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The JOJOLands感想 15話「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」

あらすじ

登記所を出るや否や嘔吐し倒れ込んだウサギ。
ウサギの症状を敵の攻撃ではなく薬物によるものと考えているチャーミング・マンは、ギブ・アンド・テイクの関係性しかないウサギを見捨てる選択肢をドラゴナに問いかける。
ドラゴナが逡巡する中、ウサギはザ・マッテクダサイをストローに変えてほしいとドラゴナに要求する。
ドラゴナの言葉でストローに変身したザ・マッテクダサイを手に、ウサギはカッターナイフで自分の胸に穴を開け、そこにストローを突き刺した。
瞬間、ストローから胸水が排出され、何とか応急処置に成功する。

ジョディオやパコはその様子を見て異変を察知し、急いでウサギを車内に運び込んだ。
そこでウサギは肺に突き刺したザ・マッテクダサイを通じて、心臓付近に極小のスタンドが入り込んでいる事を察知し、ジョディオ達に攻撃を受けていると言う。
だがチャーミング・マンはウサギの訴えを保身のために嘘だと疑いをかけた。半ば錯乱するウサギを前に、ジョディオは「可能性を考えるべきだ」と仮に攻撃を受けたとしてどの時点からそれは起こったのかを推理する。

とはいえ、それといって怪しい人物は思い当たらない。唯一まともに接触した受付のお姉さんも敵とは考えにくい。そんな中、登記所の前に呼んだわけでもないのに救急車が現れた。急患はあの受付のお姉さんだった。ウサギと全く同じ症状で苦しむ彼女を見て、ジョディオは敵の存在を確信する。

自動追跡タイプのスタンド。恐らく紙の原本に設置されたそれは、土地を調べようとするものを自動的に攻撃するようだった。
ウサギの言葉が真実と悟ったチャーミング・マンは他人の助けを借りずに胸水を処理したウサギに敬意を表して、敵スタンドの排除を申し出た。
チャーミング・マンは「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」を発動し、右目を砂のように分解させてストローからウサギの体内に侵入する。

体内は暗く、明かりが欲しいとのチャーミング・マンの言葉でザ・マッテクダサイはストローの先にライトを生み出した。
敵スタンドを発見したチャーミング・マンは追跡し捕獲に成功する。しかし次の瞬間、チャーミング・マンの右目から腫瘍ができ、どんどん具合が悪くなっていく。ジョディオは吹き出ているものは癌だと指摘し、敵スタンドの捕獲をやめるよう指示するが、チャーミング・マンはあと少しだと退くつもりがない。

さらに、ドラゴナが泡を吹いて昏倒してしまい、状況は悪化していく。
外では救急車を遠巻きに見ていた職員たちが、受付のお姉さんの父が下院議員で、HOWLER社の水源に関する不正を追求していた事を話していた――。

という所で今月は終わり

ミクロバトル

ウサギの症状は「極小のスタンドが心臓あたりを殴る蹴るしていた」という一周回って新鮮な真相。
人体に入り込んで作用するスタンドはこれまででもいくつか種類があったが、体内が主戦場になるのは3部のラバース戦以来だ。そもそもラバース戦のシチュエーション自体が色々と特殊だったため、この展開は全く想像できず、自分的にはかなり燃えている。

鋼入りのダンはラバーズの能力故にあえて承太郎達の前に姿を現したが、今回の敵スタンドは探ってくる敵を遠くから確実に抹殺する遠隔操作能力として真っ当な使い方をしており、その冷徹さが恐ろしい所だ。
姿が見えない敵の攻撃はジョジョリオンで多く描かれており、露伴やチャーミング・マンは身一つで戦ってきた事も相まって、これまでとは質の違う敵である事をひしひしと感じさせる。

敵スタンドの行為はあらかたわかったが、どの時点で攻撃の対象になったかが気になる。
少なくとも紙の原本に仕掛けられていたのは確かなようだが、具体的に原本をどうすれば攻撃されるのか?
現状、症状が出ているのはウサギ、受付のお姉さん、ドラゴナである。チャーミング・マンは敵スタンドに触れている為の症状であり、恐らくチャーミング・マンはもともと攻撃対象ではなかった。

原本に触れる事がトリガーとすれば、症状が出るのは受付のお姉さんのみになる。開いた原本の周囲にいた事を原因としても、チャーミング・マンが攻撃を受けていないのはおかしい。
となれば、自分の頭で思いつくのは「見る」ぐらいしか思い浮かばない。
前話の時にチャーミング・マンも原本閲覧に参加していたが、立って脇目で見ていたので、ドラゴナやウサギよりじっくり原本を視界に入れていたとは言い難い。
それでも流石にページは目に入ると思うので、トリガーとなるのは「特定の文字列を見る事」ではないだろうか。これだとチャーミング・マンは攻撃範囲に入っていない可能性はある。

