おふくろの味、復習
お正月に実家へ帰り、親戚で居酒屋に集まった。
私も兄も去年結婚してから初めての集まりで、それぞれの奥さんを親戚に紹介した。
ご祝儀をいただいたりお土産を渡したりと着席前のイベントも終わり、お酒を1,2杯飲み終わったところで、父の姉の旦那さん、つまり伯父がこんな提案をした。
「奥さんたちよ、旦那さん(自分と兄)の好きなおふくろの味を一つ覚えなさい。
旦那さんが一番好きだったおふくろの味を1つ覚えて、家でふるまえるようにするといいよ!
これは来年集まるときまでの、それぞれの奥さんの宿題にしよう。」
奥さんたちはもちろんNOとは言えず、私と兄に何が一番好きだったかを聞いた。
「ん-、何が一番好きだったかな…」と考えてはみたが、その場ですぐには答えられなかった。
兄も僕も大学に入学後しばらくすると一人暮らしを始めて、それ以降はずっと実家を離れたまま。
もうかれこれ10年近く実家を離れているので、母の料理からは遠ざかっている。
年末やお盆休みに実家に帰るが、その時は決まってお鍋やすき焼き、正月はおせち料理や外食になり、母の手料理は昼ご飯の手間を省くために作るカレーぐらい。
その会が終わった次の日、地元に戻る飛行機でずっと母の手料理で好きだったものを考えていた。
肉じゃが?生姜焼き?唐揚げ?
約20年間、ほとんど毎日食べてたはずの母の料理は、味はおろか、どんな料理があったかも忘れてしまった。
何とも情けない気持ちになった。
奥さんと住み始めて、仕事をしながら料理をする大変さも再認識したところだった。
それを子どものころ、当たり前のようににふるまってもらっていたこと、それを当たり前のように思っていたこと、さらにその料理をほとんど覚えていないこと。そんな自分に失望した。
そこで生まれて30年が経ち、31回目の誕生日を迎えた1月中旬、母に電話をかけてお願いした。
「料理をした日はその写真を撮って、家族のLINEにあげてほしい」と。
レシピが一巡しそうな日数として、ひとまず100回を目標に撮影してくれることになった。
さて、どんな料理と再会できるだろうか。これまでの自分を支えてくれた、兄弟3人を大きく育ててくれた、家族団らんの時間を彩った自慢の料理たちと再び会えるのが楽しみだ。
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