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The JOJOLands感想 21話 HOWLAR社不正疑惑

ドルフィン銀行の個人オフィスでパターを打ち、チョコを食べて寛いでいる男がいた。
彼は病院での戦いでグローリー・デイズの弾丸の被害を受けて意識不明になっていた銀行員ヨコハマ。ヨコハマは妻へのビデオ通話を始め、本土に出張するので家族サービスが出来なくなったと詫びる。
妻は許すかわりに「魔法の言葉」を言って欲しいと頼むが、ヨコハマはその言葉が何なのか逡巡する。結局当たり障りのなく「愛していよハニー」と答えるが、正解は「股間があっち向いちゃったよ このメス猫めェーッ」だった。

ヨコハマの苦虫をかみつぶしたような顔の一部がボロボロと崩れる。その正体はヨコハマに化けたチャーミング・マンだった。
ヨコハマは様々な権限を任されており、それを利用してジョディオ達を親戚の子供と偽り、銀行内を堂々と渡り歩く。

メリルの元にジョディオ達と連行されたルルが出揃う。殺されかけたウサギはルルに対して激しく怒り、脅しをかけるがルルは沈黙を貫いていた。
頑なな態度のルルにメリルは語りかける。詐欺や脱税の懲役刑は最大10年である事、ルルを自分の店にかくまう為にブティックを休業し、ワガママな要望による経費が1日3000ドルかかっている事。さらに奥の部屋で眠っているヨコハマの生命維持の為に1万2000ドルを日々消費している事。
この事が警察にでも露呈すればメリルは校長の職を失い、旦那からも離婚されるだろう事。

言外に圧力をかけられたルルは、慕っていたボビー・ジーンを想い、涙を流す。ルルによると、今のところジョディオ達の正体を知っているのは自分のみで、溶岩の事はハウラーから電話で突然指示があったのだと言う。
ハウラーは溶岩をジョディオ達が所有していると断定している。メリルはその事実からハウラーの500億ドルの土地は間違いなく自分達に引き寄せられて来ていると確信した。
財産を取られまいとハウラーはジョディオ達の正体やルルの行方を必死になって探っている。追い詰められた金持ちはいとも簡単に暴力を通貨にする。

金が来るのを待っているだけではこちらの身が危ない。そう判断したメリルは、タイムリミットを7日間と定め、それまでにハウラーの財産をこちらから取り立てるジョディオの案を採用する。

一方ハウラーはリムジン車で美女と共にリラックスしていた。しかし、不正疑惑スキャンダルを聞きつけた住民やマスコミに囲まれ、暴動の事態に見舞われる。ハウラーがどれだけ弁明を叫ぼうとも半ば暴徒と化した人々には全く通じない。
ハウラーは弁護士に誘導され地下駐車場に逃げ込んだものの、自らの状況に納得がいかず、不満を口にする。
荒れるハウラーの背後に、先ほどの弁護士を含め三人の男女が立っていた。

弁護士の女、長髪でKYEと書かれたキャップを被ったキー・ウエスト。
警察官の女、後ろ髪以外は全て剃り、ツバメの入れ墨があるレムチャバン。
消防士の男、仕事着を身につけた無機質な表情の寧波(ニンボー)。

三人はボビー・ジーンの死因を調べる為に病院で亡骸を調べるも、詳しいことは何もわからないとした上で、犯人はスタンド使いであると判断する。
そもそもボビー・ジーンは何を追っていたのかに疑問を呈する三人を前に、ハウラーは「余計な事は考えずに仕事だけに専念しろ」と釘を刺す。

その時、ハウラーはレムチャバンのサングラスに何かが蠢いているのを見る。キー・ウエストはそれを線虫だと言い、生命のストレスの臭いを嗅ぎつけるそれはサングラスの中で「恐がっている者の地図」を示すという。
ハウラーの怯えを見抜いたキー・ウエストは去る前に、ボビー・ジーンの検索履歴から浮上した容疑者を見せつける。
それは、軍隊を除隊扱いになったパコの写真だった。

