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The JOJOLands感想 16話「あの娘のバグズ・グルーヴ その①」

あらすじ

土地の原本の閲覧から始まったスタンド攻撃。

ウサギの体内にあるスタンドを取り除こうとしたチャーミング・マンは逆に病に冒され、敵スタンドを見失ってしまう。
半狂乱のウサギと倒れたドラゴナ。ジョディオは朦朧としているドラゴナに、体内を移動している敵スタンドをスムース・オペレーターズで移動させろと呼びかける。
ドラゴナは残った体力を振り絞って敵スタンドを捉え、ジョディオに合図を送る。その瞬間、ノーヴェンバー・レインが垂らした一滴の雨がドラゴナの口から気道に入り、肺でスムース・オペレーターズに拘束されている敵スタンドに直撃した。

敵スタンドが破砕し、ドラゴナの身体と意識が回復して起き上がる。一方、ウサギ体内の敵スタンドは脳の動脈付近で見失い、正確な居場所がわからなくなっていた。
そこでジョディオは病院のMRIでウサギの身体を調べ、敵スタンドを探り当てる提案をする。

同時刻、登記所の警備室では警備員と、ある中年の男と少女がいた。男は捜査官のボビー・ジーンといい、仕事はオフだったが散歩中に寄ってみただけだという。
一方、少女の方は警備室内の人形をいたく気に入り、職員に人形をくれるようせがむ。悪態をつく少女に困惑する職員だったが、ボビー・ジーンが職員に「自分の子ではないが子守なんだ」と金を手渡し何とかしてくれないかと半ば強引に頼みこむ。
その時、少女の鼻から血が噴き出し、何かを察知して監視カメラの録画を見た。映像を眺めるうち、ドラゴナら三人が入ってきた記録はあるのに、帰る姿がどこにも無い事を訝しむ。
ボビー・ジーンはあり得ないと断じるが、少女はスタンド使いの存在を感じ、交通系のカメラも調べるべきと忠告する。
彼女こそジョディオ達を襲うスタンド「バグズ・グルーヴ」の本体だった。

病院に入ったジョディオ達はエレベーターの階を間違えてICUの階に降りる。そこの一室には、登記所のお姉さんが搬送されていた。何もしていない彼女の身に降りかかった出来事に不条理さが湧き上がってくるジョディオ。
その横ではお姉さんの父親であるホワイト議員が号泣し、娘の身を案じていた。
娘が攻撃を受けたのはHOWLR社の不正を追及した報復だと議員は秘書に語り、州の権限で土地を強引に差し押さえなかった事を後悔する。
突如として心電図の音が鳴り響いた。登記所のお姉さんが心肺停止状態になったのだ。ホワイト議員は娘に駆け寄り、慟哭する。
ホワイト議員が座っていたソファには彼が持ってたタブレットが置かれていた。画面にはサインが書かれた書類が表示されている。指紋認証で送信すれば、HOWLR社の土地を差し押さえられるだろう。
これは溶岩の力だと察したジョディオ達は、スムース・オペレーターズでタブレットに付着していた指紋を認証枠内に移動させ、送信する。

という所で次回に続く。

敵わないダイナミクスさ。

体内に入ったスタンドをどう処理する!? と思ったら結構力技だった。

スムース・オペレーターズでスタンドを捕まえるのはいいとして、それを肺の管にまで移動させてノーヴェンバー・レインの雨を食らわせるのは豪腕すぎて驚いた。
雨というと一直線だと思っていたので、今回のように水滴一つだけならば軌道をある程度コントロールできるとは考えが及ばなかったのである。

こういう事をするのが荒木先生だとわかっているはずなのに、ついつい細かく考えて矮小な予測に留まってしまう。長年のファンであったとしても全くそのダイナミックな発想に追いつく気配がない。だからこそ、未だに多くのファンを魅了するのだろう。

敵スタンドが入り込んだ経緯も「本に潜んでたスタンドが閲覧者に自動的に向かっていく」というド直球なシステムとしたら、距離が離れていたチャーミング・マンは症状が出ないのも頷ける。

ともかく、敵スタンド「バグズ・グルーヴ」の処理法が出てきた所で、いよいよ本体の顔見せとなった。捜査官ボビー・ジーンとバグズ・グルーヴの本体である少女。

イケオジと生意気な少女という今までのジョジョでは無かった組み合わせである。特にダンディイケオジのボビー・ジーン登場♥ スタイリッシュな男が多く登場するジョジョだが、イケオジというと案外少ない。
古くはツェペリ男爵から始まり、最近だとジョジョリオンの憲助だろう。
(ダモカン? 彼は23歳では……

捜査官という立場であるボビー・ジーンは明らかにHOWLR社側であり、いかにHOWLR社が社会の根に深く入り込んでいるかがわかる。
同時に、警備員やホワイト議員の発言からも不正問題やその隠蔽体質など、その黒い実態が公然に秘密のような扱いになっている事から、かなり強引な手法で今まで違法行為に手を染めていたのだろう。

表面上では9割近く国民の支持を得ていたヴァレンタイン大統領と比べると悪質さが周知されている組織であるのも新鮮だ。
もし仮に聖なる遺体が現在もアメリカにあったとしたら、このように国を蝕む企業も自然と排除されていたのかと考えると因果を感じる(その場合、他の遠い国の誰かがその業をぶつけられてしまうのだろうが)。

あれ? 自動操縦では……

バグズ・グルーヴが一体倒されると、少女の鼻から血が出た。これはダメージが返っている証拠であり、遠隔自動操縦型のスタンダードなイメージとは異なる挙動だ。
普通は直接的な操作が効かない代わりにスタンドのダメージは本体に影響がないというのが遠隔自動操縦型のはずである。

