見出し画像

成瀬になりたかった

本日、本屋大賞のノミネート作が発表された。ハマりにハマっている『成瀬は天下を取りにいく』が選ばれて、私は非常に嬉しかった。そりゃ選ばれるだろう。当然の結果だ。だってあんなにおもしろいんだから。
成瀬は21時に寝て、朝走るために5時に起きる。健康第一の生活を送る。私も中学生までは21時に就寝していた。今となっては、24時に寝られれば良い方だ。
今日、講習が10時から始まるというのに、私は9時半に起きてしまった。アラームが聞こえなかった。髪も顔も寝起きのまま、服だけ着て原付をかっ飛ばした。
どうしようどうしよう。急げ。
前の車が遅い。イライラし始める。
成瀬のような余裕なんてどこにもない。
信号が赤になる。
ふと、私は鞄の中を見た。忘れ物をした。
時間は9時45分。今取りに帰っても確実に間に合わない。仕方なく、講習先に電話をした。
すみません。遅刻します。
遅れる電話を1本するだけで、なんだか安心する。少しなら遅れても大丈夫だ、と。(大丈夫ではない)
家に着いて忘れ物を探す。
ない。どこにもない。
私は奇声を発する。時間は10時15分。もう"少し"どころではない。
昨日はあったのにな。どこやったんだろう。
頭の中で回想する。
会社だ。
時間を調べると電車の方が早く着きそうだったので、自宅の最寄りの駅まで原付を飛ばす。
すると、タイミング良く電車が来た。私はそれに乗り込んだ。
各停しか停まらないからか、スピードがいつもよりゆっくりに感じる。そんなわけないのに。またイライラした。
電車を降り、駅から会社へと走った。
忘れ物は、会社の机にちゃんと置いてあった。昨日の私はなにしてくれてんだ。
急いで会社を飛び出して、タクシーを拾う。
講習先まで急ぎめでお願いします、なんて無茶を言い、運転手さんに車をかっ飛ばしてもらった。
なんとか辿り着いた時間は11時。1時間遅れ。
もう講習は受けられません、と言われてしまうかもしれないなと思った。会社に払ってもらっている講習だったので、それだけは避けたかったが…。
詳細を受付で話すと、講習の先生が来て「ロビーで休憩しててください。こちらの手続き終わりましたら始めますので」と言ってくれた。マジでよかった〜〜〜
周りは3時間受ける講習を2時間で終わったのもなんとなくラッキーな気がした。いや、ラッキーではないが。遅刻したことが会社の人にバレてしまっているのが最悪だ。
なんていうサイテーな1日を過ごしたのに、成瀬は本屋大賞ノミネートが決定した。
私が成瀬なら、まず寝坊をしないので朝慌てることがない。荷物の確認も前日までにやるし、もしかしたら歩いて講習先へ行っていたかもしれない。
私が成瀬だったらな、と何度思ったか。
でも、成瀬はきっと「行儀のなりたいものじゃなくて、やりたいことはないのか」と私に問うだろうな。

成瀬を生んだ宮島未奈先生、ありがとう。
こんな大好きで、なりたいと思った主人公は初めてです。ノミネートおめでとうございます。大賞に選ばれることを願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?