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「倒れる女」・・・恐怖の実体験。
怪談会で実際に怪奇なことが起きる、
という内容の「トラブルの多い会談会」というホラーを以前書いたが、
そういう事が時折あるのは経験上確かだと思う。
数年前、とあるライブハウスで行われた怪談会を観に行った時のこと、
人気の怪談師が登場するとあって会場は満員。
私はかなり後ろの席から舞台を観ることになった。
怪談会が始まって数十分。
三人目の語り手が話し始めた頃だったと思う。
私のすぐ前に座っていた長い髪の女が左右に揺れ始めたのだ。
初めは小さなゆれだったが、徐々に大きくなり、
ゆっくりとしているが、体が隣の客に当たるくらいに揺れるようになっていった。
隣に座っている男性は困ってるのか、危ない奴だと思って無視しているのか
揺れる女の方を見ようともしない。
3分ほど揺れていただろうか、その女は急に反り返って
白目をむくと、うぁっと小さな声を上げて椅子から転げ落ち、
床に倒れ込んでしまった。
すぐにスタッフが数人やってきて、
すばやく倒れた女を抱えて会場の外に運び出し、
怪談会は滞りなく進み、それ以上の事は何も起こらなかった。
「怖すぎて、緊張から貧血でも起こしたのかな」
終演後、女がどうなったか少しだけ気になったが、
スタッフに尋ねるのもどうかと思い、そのまま帰った。
これだけなら、たまたま、ということになるのだろうが
翌年も同じような事が起こったのだ。
同じ会場の、同じ出演者の怪談会。
今度は2階席。私たちは2列目で斜め前の最前列に座って前の手すりに寄りかかっていた
女が、一二度揺れたかと思うと、そのまま椅子から滑り落ち、床に寝ころんでしまった。
この時も同じように、スタッフが駆け付け、すぐに会場から運び出した。
私は2年続けて、怪談会ですぐ前の席の女が倒れるのを見たのである。
それ以来、次も何か起こるのではないかと、変な期待をするようになったが、今の所何も起こってはいない。
これが、ホラー短編「トラブルの多い怪談会」を書くきっかけになった。
しかし世の中には、トラブルをものともしない人がいる。
その人はクラシック音楽史の研究家で、時折頼まれて講演などもするのだが
主催者にお願いして用意してもらった楽器が、当日会場に行くと全く違っていた、ということが多いらしい。
ユーフォニアム(大型の金管楽器)がハーモニカになってたり、
バス・トランペットのはずが、ボディパーカッションのパフォーマーが来ていたりして、たびたび話の内容を考えているらしい。
一番苦労した時は・・・とその彼が話してくれたのは、ステージに上がった途端スピーカーが故障し、音が出なくなってしまった事件。
そこそこ広い会場だったので、肉声では遠くの席まで届かない。
しかたなく、スタッフが代わりのスピーカーを用意するまでの間、
パントマイムで「音楽が人に与える影響」について語ったという。
全く危機に動じない強者である。
おわり
*本人やイベントが特定されないように、内容を少し変えてあります。
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