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「お寺のイベントの怖いお話」・・・まさかそんな事が。
日本の寺や神社には、色々なイベント的な楽しみがあるところもあります。
簡単なところではおみくじや絵馬、御朱印を集めたり、体内巡りをするのも、その一つですね。
最近は、それらの体験型の寺社ツアーを企画する旅行会社も多いと言います。
今回は、そんな旅のお話です。
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「探してはいけない」 作・夢乃玉堂
これは、旅行会社のツアーで、東北にあるいくつかの寺を回った時に
ある高齢の男性から聞いた話です。
そのツアーの目玉は、寺の境内に点在する五百羅漢像でした。
五百羅漢とは、寺などに奉納された様々な顔をした修行僧などの群像です。
その羅漢像の中には、必ず自分に似た顔をしたものがあると言われています。
この寺でも、ツアー客たちは、自分に似た姿の像を探して、境内を歩き回っていました。
ところが、ツアーの参加者の一人、仮にイイダさんとするその男性は、
山門の前に立ったままで、決して中に入ろうとはしませんでした。
不思議に思った私は、イイダさんにその訳を聞いてみたのです。
すると、イイダさんは、寂しそうに語り始めました。
「実は僕の生まれた村の外れにね、古い廃寺があったんですよ。
その寺はかつては檀家も大勢いたらしいんだけど、過疎化が進んで、寺を管理する者もいなくなって、僕が小学生の頃には、訪れる者もほとんどなく、
荒れ放題になっていたんです」
イイダさんによると、その朽ち果てた廃寺の裏手に、五百羅漢があったらしい。
雑草に囲まれ、苔むした石像群は、子供たちの絶好の遊び場で、
友達を連れてよくかくれんぼをして遊んだという。
「でもね。ある日、五百羅漢の寺で遊んでいると父親に言ったら、
いつもニコニコ笑っている父が、急に真剣な顔つきになって、
僕の顔を怖い顔をして見つめたんですよ」
『いいかい。あの寺で遊ぶのは構わない。でも、絶対に自分の顔に似た羅漢像を探してはいけないよ』
「見たことも無い父親の厳しい顔つきに、素直に『うん』と答えたものの、
禁じられるとやってみたくなるのが人の常でしょ。
僕は早速、当時ヤンチャ仲間だったマサオ君と二人で
自分に似た石像を探そうという事で盛り上がり、
こっそり授業を抜け出して寺に向かったんです。
雑草の中に立ち並ぶ五百羅漢の顔を、マサオ君と二人で見て回ったけど、
自分に似た顔は見つけられませんでした。
実は、その寺の五百羅漢像は、悟りを開いた穏やかなお坊さんの顔なんかじゃなくて、なぜか皆、苦しみに悶える表情をしていたんですよ」
『こんな変な顔ばっかりじゃあ。見つかる訳ないじゃん』
マサオ君が音を上げた時、僕は、両親が『探すな』と言ったのは、
『探しても無駄だ。自分に似た顔なんてない』という意味だと
思ったんですよ。
遊びすぎる自分を諫めようとして言ったんだろうなってね。
やがて、木立を抜けてくる日が赤くなってきた頃。
少し離れた所で羅漢像を見ていたマサオ君が、突然。
『うわあああ』
と悲鳴を上げたんです。
慌てて駆け寄ると、マサオ君は泡を吹いてその場に倒れてるんです。
僕は、大急ぎで大人の人を呼びに行きました。
大騒ぎになって、救急車も来ましたが、その時にはもう、
マサオ君は亡くなっていました」
イイダさんは、そこまで一気に話して、大きく深呼吸をしたのです。
そして、しばらく考えてから続きを話し始めました。
「その夜、僕は両親にこっぴどく叱られましたよ。
でも、親の言う言葉は全然耳に入ってきませんでした。
怖い親のカミナリよりも、倒れたマサオ君の前にあった羅漢像の姿が
頭から離れなかったんです。
その羅漢像は、倒れたマサオ君の苦しそうな顔とそっくりだったんですよ。
それともう一つ・・・いや、止めておきましょう」
イイダさんは、首を振って駐車場に戻って行った。
その時私は、草の擦れる音に混じって、こんな声が聞こえたのです。
「ほら。おいでよ。君のはこっちだよ」
私はそれ以来、五百羅漢のある寺には、近づいていません。
おわり
よく知られている五百羅漢の自分探しが思わぬ方向に向かってしまう怖いお話。
「ラジオde怪談」で、この話を読んで頂いた山城吉乃さんの語りは、実に 落ち着いていて、聞きやすい語りでした。ありがとうございました。
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