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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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「絶対当たる占い師」 作・夢乃玉堂  絶対の恋を求めて占い師の元を尋ねてきた女性を待ち受けていた運命とは?

「絶対当たる占い師」 作・夢乃玉堂 緑鮮やかな渓流の流れは、意外に冷たく早い・・・ それが、その時の印象だった。 岩に当たって弾ける水しぶきが入り口を濡らす丸太小屋に、真野智花(まのともか)は入った。 肌にまとわりつくようなお香の香りが、智花に仕事を思い出させた。 壁際の影の中には、設え付けの棚が隠れるように鎮座していて、 埃を被ったアンティークな装飾品が並んでいる。 智花は、小屋を訪れた目的も忘れ、それらの品々に見入っていた。 「

「エレベーターの女」・・・怪談。女は何を恐れたか?

「ちょっと前なら覚えちゃいるが・・・」 という歌詞?の歌がありましたが、 人間の心は移ろいやすいものです。 今回は、そんなお話です。 ・・・・・・・・・・・・ 『エレベーターの女』 「怖い!」 エレベーターに乗り込んだ途端、中にいた女が口元を抑えながら 奥の壁に張り付くように下がった。 何が怖いんだろうと目線を追うと・・・どうやら私の事らしい。 狭いエレベーターの箱の中に男と二人きりになって 不安なのは、分からないでもないが、怖いと口に出すほどではないだろう。

「割れる指輪」・・・怪談。決意のその向こうに待っていたものは。

プロポーズの瞬間というのは、緊張するものです。 準備に準備を重ねて、この人なら大丈夫と思っていても、不安は残ります。 時には、その不安が恐ろしい形で現実になることも・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 『割れる指輪』 これは、とある事で知り合った人から、『友人の話だけど・・・』と前置きをして聞かされた話である。 その友人が30歳の誕生日に、付き合って一年になる女性と高級レストランで食事をしたらしい。 デザートが運ばれて来たところで、友人はプロポーズの言葉ともに ケース

「絶対当たる占い師」(リトライ版)・・・本日放送。演出が変わるとどう変わるか。

本日、14日木曜日。SKYWAVEラジオで私の短編が朗読されます。 番組は、16時00分~16時59分の「清原愛のgoing 愛 way」 おなじみの、ナレーター俳優として活躍中の清原愛さんが、元気なMCでお届けします。 朗読で読んでいただく作品は、このサイトのトップでも読める「絶対当たる占い師」。 以前、清原愛さんが一度チャレンジされたのですが、 今回は、さらにバージョンアップした新演出での朗読です。 果たして、清原愛さんがどのように料理するのか。 皆さんも是非お楽

「すきま」・・・怪談。隙間を恐れる男は何を見たのか。

真夜中に、障子や襖がほんの少し開いていることに気づいた時、 わざわざ布団を出て閉めに行く勇気がありますか? 今回は、そんな怖い隙間のお話です。 ・・・・・・・・・・・・ 『すきま』by 夢乃玉堂 「目が覗いてくるんだ」 杉田は、明らかに神経過敏になっていた。 レスリングのインターハイに向けた強化選手に選ばれた杉田が 練習にも大学にも顔を出さなくなって二週間。 業を煮やした部長の命令で、同期の俺と吉野がアパートを訪れたのだが、 杉田は奇妙な話をするばかりだった。 「

「高速嫌い」・・・怪談。深夜のタクシーに乗ってきたのは。

昨今では少なくなりましたが、一時期タクシーは効率の良い遠方客を優先、 ひどいときには、「近くは行かない、別のに乗ってくれ」なんて言うものまでいました。 今回はそこまでひどく無いですが、似たようなお話。 ちなみに、今は都心を除くとタクシー自体がつかまりにくく、深夜に移動するのは至難の業です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『高速嫌い』 バブルの頃よりは少なくなったとはいえ、金曜の夜は今でもタクシーの稼ぎ時である。 タクシードライバーは歩合制なので、どれだけ効率よ

「闇が覆う村」・・・不思議な話。薬売りがたどり着いた村は、なんとも奇妙だった。

『闇が覆う村』 元禄が終わり、江戸の人々が華やかだった時代の名残を忘れつつあった頃。 越中で眼病に聞くという新しい点眼薬を仕入れた薬売り仙吉が 武蔵国を目指して脇街道を歩いていた。 「おかしいな。これまで何度も通った道なのに」 歩きなれた道のはずなのに、仙吉はいつの間にか見知らぬ田園地帯に出てしまった。 「まだ陽も高いし焦ることはあるまい」 仙吉は持って来た握り飯を頬張り、見通しの良い畔道を歩き続けた。 しばらく行くと、道の真ん中に古い木製の鳥居が立っていた。

