、自分で書いて提出したものに間違いがあればどのように訂正したらいいのかちゃんと教えてくれます。
非常に詐欺臭い仕事の取り方ではありますが、一応合法の範囲内です。ただ、やっぱり一般市民から苦情があるんでしょうね。全国的に減りつつあるそうで、私が住んでいるところを管轄する試験場前にはもうそういう店はなくなりました。
あとは車庫証明があるでしょうか、自動車を買ったときに届け出なければいけない駐車場の図面を引いて届け出る。これは、車を売っている店が付随サービスでやっていることも多いですけどね。
車関係は結構多く名義変更・住所変更・廃車・車検切れなどによる抹消登録・ナンバープレートの同番再交付・封印の取り付けなどがあります。
特に地方の方に取っては車って生活必需品だと思うんですが、その割に何かと言っては降りかかってくる届出義務の類が面倒くさすぎるんですよね。1日仕事を休まなければいけないことも珍しくありません。
そこでそういう手続きを代わりにやりますよ、という行政書士がいるということです。ニッチな仕事だなあとは思いますが、別に法律違反ではありません。封印の取り付けは行政書士の仕事じゃないよなあとは思いますが、車関係の手続きの付随サービスとしては許容範囲内だと思います。
しかし、開業講座の類が言いたいことはそういうことではないと思うんです。前稿でも述べました「民事法務」を強く勧めており、さらにはそこから派生するような雑事もついでに仕事だと強弁して行って金を受け取ってしまえ、というようなことを言ってます。
もちろん「強弁して金を受け取れ」という直接的な表現はしていませんよ。ですが、言っていることを要約するとそういうことを言っているのだと評価するしかありません。
行政書士の民事法務とは
行政書士が言う「民事法務」に、明確な定義があるわけではありません。というより、定義できないのです。
「民事法務」には大きくふたつあると思います。ひとつは、誰かと誰かが対立したときに、それを解決の方向に持っていく仕事。もうひとつは、誰かが亡くなったときに、その後の手続きをする仕事。
対立解決型の民事法務の典型は、詐欺被害解決というものです。例えば誰かが何らかの業者からものを買ったにもかかわらず、それが送られてこない。あるいは、値段にはとても見合わない粗悪品を送ってきた。ちゃんとしたものを送れ、または返品・返金対応をしろ、そういうものです。
最近はネット通販が実店舗ショッピングより優勢ですので、ネットで買って送られてくるというケースが多いのですが、対面販売でそういうことが起こることも結構あります。また、申し込みもないのに一方的に品物を送りつけてきて「代金を払え」と要求しなんてものもあります。
いずれにせよ行政書士が行うのは、依頼者の意見に従って「ちゃんとしたものを送れ」か「返品・返金対応しろ」というのに法律で肉付けをして内容証明郵便を送るだけです。
内容証明郵便を送るだけならまだいいとしましょう。周到な業者でそういう自分たちの商売に対してちゃんと言い訳を用意していたとします。そうしたら、当然何らかの手段でその行政書士に反論を連絡してくることは考えられますよね。
その反論に対してまた行政書士が何か言い返すとします。そうなると、これは交渉代理にあたり弁護士法違反だと考えられます。弁護士からそう問われたら行政書士には返す言葉もないと思います。
ね?定義しちゃったら、その瞬間弁護士法違反が確定してしまうんです。これが民事法務の怖さです
そんな法律違反一歩手前の仕事をしていて、売上は1通あたり数千円だと思いますよ。紹介で連鎖して次々依頼が舞い込むということも考えにくいですし、よっぽど汎用的な定型文を用意しておいて固有名詞等だけ入れ替えて送り数をこなす、というようなことでない限りまともな収入にはならないと思います。
民事法務その2・離婚問題
世間で起こる困りごとのひとつが離婚問題です。どういうわけか、新人女行政書士がやりたがるのがこの離婚問題です。
これなんかもう、対立が発生しちゃってるわけじゃないですか。行政書士が入り込む隙間なんて既にないわけですよ。やっぱり定義した瞬間弁護士法違反が確定してしまいます。
どちらかの立場に立って相手と交渉なんてどストライクの非弁行為ですし、
どちらかに対してだけアドバイスをするのも限りなくアウト臭いです。
夫と妻が罵り合い、半狂乱になりながらようやく着地した「落としどころ」を紙に書く、行政書士本来の仕事はそれだけでしょう。その時に「こういう表現をしておいた方がわかりやすいと思いますよ」というアドバイスをするぐらいは行政書士業務だと言えるでしょう。
そして、こうやって行政書士が作成した合意文書は、単独では意味がありません。「いったんはこの条件で合意した」ということを、第三者として証言できるだけです。これを「行政書士におまかせあれ」と言って行うのは、まだギリギリセーフな範囲ではありますが、極めて誇大広告だと思います。
「まだ離婚したいのかどうか自分でもわからない」という人
実は、今日のように離婚が当たり前の社会になっても「配偶者に対して腹が立ったことがあったのは確かだが、だからと言って離婚したいのかどうかはまだわからない」と仰る方は結構いらっしゃいます。まあ、一度は人生をともにしようと決めた相手ですからね。
「離婚してやる!」と言って行政書士の元を訪れ、ちょっと冷静になったら「今すぐに離婚というのも…別居して少しクールダウンするべきかな」なんてトーンダウンするなんていうこともよくあるんですね。
そんなときに「それならば別居協議書作ったらどうですか?」なんて持ちかけてそういうものを書いている人もいます。これなんか、はっきり言って誰が書いてもいい書面ですよね。
まあ、契約は自由なのが原則ですから「別居中にはこういうルールで行こうね」という約束をするのも、「そのルールを記した書面を行政書士に書いてもらおう」という契約をするのも自由ですよ?
しかし、法律の世界に「別居協議書」なんていう書面はありませんし、特段法律的な拘束力が出てくるわけでもありません。
いずれちゃんと「何を書いてもいいのが行政書士」ということは稿を改めて述べるつもりではありますが、何を書いてもいい以上こういうことこそが行政書士の仕事ではあります。しかしこれは大した金額を取っていい書面だとは私は思いません。
やっぱり、行政書士法内で仕事をした方が安全・確実
と言うわけで、「誰かと誰かが対立したときに、それを解決の方向に持っていく仕事」を説明しただけで結構長い文章になってしまいましたので本日はここでいったん打ち止めとさせていただきたく思います。
世間一般の行政書士さんたちが手がけている許認可関係の仕事をした方が、他士業法違反の問題が起こる可能性は低いし、単価も高いし、紹介の連鎖で仕事が入ってくる可能性も高いし、安全でしかも確実に事務所を運営していける可能性はずっと高いわけですね。
というわけで、次稿では「誰かが亡くなったときに、その後の手続きをする仕事」について触れたのち、
専門性を打ち出せ
が間違いだという話から始めたいと思います。
繰り返しになりますが行政書士で失敗する人というのは、滑り出しでスベってしまっている人がほとんどなんです。ですから、登録・開業前の準備から、滑り出しでスベらないようにする方法まで、これは重点的に語るべきだと考えています。
はっきり言って、もう何年も行政書士事務所を維持していらっしゃる方というのはそれだけで結構な成功者だと思います。そんな方に対して、私から語ることというのはほとんどありません。
というわけで今日はこれで失礼をいたします。
最後にやはり宣伝です。
私はココナラで行政書士に関する相談を承っております。
↓30分バージョン
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小説なんかも書いております。
こちらもぜひよろしくお願いいたします。
今日もありがとうございました。
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