荒木先生が設定忘れたのか? と疑問に思われるだろうし、その可能性も正直あるといえばありそうだが、よくよく考えてみると別に自動操縦=遠隔自動操縦型とは限らない。
本体の命令に対してオートで行動するから自動操縦であるが、それは遠隔自動操縦型全てに限った話ではない

例えば群体型のハーヴェストは一体一体をしげちーが正確に操縦しているわけではなく、大まかな命令の下に集団で働く挙動をしていた。
ハイウェイ・スターも初登場時は本体が昏睡状態であった事から遠隔自動操縦型との見方もあるが、ただの遠隔操作型にオート行動の設定があったと考える方が無理がないように思う。

セックス・ピストルズなんて本体とは別に思考能力があって勝手に行動できるが、スタンドがやられれば本体にしっかりダメージが返る通常の遠隔操作型であった。

これは特に遠隔型に多く見られる誤解であるが、何かの特性を持っていたとして「この機能も同時にあるだろう」という先入観はジョジョでは通用しない。
例えば、遠隔操作型には本体との視覚共有がセットでついているイメージが強いが、視覚能力ではなく二酸化炭素で探知するエアロスミスがあるように、必ずしも遠隔操作型=スタンド視覚ありと断定は出来ないのである。

つまり、遠隔自動操縦型とは「自動だから遠隔自動操縦型」と演繹的に推察するものではなく、「単純」「パワー」「遠隔」と個別の要素を見て、帰納的に推理するものと考えた方がよい。
そうすると、シアーハートアタック戦での承太郞の推理もまた見え方が変わってくる。
承太郞は動作が単純だからシアーハートアタックを遠隔自動操縦型と断定したわけではなく、「硬くて」「パワーがあり」「動作が単純」だからシアーハートアタックが遠隔自動操縦型と探り当てられたのである。

何よりバグズ・グルーヴは「力が弱い」とすでに明示されており、遠隔自動操縦型の「パワーが強い」から条件が外れてしまっているため、バグズ・グルーヴがダメージが返ってくる遠隔自動操縦型と突拍子なく設定されたとは言い切れないわけである。

結局、バグズ・グルーヴのダメージが返ってきた事で少女は閲覧者の存在とスタンド使いの気配に感づいたのだから、何事も一長一短なのだ。

全面対決か

バグズ・グルーヴ攻略が進む中、ついに敵もジョディオ達の追跡を開始する。
バグズ・グルーヴの少女は大人に対しても口が悪く横柄な態度ではあるが、一つの切っ掛けから即座にザ・マッテクダサイのファイク動画を看破するなど、洞察力の高さもジョジョキャラといった風情だ。

捜査官のボビー・ジーンもまた食えない人物のようで底が見えず、恐らくスタンド使いである事も考えると、いずれジョディオ達を突き止めて直接対決へ向かうだろう。
ウサギが道沿いのカメラも操作しているものの、更なる推理か、あるいはボビー・ジーンのスタンド能力でジョディオ達に短時間でたどり着く可能性は十分にある。

それにしても今回もウサギ先輩が良い味を出していた。
顔から血が噴き出して死ぬ死ぬ言ってる割に、卒倒して意識がヤバかったドラゴナと比べ病院にたどり着いても結構元気なのが妙な笑いを誘う。
推察力と知識がある割にトラブルに弱く、神経が細い所があるウサギ先輩はポルナレフや億泰とはまた別の魅力があるムードメーカーだ。
ムードメーカーなようで実は全く違う何かだった常秀もあれはあれで新しいが(というか終始邪魔しかしなかった味方?なんて新しすぎる)、ウサギ先輩はある意味全うなポジションなのも安心感があって良い。

泥棒のゲス野郎なんて言われていたパコも、危篤状態の登記所のお姉さんを見て「何とかしてやりたいが」と漏らす所からして全くの冷血漢でもないのがわかるのも地味ながら良い。

そして、今回で州が土地を差し押さえるように仕向けられた事は大きい。
まだジョディオ達の所有になったわけではないものの、対HOWLR社攻略に向けた大きな前進である。こうなった以上、HOWLR社も黙っているはずがなく、ジョディオ達とHOWLR社の全面対決が早くも起こりそうである。
捜査官すら抱え込むHOWLR社の実態とは何なのかが今後明かされていくだろう。非常に楽しみだ。


どうでもいい話(用語の使い方について)


ここから先は本編と関係ないので読み飛ばして貰っても良い。


大多数の人間にとってはどうでもいいし変な拘りだと自覚した上での話だが、ジョジョを語る時に個人的に使いたくない用語みたいなのがある。
その一つがダメージフィードバックだ。
スタンドのダメージが本体に返るのをよくダメージフィードバックと表現される。実際一言で説明できるから用法として正しいし、別に誰かが言ってたとして目くじらを立てるような気持ちもないのだが、本編中に既出ではない用語を使いたくない、という捻くれたファン心理である(実際、上の感想でもダメージフィードバックとは一つも書いてない)。

同様にスタンド使いではない人間に対して非スタンド使いと表するのも今や当たり前に行われているが、非スタンド使いとは「スタンド使いに非ず」と言ってるわけで、それだと何か非人みたいになっちゃうじゃんという気持ちになってこれも使いたくない用語の一つである。

確かにジョジョはスタンド使いが主役だからそりゃ非スタンド使いという言葉が出てくるも至極自然な事ではあるが、波紋編で主人公の脇で頑張っていた一般人やサイボーグ(改めて書くとサイボーグって異常な登場人物だ)がいた事も考えると、非スタンド使いじゃなくて「スタンド使いではない」と本編に準じた言い方をしたい。

人間讃歌だから、やっぱり能力や思想関係なく一人一人の人間の強さをできるだけ見つめていたいのである。


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