「そこに居ないお前」・・・俺じゃない俺。

『そこに居ないお前』 by 夢乃玉堂 始まりは、昼休みに同級生が言った勘違いの話だった。 「坂下。お前昨日、学校サボって自転車でどこへ行ったんだよ」 「昨日? それ誰かと見間違えたんだよ。俺、ずっと風邪で寝込んでたぞ」 「いや。お前だったよ。朝学校に行く途中で黒の自転車乗ったお前とすれ違ったんだよ。南高のジャージ着てたし、長髪で銀縁の眼鏡かけたから間違いないって。なのに声かけても返事しなくてさ。シカトかよ冷てえなって思ったんだよ」 「だからその時間は医者にいたよ。そ

「扉の裏から」・・・ホラー短編。ホテルでアレを見つけてしっまた時には。

『扉の裏から』 かすかに寝息を立てている女の横で トオルは寝付けないでいた。 「あの護符のせいだ」 クラブで拾った女を連れて入った、薄暗くて狭いホテルの一室。 歯ブラシを探して洗面台の扉を開いた時、 扉の裏に神代文字が書かれた護符、おふだが貼られているのに気が付いた。 しかしその時は、これから行う行為に気が急いていたので 目立たないところに火除けの護符が貼ってあるんだな、 と大して不思議にも思わなかったが 一通り終わって考え直すと奇妙だ。 目的が限られているホテル

「始発前の仮眠室」・・・怪談。駅員に伝わる不思議な話。

鉄道会社によって多少違いますが、駅には仮眠室があります。 これは主に始発に対応するためです。早朝にタクシーや自家用車で駅まで来て、入り口を開けるところもあるそうですが、その鉄道会社では駅の仮眠室に駅員が泊まり込む、と決まっていました。 居残りの駅員は、終電を見送った後、駅の入り口にあるシャッターを閉めて構内の灯りを消し、駅員室の奥にある仮眠室で少し眠ります。 そして翌日の始発が走る1時間くらい前、午前4時前には起きて、 再びシャッターを開けるのです。 以前は、ベテラン駅

「前世を語る女」・・・怪談。ホームで出会った女は

輪廻転生。人は平均して、七回くらい生まれかわる、という人もいます。 前世で縁があった人は今世でも接点を持ち、果たせなかった思いを遂げようとする とも言われています。もし今世でも、目的が果たせなかったら・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 「前世を語る女」 大きな取引をライバル会社に寸前で奪われた後の飲み会は荒れに荒れた。 渾身のデザインをひねり出したデザイナーは、酒の力を借りて、 チームリーダーである俺に絡んできた。 一人ずつ全員の愚痴を聞いて、残念会を終えた。 「おつ

カメラの横にいるのは・・・

最近、テレビ局は警備が厳しくなり、簡単に出入りすることが難しくなりましたが、昔はふらっと一般の人が出入りできる場所だったので、スタジオ内に見知らぬ一般人がいるということは珍しくありませんでした。 でも、こんな人は困ります。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「スタジオの女」 私がまだ新人のカメラアシスタントだった頃の話です。 今は取り壊されたのですが、都内某所に「X」という撮影スタジオがありました。 その夜遅く、新人の私と 社内でも短気で有名なテクニカルディレター

「白線踏み」・・・子供の頃は、意味のないことに意味を見出すものだ。

子供の頃は、なんでもないことに意味を見出すことが多かった。 机の中央に線を書いて、領土を主張したり、道端に落ちている石を 家まで蹴って持ち帰ったり。「片足で跳んで学校に行く」とか「歌を歌っている間だけ動ける」とか。 根拠のないことに拘っていることが楽しかったりします。 子供の「ルール遊び」は本当に不思議ですね。 そんな子供の頃のお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「白線踏み」 小学生の頃、「白線踏み」という遊びが流行った。 学校から下校する時、友達と『歩道に

「トラブルの多い怪談会」・・・ホラー短編。問題の多い怪談会に参加してみると。

怪談好きの例にもれず、たくさんの怪談会に行ったり、配信を見たりしています。そうすると、怖いこと、不思議な事の楽しみ方が、実に多彩であると分かります。 今回は、そんな怪談好きのお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『トラブルの多い怪談会』 「心霊好き・怪談好き」と言っても皆が皆同じ事をするわけではない。 心霊スポットに行くのが好きな人。 心霊写真やいわくのある秘仏やミイラなどを見るのが好きな人。 怪談や体験談を聞いたり集めたりするのが好きな人など、色々なタイプが