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帰省に思うこと①教え子とのつながり

大阪に帰省したとき、地元の後輩と飲みに行った。
正確には、学生の時の塾講師のバイトの同僚であり、さかのぼると元教え子である。
高校生の頃から綺麗で優秀だった彼女は、日替わりのチューターの中でも僕に信頼を寄せてくれていた、と思う。
彼女が卒業して同じバイトを始めてからは、数か月に1回、ご飯を食べたり飲みに行ったりする仲であった。

僕が就職して九州へ異動になった後も、実家に帰るタイミングで僕から声をかけて、飲みに行くことがあった。
下心がなかったというとウソになる、少し好意を寄せていた時期もあった。

久しぶりに会った彼女は、ノースリーブのブラウスに上品なイヤリング、前髪を少し巻いて大人の女性になっていた。お店の雰囲気には不釣り合いな美しさだった。
「今日は在宅勤務だったので、適当に化粧してきました。(笑)」
常套句まですっかり大人になっていた。

いつも久しぶりの再会になるので、緊張というか恥ずかしいというか、何とも言えない空気感が1杯目のビールの到着まで漂うのである。

話をするうちにお互いの会話のテンポ感や温度を思い出し、気づけば昔のように話が盛り上がっていた。お互いの仕事のことや暮らしのことなんて全然知らないのに、話が止まらない。

時間が経って気づいたが、地方で暮らし、知り合いが会社と恋人だけの今の僕の暮らしに、こんな風にお互いの心地よいテンポ感で何でも話し合える人がいないのだ。
地方の小さなコミュニティーの中ではプライベートのことも含めて、職場の人にはなんでも筒抜けだし、仕事の悩みや恋人のことを完全に心を開いて話せる人がいないのだな、とそう気づいた。

ラストオーダーが終わり、ひと段落したところで彼女がお手洗いに立ったのでお会計を済まそうかとしたが、思いとどまった。
お互いに社会人になった訳だし、別に下心があるわけでもない、と変なプライドが顔をのぞかせ、レジでお会計を聞き、少しだけお金を受け取ることにした。

本音を言うともう一軒、と言いたいところだったが、楽しい思い出のまま解散した方がまた次会えるかな、と思った。
2軒目のお店選びや、その後の展開に自信のない僕は、学生のころ自分が住んでいた最寄り駅に帰る彼女を改札まで見送った。

楽しくて少しドキドキした余韻を胸に、僕も自分の電車に乗った。
しばらくすると携帯が震えてメッセージが届いた。
「今日もとても楽しかったです!また帰ってきたときは声かけてくださいね。」

そうだった。今回も連絡するとき、前回くれたこのメッセージを見て、どの友人よりも先に声を掛けたのだった。

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