猫が、僕の一刻一刻を、デザインする
この物語は、
毎日同じ時間に起きて、
同じ仕事場に行き
同じ仕事をすることに違和感を持ち、
何かを思い出しそうでも、
日々の生活が忙しく、
時間に追われる毎日を過ごしていた45歳の男性が、
自分を取り戻すきっかけになった物語です。
『 猫が、僕の一刻一刻を、デザインする 』
探しても、探しても、ここにはないと思った。
だから、
君たちと一緒に、
僕も行こうと思ったよ。
そこには、
鳥という生き物がいるらしいね。
その鳥を見たいと、心から思った。
そこには、
海という場所があるらしいね。
その海を見たいと、心から思った。
一刻一刻、
空気が変わる、不思議な世界。
「そんなことがあるのか」
って、皆でびっくりしたよ。
一刻一刻が、全部違うって、
楽しすぎやしないか?
それを想像したら、
僕は、ちょっとだけ、
欲張りな気分になった。
一刻全部違って、
「全部が楽しい!」ってことでしょ!
楽しい一刻同士の重なる場所は、
それぞれの、いい部分が重なり合って、
もっともっと、
いい色になっているよね。
僕は、そこに行ったら、
それをコレクションしていこうと、
ワクワクした。
しかし、
今のぼくは、
何も感じなくなった。
待っても、待っても、
楽しい一刻が重ならない。
それでも、僕は待っていた。
「重なって、きれいな色になれ!」って
ずっと、ずっと願った。
でも、
それを見ることがどうしてもできないまま、
僕は長い時間を、
ここで一人で過ごした。
ここに来なきゃよかったのかな?
それとも、行先を間違えてしまったのかな?
一緒に来た仲間は、
今どこで何をしているのかな。
空を見上げ、
僕は悲しくなった。
一筋の涙が流れたとき、
僕の目は変わった。
どうやら、
きれいな色を探せなくってしまったようだ。
鳥を見ても、
海をみても、
何も思わない。
僕の目は、
何度も鳥や海を見て、
慣れてしまったのか?
違う。
待ちくたびれて、
目を閉じてしまったのだ。
猫が、歩いていた。
猫が、
こちらをじっと見ている。
しっぽをゆらり、ゆらしと動かしながら、
僕の方へと近づいてくる。
僕は、猫を見ている。
猫も、僕を見ている。
そのとき、
何かが、
僕の心の中でパンっと鳴った。
そこから、甘くて、酸っぱい、
懐かしい感情がタッタッタっと、
溢れてくるのがわかった。
目の前に、
ふわふわした猫がいる。
僕は、
猫を触りたいと思った。
猫は、
僕に触ってほしくない時間だったようで、
あと少しの所で、
反対を向いて、歩いて行ってしまった。
僕は、猫が好きになった!
猫をなでてみたいし、
猫をもっと知りたいと思った。
ああ、
僕は、やっと思い出した。
この、甘くて、酸っぱい、
懐かしい気持ちは、
僕が、忘れてしまった好奇心だ。
あの日、
一刻一刻が、
全部違う場所があることを知り、
そこで、一刻を大切に過ごし、
その大切に過ごした一刻が、
次に僕の所に来てくれる一刻と、重なると、
どんな色になるのかを楽しみしていたことを
僕は、思い出した。
僕の目が、
悪くなってしまったのではなかった!
ただ、それを忘れてしまって、
見ても、気づかなくなっていただけだった。
僕はそれを知って、
とても安心した。
そして、いま僕が変わっていく。
猫が触れなかったことで、
僕の中で、猫への好奇心が高まっている。
僕は走り出しだ!
知らないものが、まだまだたくさんあるのだから!
見に行かないなんて、
もったいない!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?