やさしいワインのはなし その5(ワインと法律)
「やさしいワインのはなし」にしては小難しい副題の今回ですが、主にラベル(ワイン用語では、エチケット)の読み方についてなので、知っておくとワインを選ぶ際の大きな参考になる話です。
ワインが最も古いアルコール飲料で、他の酒と決定的に違うのは、ワインの原料が葡萄だけであるということです。恐らくその起こりは、木から落ちた葡萄の実が石の窪み等で割れて、葡萄の外皮に付着している酵母菌と果汁が混ざって自然発酵した物だと思われ、その歴史は人類より古いと考えられています。酒について書かれた最古の文献「ギルガメッシュ叙事詩」によれば、紀元前4,5千年前には既に赤、白ワインの記述が見られます。この水も酵母も(現代では衛生上、外皮の酵母菌は洗い流し、新たに酵母菌を加えています)火も機械も使わないアルコール飲料であることが、ワインの最大の特徴であると言えるでしょう。したがって、日本酒が杜氏以下の職人技で造られる人の酒であるのに対して、ワインは気候や地形・土壌といった自然風土で造られる謂わば神の酒とも言えるのでしょう(人の酒が神の酒より下なんてことでは、決してありません。念のため)。ですから、ロマネ・コンティ畑の畦道一本隔てた隣の畑の葡萄から造られたワインは、どんな名人が醸そうとも、ロマネ・コンティの何分の1程度の価格しか付かないという現実があるのです。
ワインの世界では、一部の西南アジアやエジプトを含めたヨーロッパ諸国が中心になっています。したがってワインの歴史の浅い南北アメリカ大陸やオセアニア、アジア、アフリカなどは、総称してニューワールドと呼ばれています。ヨーロッパがワインの中心なのは、その歴史と生産・消費量もさることながら、ワインに対する規制・法律の厳しさ故もあるのです。例えば、アメリカやチリなどは、ラベルにカベルネ・ソーヴィニョンとだけ表示されていても、25%まで別のブドウを混ぜても構わないのです(それでも日本と違って、ワイン法は存在します)。ヨーロッパではそんなことは決して許されません。今回は、エチケット(表ラベルのことです)に必ず書いてあるワインのランク情報を国別に整理していきましょう。
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