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中盤の数的優位で前進する
3-0
ACL本大会への出場を決めるプレーオフが行われ、浦和vs理文(香港)が対戦した。前半早々に浦和が2点を取り、その後は練習試合のようなゆっくりとした展開となり、試合終盤に追加点を加えた浦和が完勝で本大会出場を決めた。
実力の差もかなり開きがあり、浦和の2点目が入ってからは緩い試合展開となってしまったので今回は簡潔に気になった点をまとめる。
中盤の数的優位
理文はボール非保持では5-4-1を採用。しかし、LSHの91番、CFの7番、RSHの8番は外国籍選手だったのだが、プレスの強度と仕事量が極端に低かったため浦和がビルドアップに困ることはなかった。浦和は下の図のように安居がアンカーポジションに入り、小泉、中島、伊藤が必要に応じてサポートする菱形のような立ち位置、荻原と大久保が幅を取る。興梠は最前線で仕事に専念して、酒井はタイミングを見て後方からオーバーラップをかけるのがメインの配置となった。
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アンカーの安居は7番に消されることもあるのだが、小泉、中島、伊藤の3人が必要に応じてボールを引き出したことでスムーズにボールを前に運ぶことができた。理文の中盤の枚数は2枚だったので、浦和は小泉、中島、伊藤の誰かが基本的にフリーでボールを受けることができていた。浦和は中盤の数的優位を使って中央から前進して、サイドへ展開する流れが増えていった。
興味深かったのは浦和での初先発となった中島の小泉と伊藤との関係性だ。中島には自由が与えられており(立ち位置を取ることが得意でない)、中島の動きに合わせて小泉や伊藤がバランス調整をしていた。下の図のように中島が下りてくると伊藤が前線に抜けて前後のバランスを保っていた。
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この試合においては中島の狭いエリアでターンしてゴール方向へプレーする姿勢が効いており、理文がポジティブトランジションを速めてカウンターを狙ってくるチームでなかったこともあって、中島の自由に動き回るボール保持が良いアクセントとなっていた。特に中島はミドルサードからアタッキングサードにかけて1枚引き付けてパスを出したり、1枚剥がして次に展開したりと現在の浦和が枯渇しているタスクをこなしていたことも大きい。しかし、これが強度の高い相手やJリーグでしっかりと規律を持って守ってくる相手に対してどれだけ通用するのかは未知数である。
個人戦術が与える影響
連戦ということもありショルツに代わり、岩波がこの試合先発。ドフリーでボールを持てる岩波は心地良く中長距離のパスを通していた。特に岩波からの幅を取る選手に対してのパスは高い精度とスピードで配球されるのでSHが戻りきれずにWBと1vs1の状況を作れていた。
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浦和がリードしてからはセーフティーに回す意識が強まったためにリスクを負う配球は減り短いパスが増えていったが、次節のリーグ戦ではホイブラーテンが出場停止なので岩波に期待されるものは大きい。
気になる点としては岩波がボールを運べないことで、中盤の選手がボールを受けに下がってきてしまうということ。中島は特に沢山ボールを触って自分のリズムを掴みたい選手なので、かなり低い位置まで下がってきて岩波からボールを受ける場面が多々あった。
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岩波が運べない+中島が下りてきてしまうことで後ろに重くなってしまう場面が何回かあり、この辺のバランスは次の試合での不安材料である。この試合では選手の能力差でそれぞれの局面で質的優位を出せていたが、もう少し配置のバランスを気にする必要が今後は出てきそうである。
とは言え、理文の守備もかなりずさんでSHが全くプレスバックしてこなかったために、酒井の後方からのオーバーラップは非常に効果的に2vs1を作れていた。特に中盤で前向きにボールを持てる場面が多く、中央から大久保に広げることで大久保には時間とスペースが与えられて、酒井が上がる起点になることができていた。
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2点目の興梠のゴールも酒井のオーバーラップから生まれた得点だった。
理文はボール非保持に1stDFが決まらずにプレスのスイッチが入らないこと、ワイドCBが人を捕まえられないこと、SHの守備の貢献度が低くWBが縦にスライドできなくて殴られ続けることなど、個人戦術とチーム戦術ともに厳しいレベルだった。
また理文が上手く囲い込んだり、パスコースを限定してハメられそうな局面でもプレスの強度が弱く、ボールホルダーとの間合いも遠かったりしていたので、浦和の選手からしたらプレッシャーに感じずに次に展開できていた場面も多々あった。
守備はお世辞にも上手くいっていたとは言えない理文だが、ボール保持では主体的にボールを前進させようとする姿勢は見られた。特にCBの2番がアンカーの位置に入りビルドアップして、7番が偽9番の動きで6番、16番と共に中盤で数的優位を作りながら前進。LSHの91番はハーフレーンから斜めの動きで背後に抜けたりと攻撃はしっかりと設計されているように見えた。
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残念ながらプレーの質が伴わずに立ち位置云々の前にボールロストしてしまう場面が多々あり、1失点目もLCBからLWBへのパスを大久保にインターセプトされてからのショートカウンターで失点と自分達のミスから生まれたものだった。格下のチームが苦戦するのはこういったそもそものクオリティーから来るミスだったりする。
スペイン人の監督らしく、立ち位置も整備されていて、それぞれの役割がハッキリしているので上手くボールを前に運んでシュートまで持って行けた場面もあったので、理文としては早い時間での2失点はゲームを難しくしてしまった。後半途中から9番と23番を入れて反撃を狙うも、その時点で多くの選手が疲弊しており間延びした状態で前線が孤立してしまっていた。結果論になってしまうが、始めからあまり浦和をリスペクトし過ぎずに戦っていたらどうなっていただろうかと悔いが残る。
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