という所で続く。

展開のスピード感

ボビー&ルル戦を経て、話はかなり大きく動いた。
まだ序盤、巻数で言えば7巻の時点でターゲットであるハウラーの資産に王手をかけた状態となった。

7巻というと、SBRでは3rd,STAGEで恐竜Dioとの初遭遇、ジョジョリオンだと八木山夜露との戦い、つまり岩人間の存在が初めて明らかとなる巻である。
こう書くとジョジョランズのスピード感がわかるだろう。

SBRは全24巻、ジョジョ最長となったジョジョリオンは27巻となっている。
WJ時代のジョジョは各部の巻数は波紋編を除くと16~18巻に収まっており、こう見ると全般的にかなりコンパクトだ。
一番長く続いたジョジョランズですら呪術廻戦の全巻数に及んでいない。

テンポが早いと思って吐いたが、荒木先生は思った以上にジョジョランズを早期に終わらせるつもりなのだろうか。
ジョジョリオンの反省からなのかもしれないし、何だかんだ荒木先生も還暦を迎えている。いくら健康的な見た目で生涯漫画家としてやっていくとしても、やはり歳を考えると、話の回転率を上げて色んな話を書いていきたいという思いもあるかもしれない(自分は先生が100歳まで漫画を描くと信じていますが……)

そうなると、今後のジョジョは10巻強の部が連続で描かれるようなものになる可能性がある。それはそれで楽しみな時代だ。
無論、このままハウラーとの戦いが新たなステージを迎えたり、ハウラーよりも上の存在との対決に以降するかもしれない。
いずれにしろ、今のジョジョランズがノリにノッている事に違いはない。

『ヤツらはいとも簡単に暴力を通貨にする』


メリルが富豪であるハウラーを表した一言。凄くイカす言葉だ。
5巻の次回予告でもドンと大きく乗っており、9部の空気感を端的に表す台詞と言って良い。

こちらも無法ならば、あちらも無法。
最近発売された荒木先生の新・漫画術内でジョディオ達の事をクズと連呼しまくっているのが中々に可笑しいのだが、実際のところ彼らは底辺の境遇から成り上がろうという気概を持っており、確かにジョルノやブチャラティのような大義こそないが、彼らも彼らなりに逆境に抗う戦士という意味では、やはり立派なジョジョの主役たり得る人々なのである。

そして一方、黄金の暴力を持つハウラーの下に新たな刺客が表れた。
キー・ウエスト、レムチャバン、寧波。
荒木先生のセンス爆発な風貌もさることながら、注目したいのは彼らがボビー・ジーンのようにそれぞれ公的な色味が強い職に就いているという点である。

そもそも、スタンド使いで「職業スタンド使い」というキャラはあまりいない。大抵は普通の人間と同じく表立っての顔が存在している。
これはジョジョがスタンド使いにアイデンティティを寄らない作風をしているからで、スタンド専門の研究機関、スタンド使いオンリーの秘密組織などが無い理由になっている(パッショーネにしてもスタンド使いはあくまで組織内で少数の専門チームで固められている程度の扱いに過ぎない)。

あえて言うならばスタンドの黎明期であった3部は職業不詳な敵スタンド使いが多く、あったとしてもスタンド使いの殺し屋という外連味溢れる人間ぐらいしかいない。
スタンド使いにも表の顔がある、というより、すぐ側で何食わぬ顔で過ごしている人間がスタンド使いだったという底知れなさが4部で展開されたスタンド使いの見方であった。

スタンドとは確かに作品の顔であるが、内実としてはキャラクターの側面を助長して強調する記号であり、あくまで主体はキャラクターそのものなのである。スタンドは概念として大いなる発明でありながら、荒木先生自身はどこか突き放したような扱い方を常に保っている。

新キャラの三人にしてもそうで、それぞれスタンド能力の正体は気になる所だが、公には「正義」と捉えられるはずの職を持つ人々が主人公に立ちはだかるのは興味深い。
彼らの目的はハウラーの金目当てという俗なものだが、金持ちとは大なり小なりそのような「公」に影響を及ぼすものであり、それを意識するとメリルの先ほどの台詞がより一層重みを伴ってくる。


新たなスタンド使いと新しいステージがジェットコースター的に迫ってきており、全く展開が読めない。現状、ジョディオ達の正体が完全に割れていないが、彼らがルルを探し当てれば形勢は一気にハウラーのものになる。

ルルを保護しているメリルにも危険が及びそうで、ハラハラする。
次回も楽しみだ。

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