R怪談「FF」・・・あっという間に読める、ある意味ホラー。
「走馬灯」という薬が新発売された。
忘れていた過去をはっきりと思い出すことが出来るという薬だ。
ボケ始めた老人や認知症患者の治療に使われ、成果を上げたが、
数か月後、「走馬灯」は発禁となり、全ての在庫が回収された。
服用した者が、過去の失敗を思い出して後悔の念に押しつぶされそうになったり、もはや解決する方法の無い恨みや怒りを新たに抱えて、他人の不幸を祈るような性格になってしまう事が分かったからだ。
復讐から凶悪事件を起こす者が多くなったからでもある。
しばらくして、発売禁止になった「走馬灯」に代わって、
「FF」という薬が発売された。
「FF」は、未来を早送りで見ることが出来る薬だ。
だが、これもすぐに発禁・回収となった。
子供が誤って飲んでしまい、この先の人生を悲観して死んでしまうという事件が起きたからだ。
さらに数年が経った時、二つの薬を併用した際の副作用が公表された。
それは、接種した者が、夢も復讐も捨てて、ひたすら現実を打算的に見る、というドライな性格になってしまうというものだった。
だが、この公表は特に大きな話題にはならなった。
もうすでに世の中全体が、
打算的で人の不幸を願い、夢のない社会に変わっていたからだった。
おわり
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