行政書士が何をする人か知っていますか?
行政書士って何する人?
今回もご覧いただき、ありがとうございます。
今年も行政書士試験が近づいてまいりました。希望に燃える受験生には冷や水をかける結果にはなるかも知れませんが、言っておくべきことは言っておかなければなりません。
こうやって注意喚起しなければいけないこと自体おかしい話なのですが、各都道府県の行政書士会、行政書士会連合会、行政書士試験センター、各資格学校や通信講座、誰もこのことを言わないのですから私みたいな在野の人間が言わなくてはしょうがない、というところです。
行政書士は「書面作成業」である
まず、このことから申し上げなくてはなりません。なんとも情けない限りです。
行政書士の仕事は、依頼者に代わって紙に文章を書く仕事です。しかも、作成するに当たって専門的知識や技術がなければ後々問題になるような重要な書面にはそういう難しい書面を書くのが専門の人がいます。
行政書士は、そういう難しい書面を除く書類を書くのが仕事です。とはいえ、それだったら誰でも文字の読み書きぐらいはできるいまの世の中、出番はないんではないかという声もあるでしょう。それは、半分当たりで半分間違いです。
他人に代わって書面を書くのが仕事であるということは、例えば市役所の窓口に常駐して住民票の写し交付申請書類を代筆したっていいんです。ただ、いまの世の中誰もそんなことを他人には頼まないというだけの話です。
では、行政書士が書くべき書類とは何なのか?
行政書士は、法律によって「この書面を誰かに代わって作成してその作業の対価を受け取っても良い」という書面が特に定められていません。
いずれ稿を改めてお話ししようとは考えておりますが、歴史的に「代書人」から枝分かれして現在に至る法律系士業には専門の書類があります。例えば司法書士なら訴状と登記申請書類、税理士なら税務申告書類などなどです。これらは、無資格者が行ったら法律違反になります。ですので、もちろん行政書士の仕事ではありません。行政書士の資格しか持たない人が代理作成したら罰せられます。
専門的ではないけど素人では難しいものを書くのが行政書士
というわけなのですが、皆様こういうものをご覧になったことはないでしょうか。
建物の建設工事を行っている場所には必ず掲示されていますね。建物というのは、非常に大きくて重くて、しかも中に人が入るものです。なのでいきなり壊れたりしたら大事になります。
ですので、事前に図面等を引き、強度計算を行った上で「こういう建物を建てたいのですけど構いませんか?」と行政機関にお伺いを立て、それが通って初めて具体的な建設作業に入れるんです。
図面を引くのはおそらく建築士さんの仕事でしょうが、行政庁に持っていくのは行政書士の役目です。このときかなりキツい突っ込みが入りますので、細かいところまで矛盾や齟齬がないようにチェックしなければいけません。
建設会社の社長さんは、そういった建築関係に関する法律や規則を熟知しているということは普通ありません。大工さんが建築士を兼ねているなんていう例がほとんどないのと同じです。だから、窓口に申請書類一式をもっていってOKかNGかの判断を仰ぐのが行政書士の役目です。行政書士の仕事で一番手堅いのはこれだと私は思います。
その他行政書士の仕事
行政書士の仕事にはまだ他に結構あります。産業廃棄物の処理の可否、飲食店の出店許可などなど、行政庁に許可をもらう、あるいは届け出が必要な仕事をしていいかどうかの書面を開業希望者に代わって作成するのが行政書士の仕事です。
例えばの話ですが、バーを開店するとします。バーというのは、法律上では「風俗営業」に当たります。この辺、一般の日本人が使う言葉と違うところなんですが、明かりの明るさが一定以下のところで、飲食物を提供している店があったらそれは「風俗営業」に当たります。たとえその「飲食物」がラーメンであってもそれは風俗営業になってしまいます。
風俗営業を行うには、どこにどういうふうに椅子や机を置き、どのぐらいの高さにどのぐらいの明るさの照明を置き、従業員が作業を行うエリアはどこで、客とどのように隔てて…ということを図面起こししなければいけません。バーの店長がそんなことは知らないでしょう。だから行政書士に依頼するわけです。
風俗営業に該当する店をオープンするには、近所に小学校等がないところなど条件が厳しいです。まごまごと手間取っていて、その間に近所に保育園でも作られたらその店長のそれまでの準備が無駄になります。しかも、事業用に借りる不動産は最低でも半年借りなければいけません。たとえ途中でダメになっても半年分の家賃は払わなければいけないのです。だから行政書士にお金を払ってでも迅速な手続きを目指すわけです。
行政機関に提出する書面を書くから行政書士?