ともあれ、この攻撃を切り抜けなければ大惨事になる。
敵スタンドに触れても症状が出てしまう以上、直接排除は困難だろう。
ノーヴェンバー・レインの雨は影響を受けないだろうが、まず敵スタンドをピンポイントで攻撃できそうにない。残るとすれば肉体操作が可能なパコのザ・ハッスルぐらいか。
あるいはトリガーとなった原本を破壊すれば攻撃も止まるかもしれないが、その場合、再び登記所に入り、証拠を残さず原本を消さななければならず、これも一筋縄にいきそうにない。
攻撃の結果を確認する為に本体が登記所に来ている可能性も無くはないが、あまり期待はできないだろう。

チャーミング・マンと「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」

チャーミング・マン、新人なのに偉そう問題。

一応はメンバー最年長とはいえ、つい先日まで敵だった奴である。それがウサギをヤク中だし見捨てようぜとかウサギの必死の訴えを全く聞き入れようとしないとか……。
と、思っていたらウサギの疑いが晴れるや否や「敬意を表する」とか言って一転手のひら返し。自由すぎる。

とはいえそんなチャーミング・マンがどんどん魅力的に見えてくる。読者的にも今までジョディオ達に対する距離感がわからなかったが、今話で色々とパーソナリティーが見えてきた。
ウサギを切ろうとするドライさはあるものの、共感する相手には命をかけて助けようとする。「孤独に立ち向かうヤツってのは好きだぜ」という台詞にチャーミング・マンの心情が詰まっていると感じる。

もともと弟を探す為に独りで(まぁ猫はいたけど)戦っていたのがチャーミング・マンだ。周りに疑われながらも自分で生き抜く術を見出したウサギを見て、自分と重ね合わせていたのは想像に難くない。

そんなチャーミング・マンに対して、一番自分を糾弾していた奴なのに救いの手を差し伸べられると号泣、感激の涙を流すウサギの単純さも良い味を出している。

そしてついにチャーミング・マンの能力名が「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」と明かされ、内容の全貌もわかってきた。
身体を砂にして分解するという点はジョジョリオンのドクター・ウーと酷似しているが、長所と短所に明確な違いがある。
ドクター・ウーは分解した自身を体内に侵入させて内部から攻撃する事に特化していたが、ビッグマウス・ストライクス・アゲインは背景と同化して剣で直接攻撃していた事を見るに、ドクター・ウーほど身体を分解、精密に操作は出来ないようだ。

言ってみれば分解能力をナーフして擬装にステータスを伸ばした形で、かなり活躍の幅が広いように思える。

HOWLER社

敵はジョディオ達と同時に父親がHOWLER社と敵対する政治家である受付のお姉さんまでも手にかけた事で、いよいよ敵対者がHOWLER社と確定した。

相手は社会的な地位を持った企業であり、アウトローとして底辺に位置するチンピラのジョディオ達との対立軸としては最良の敵である思う。

実はバックにギャングがついていて、HOWLER社はフロント企業という可能性もあるが、それだとラスボスが5部と被るので、あくまで企業が主体である事に期待したい。

ジョジョの歴代ラスボスは部を経るごとに社会的な地位が高くなっていく傾向にある。3部まではそもそも相手が人間ではなかったのでともかく、4部になると会社員、5部ではギャングボス、6部で教誨師ときて、新世界となった7部からはさらにラスボスの地位について意識されているように思う。

これはリンゴォの「男の価値」と「社会的な価値」はズレてきていると言った事にも対応していて、つまり「主人公の動機」と「社会正義」が一致しないという言い換えでもある。
その証拠に8部の岩人間たちも戸籍すらない定助と比較すると、ほぼ全てが人間社会にそこそこの肩書があり、ラスボス周りのTG大学病院所属の岩人間に至っては医者としてロカカカを利用し医療分野でさらに勢力を延ばそうとしていた。

HOWLER社もまた、いっぱしの企業としての顔を持ちながら、裏では邪魔者を排除する、善と悪の二面性を秘めた敵と見れるだろう。

今までの流れを引き継ぎながら新機軸の敵、HOWLER社の実態が気になるところだ。



いよいよ今作の敵となる者の実態が出てきた。しかし、姿を見せたのは敵スタンドのみで、組織の内情や動機はまだハッキリとはわからず、混迷を極めている。前部とは打って変わった激しい展開の速さに毎話テンションが上がりっぱなしだ。

ジョジョリオンはまず岩人間の登場の前に東方家の対立を挟んでいて、スロースターターなイメージが強かった。
もともと荒木先生は週刊連載の細かい起承転結の連続から、SBRの途中で月刊のペースでゆったりとした画面を展開しようウルトラジャンプに移籍したが、それがジョジョリオンの長期化と読解の混乱を招いたようにも思う。

その反省からかはわからないが、9部は今のところかなりハイペースだ。
次回が待ち遠しい。



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