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フクロウと月

カエルがきている
だんだん黒目を大きくしている

カエルが見ている。

こちらをじっと見ている
カエルに近づいた。

カエルの目に、僕が映った。

僕は、
自分を白色だと思っていた。

しかし僕は、
カエルと同じ色だった。

カエルが鳴いた。

鳴いたっと思ったら、
それは言葉だった。

なんて言っているのか
聞こえた。

僕の頭には、
カエルが話したことが理解できた。

その瞬間、
ものすごい恐怖が、
心で暴れ出した。

ぼふぼふという変な音を立てて、
胸から喉へ、
喉から口に
駆けあがってきた。

出てくる音を、
聴きたくなくて、
僕は、
出てこないでと言った。

カエルの声がした。

今度の声は、
さっきと違って、
本当のカエルの鳴き声だった。

その瞬間、
僕は、体の中の物を
全て、吐いてしまった。

空には、
月が
浮かんでいた。

僕はきっと、
あおむけで倒れているのだな。

月が、
解けたバターのよに、
こことそこを
隔てない形に変身してきた。

月には、
魔法が使えるのだね。

僕は、
もうそれだけでいいと思った。

僕が、カエルで、
月が、魔法使いで。

僕を、心配そうに見ているカエルは、
言葉が喋れる。

このカエルは、
僕に近いのか、
月に近いのか。

言葉を喋れるから、
魔法使いのカエルだね。

だったら、
僕ではなくて、
月に近いといいなと思った。

起き上がり、
僕は、そのカエルに言った。

「魔法使いのカエルさん」って。

にこっと喜ぶと思った。

しかし、
僕の前のカエルは、
ぼくを睨みつけてから、
遠くへ
走って行ってしまった。

ああ、
僕はなんて言ったのかな?

月を見上げて、
尋ねてみた。

すると月は、
どんどん近づいてきた。

僕は、
空を飛びながら
魔法使いのカエルさんが、
今も友達でいると気付いた。

月はきれいで、
そして消えた。

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