ネットでもそのように仰っている方は多くいらっしゃるのですが、既に述べましたように「専門家がいない書面を書くのが行政書士」なのですから、仕事として行政機関には提出しない業務を得意にしている行政書士もいることはいます。
例えばの話ですが、銀行に提出して融資の可否を問うための事業計画書を作成することに長けた行政書士も数は少ないですがいます。
ですので必ずしも行政庁に提出するものしか書かないわけではないのです。
それならば何で「行政」書士なの?という疑問も湧いてくるでしょうが、それは稿を改めて後日お話しすることにします。
合格したら登録開業したい人はまず行政庁相手の仕事を!
というわけで、今年の受験生の皆様は今ごろ最後の追い込みでこのnoteをご覧になっていらっしゃったりはしないとは思いますが、試験が終わってからご覧いただけることを信じて書いておきたいと思います。
合格して、登録開業したいなら、まずは地元で人脈を頼りに主に中小企業の社長さんのような人たちに営業をかけて許認可の仕事をディスカウントでもなんでもいいのでまず1件請けることをお勧めします。
それはとりもなおさず行政書士ができる仕事で最も安全安心で、しかも結構な金額が手に入り、さらに紹介の連鎖で次々に仕事が入ってくる可能性が高い業務だからです。
間違っても最初から「民事法務」なんていうものを狙いに行かないで下さい。この民事法務という言葉、行政書士という業界が作り出した最悪のスラングだと私は思っています。「売春」を「援助交際」だの「パパ活」だのと言い換えるのと同様の悪辣な言い換えです。
あなたが民事法務一本で生きていきたいなどと考えようものなら、単価は安いし紹介で連鎖するわけでもないし、しかも弁護士その他士業から「我々の職域に踏み込んではいないか」と常に監視されて一歩間違えれば塀の中、という生活を送るハメになります。
一番安全で確実なのが行政庁を相手にした許認可なのです。
行政書士事務所に煌びやかなホームページなど要らない
あなたがまだ合格していないのか、合格後準備中なのか、既に開業しているのか、それは私にはわかりません。
ただ言えるのは、行政書士に煌びやかなホームページなど要らないということです。
上で述べましたように、地元の中小企業の社長などに営業をかけて行政庁を相手に主に許認可の仕事をするのが行政書士の一番堅い仕事です。
そういう中小企業の社長さん方は行政書士を探すのにインターネット検索なんかかけるでしょうか?縁もゆかりもない人を、ただ「検索かけてみたらヒットした」というだけで頼るでしょうか?
中小企業の社長というのは孤独な仕事です。部下はいても同僚はいない。何かで困っていてもうっかり口にもできない。
結局、そういう社長さん方の一番胸襟を開いて話し合える相手は近所の中小企業の社長さん方で集まる飲み会みたいな場所なのです。
「この間、うちに新人行政書士が来て、安いからお試しで1件任せてみたら早く誠実に仕事してくれて助かったんだよ」
なんていう話が出ます。そうしますと、その話を聞いている社長さん方も「それならうちも頼んでみるか」なんて考えるわけですね。そういう情報が、社長さん方にとっては一番確かな情報なんです。そういう連鎖が始まったのなら、あなたは行政書士として勝ったも同然です。
行政書士のホームページとは
ですので、あなたが登録・開業してもホームページ作成業者などに頼む必要は全くありません。
あなたに致命的にセンスがないのならば別ですが、無料ホームページのサイトを使って自分で作ればそれで十分です。人に頼むにしても、ココナラ辺りで十分です。
行政書士のホームページが伝えなければいけないことは「事務所名」「代表行政書士名」「電話番号」「FAX番号」「メールアドレス」「住所」「アクセス」「価格」「営業しているという事実」これだけです。Webページ1枚で十分です。最近はWebサイトのホスティングをやってくれる業者も減っていますが、それならばFacebookみたいなオープン性の高いSNSで事務所のページを作ればいいでしょう。
逆に言えば、やたらにホームページが煌びやかな行政書士事務所(これは他士業もそうなんですが)は、実地営業が上手くいっておらず、定型ワンステップであっという間に終わるような業務を数請けて何とか保っている事務所であると考えて良いと思います。
だから、もしお金を払ってホームページを維持している現役行政書士さんがいらしたら、そのホームページはもう解約して下さい。大して役に立っていません。
まあその辺は追々語っていきましょう。
今回はここまでとさせていただきます。
ありがとうございました。
最後にやっぱり宣伝です。
私はココナラで行政書士に関する相談を承っております。
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小説なんかも書いております。
こちらもぜひよろしくお願いいたします。
それではまた次回に。