「隕石、戦争、宇宙人」・・・R怪談。未来ではなくなってしまったか。アナタノミテイルミライ。

ある日の放課後、同級生の南が友達を集めて
重要な話がある、と言い出した。

「みんな。２０１X年にな。大きな隕石が降ってきよったやろ。覚えてるか？」

「ああ。光の玉が目の前かすめたり、
ビルのガラス窓が一斉に割れたりした奴やろ」

「そうや。テレビでもようやってたからな。
あの隕石は、幸い都市を外れて湖に着水した」

「湖面の氷が割れてて、着水地点が分かったってやつね」

「堕ちた場所は分かっても、隕石自体は結局見つからなかった。
どこへ行ったんだと思う？」

「どこへって、湖の底に沈んだんやろ」

「いや。その国の政府が、雪解けを待って引き上げたという噂がある」

「本当か？」

「ああ。ある筋からの情報だ」

「だったらなぜ、それを公表せえへんのや」

「公表できない理由があるからさ」

「どんな」

「それはな・・・」

南は、俺たちにもっと近づくように言って、声を低くして話した。

「あれは隕石じゃなく、宇宙船だったという話だ」

「まさか、信じられねぇ」

「でもよく考えて見ろよ。遠く離れたビルの窓ガラスを割るほどの衝撃波があったのに、湖の氷を割っただけで、洪水も何も起こっていないなんて、
おかしいだろう。
昔の特撮ドラマで、宇宙人が打ち込んできた隕石がダム湖に墜落したら、
ダムの水が洪水のように溢れ出したの見たことがあるだろう。
あれと同じように、湖の水が溢れるはずなんだよ。
でもそんな報道は無かった。なぜか・・・」

「なぜか？」

「それは、隕石が制動をかけた、つまり墜落の衝撃を減らすために、ブレーキをかけたんだ。もしかすると、水面を狙って、方向制御したのかもしれない」

「そうか。被害が小さすぎるよな」

「その通り。では、その隕石型UFOはどうなったか」

「どうなった。ここからは推測なんだが・・・」

「うん。湖から引き揚げられた後、その国の首都に運ばれて研究されることになった。
しかし、その中に入っていた生命体は、研究者の目を盗んで隕石を抜け出し、保管されていた研究施設から逃亡した」

「そんなことが出来るのか？」

「不可能じゃない。隕石のスピードを調整できる奴らだし、何より宇宙から来た生命体だ、我々の目に見える体細胞をしているとは限らない」

「透明宇宙人か！」

「分かりやすく言うとそうだな。だが、人型とは限らない。液体や気体のような見つかりにくい形状をしている可能性はある。隕石のような宇宙船に乗るなら、固体より液状の方が都合が良いからな」

「それで、どこへ向かったんや。その液体宇宙人は」

「もちろん。その国の中央政府だろう」

「おお。じゃあやっぱり宇宙人の目的は・・・」

「地球侵略。人類滅亡だ。おそらく数年のうちに、
液体宇宙人は、中央政府で最高責任者に憑りつき、
その肉体を支配して、戦争を起こすだろう。
そして戦争の規模を徐々に拡大して行き、ついには・・・という筋書きだ」

「話は分かったが、証拠はあるのか」

「証拠はこれから起こる事さ。何か理由を付けて侵攻するのが最初の証拠。
徴兵を拡大し、予備役も招集するようになるだろう。
二つ目は、その侵攻に世界中を巻き込む。エネルギー資源の国外輸出を止めるとか、穀物の輸送を邪魔するとか。とにかく世界が困る事をする。核兵器の使用を諮詢するかもしれない。
三っつ目は、同族同士の殺し合いだ。最終的には地球人同士を争わせて
人的損害を増やしてから外宇宙から侵略するつもりなんだろう。
おそらく最初は奪った地域の人間をその国の首都にでも兵士として送り込んだりするのが始まりだ」

「怖いな。でも、ただの戦争との違いを見つける方法はないのか？」

「ある。液体宇宙人の侵略だったばあい。最高責任者が何者かに取り憑かれている、と知った者が次々に消されていく。
今の時代、戦争は全面戦争だ。つまり、政府も民間も一体で攻め込むんだ。戦争に反対する者などいるはずもない。
だから、
暗殺される政治家や軍人などが増えるなら、怪しい。
俺が思うに、狙われるのは、一番近い側近ではなく、少し離れていて、
それでも最高責任者に近づける人物だ。
例えば、引退した将軍とか、政権を経済的に支えてきた富裕層とか、
野党の政治家とかな」

「なるほど」

「とにかく、近い未来、どこかの国でそんな事が起こったら、要注意だ」

こうして、南の話は終わった。

そして２０２X年。毎日新聞やテレビのニュースを見て、
俺は、南の話を思い出していた。

友人たちと携帯で連絡を取って、そんな事もあったな、という話になり、
南に連絡してみようという事になった。

しかし、何度携帯に掛けても繋がらなかった。
家族の話によると、ヨーロッパに旅行に行ったきり連絡が取れないらしい。
南は行方不明になっていた。
最後に南と話した時、こう言っていたという。

「未来では無くなってしまった」

　　　　　　　　　　　　おわり

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