「当家比82%アップ」・・・花の宝庫。
夫は、綺麗とかには無頓着だ。
奇麗とか見た目で物事を決めるのはオトコラシクナイらしい。
少しは服装とかも気にしてほしいのだが、
休日でもサラリーマンスタイルにネクタイだけ外したような格好で出かける。
「お休みなのに大変ですね」などと近所の人に言われるが
「貧乏暇なしで」とか適当に答えている。
家計としては服装代が少なくて済むのでありがたい側面もあるんで、特に改めて貰いたいと思わない。
ただ、お花見シーズンに新宿御苑に出かけてお花見をするのだけは、一張羅のカジュアルな格好で行く。
カジュアルが一張羅というのもおかしなものだが、
そんな調子なのだ、我が夫は。
お花見は、結婚前から毎年の行事として行っている。
この一事だけで「仲の良いご夫婦ね」とか言われることも多いのだが、言われた方はちょっと不本意だ。でももう気にしなくなった。
そして、今年は桜が早かった。
地球温暖化という奴の影響なのか。
いつもの日程で新宿御苑に行くと、花は終わり、もうすっかり葉桜だった。
それなりに新緑が心地よいのだが、やはり物足りない。
夫もそう思ったのか、
「温室でも入ってみるか」
と言い出した。
そう言われて、私も初めて気が付いた。新宿御苑には大きな温室があっなんて、今まで気が付かなかった。
いや気付いても全く気にしていなかったのだろう。
本当に、桜を見てのんびりするだけの休日を重ねていたんだな。
二人で温室に入ると、都会の喧騒も聞こえなくなり、
少し湿気の多い空気が、南国に来たような気分になる。
極彩色の花や見たことの無い植物を眺めながら歩いていると、先行していた夫が驚いたように声を上げて呼んだ。
「おい。これ見てみろよ」
急ぎ足で、近づいてみると、床に何かの花だろうか
床に円を描いておかれている。
その花の色、その形、何とも奇麗で、すっかり見とれてしまった。
花の名前は「ヒスイカズラ」
「こんな不思議な花があるのか・・・これなら植物園も悪くないな」
と言った。
この日から夫は変わった。
日本中の植物園を調べて
休みになるたびに出かけようと言う。
おまけに、まるで探検隊のような服を何着もネットで購入し、
出かける時の天気や気温の具合によって
服を変えるのである。
あのカジュアル一張羅だった夫が大変身である。
服装がサファリルックを軸にしているとはいえ
ノーネクタイのスーツよりは、断然一緒にいやすい。
夫に合わせて私の服装もワイルドな感じになって来ている。
こういうファッションも悪くない。
何より、日本中旅行に行けるのが楽しい。
『花の宝庫巡り』は、当家比82%アップだ。