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勝率95%!? Champions優勝「LOUD」のAscent徹底分析(DEF編)

ZETA DIVISION アナリストのgya9です。

まずはChampions応援ありがとうございました。残念ながらZETAはグループ突破には至りませんでしたが、2度ZETAの前に現れて大きな壁となったブラジル代表「LOUD」は勢いそのままに優勝していきました。
そんなLOUDの強みが特に目立つMapがAscentで、結成当初から現在まで19勝1敗(勝率95%)という驚異的な記録を持っています。
本記事ではLOUDのAscentの強みを(2度戦って敗れた)アナリスト視点から解剖していこうと思います。


◇構成

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Sova+KAY/O構成。

LOUDは同構成を2022/03/13から現在まで変更せず使い続けています。Sovaの大幅弱体修正があったパッチ4.08(2022/04/27)以降、多くのチームはSovaに代わりFadeを採用する傾向にありましたが、筋金入りのSova使いであるSacyの存在も影響しているのでしょう。

『悪いね、うちは昔からSova1本でやらせてもらってるんだ』

的な職人顔Sacyが容易にイメージできます。(ちなみに他MapではFadeもきちんと使いこなしてます)


◇紹介する3つの要素

紹介したい要素はいくつもありますが、特に重要なものにとことん絞って、以下の3点ついて説明します。
①基本方針:お得意の乱戦に引きずり込む!

②デスを恐れない高圧的な守り

Jett PushとKilljoyを活かした「読み勝つ配置」


 ①基本方針:お得意の乱戦に引きずり込む!

まずは次の動画をご覧ください。決勝OpTic戦の1Map目、オーバータイムにもつれ込んだ末に勝利が決まる最後のラウンドです。

シナリオ:攻めのOpTicは最速でのAセットを選択。お互いのイニシエーターのスキルがAmainで直撃して一時停止。整い次第予定通りのAセットを実行するが、気付けば防衛側はAに4人。耐えるOmenをカバーする形で各所乱戦の撃ち合いになり、一気に殲滅して防衛側の勝利。

最後の乱戦はオブザーバーが全く追い付かないほどカオスですが、LOUD側からするとこれは完全に狙った動きです。「早めのリテイク(Fast Retake)」という用語でよく呼ばれる守り方で、相手のエントリーから設置前後までのタイミングで守り側もサイトにどんどん入って行って多人数 vs 多人数の撃ち合いに持ち込みます。

この動きはLOUDがいるブラジルやLATAM地域で特に愛用されており、動画のようなカオスな撃ち合いが日常茶飯事になっています。
別のMapですが、IceboxのAサイトにおける俗に言う「ブラジル壁」が発祥したのもこのような南米メタが起因していそうですね。

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・Fast Retake戦術におけるSovaの優位性
Fast Retakeに持ち込むための条件として大事なのは、相手の本命攻めに対していかに早めに人数を寄せているかです。改めて最初の動画を見ると、ラウンドの最初にはBメインにいたSovaがとんでもない速度でAに寄って気付けば3キルしています!
Sovaのドローンで得られる情報は遠くの相手や詳細な人数まで把握可能なため、相手が最終的にどこに攻めて来るかを見極めてどちらかに人数を寄せる判断材料に適しています。Fast Retake戦略を成功させるためにSovaがうまく機能していると言えるでしょう。


②デスを恐れない強気な守り

上で紹介した寄りの速度に並んで、Fast Retake成功のカギとなるのが時間稼ぎ。相手の攻めを一時的に止め、最終的にサイトに侵入されるまでにかかる時間を遅らせることで、他エリアからの味方の寄りを間に合わせます。

・基本配置における時間稼ぎ方法
LOUDの守り配置パターンのうち、最もベーシックなのがこちら↓

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A:Omen+KAY/O B:Sova+Killjoy JettはMid付近でランダム

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↑Jett出没ヒートマップ(ラウンド開始から40秒後まで。データはrib.ggより)
AShort、Mid、Bmainの3点を前のめりで守っているのがわかる

B側のKilljoyはトップクラスの時間稼ぎ性能を持っているので言わずもがなですが、特筆すべきはAのOmen+KAY/Oデュオの動き。スキルと身体を使って相手の攻めに対して当たり返すような強気さで相手の出鼻を挫きます。

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↑A側の主な守り方。スキルを返すだけでなく、有利な撃ち合いは確実に挑む


Jett PushとKilljoyを活かした「読み勝つ配置」

ここまで一つの基本方針/配置に絞って説明してきましたが、どんな攻めが来ても完璧に守れるような最強配置なんてものはありません。
例えば「MidやA/B Mainなどのエリア取りからスタートしてどちらにも攻めて行ける状況を作り、振り回すような攻めで相手の寄りを空回りさせる」などの作戦がLOUDの基本方針には刺さるでしょう。

シナリオ:攻めのOpTic、素早いMid取りからスタートし、AShortにドローンを回しつつ本隊は同時並行的にBはさみ。相手にB寄りの時間を与えずにいい形でのB攻めに持ち込むが、B中のSacyとLessの撃ち合いが強すぎて守り側人数有利でのリテイク。設置後はMarvedが救ってOpTic側の勝利

LOUDは上記のようなMidを使った攻めに対し、Push作戦とKilljoyの配置で対応します。


・Mid Push作戦の印象付けによる相手への行動制限

過去大会では対戦相手のタイムアウト直後を狙い目として積極的にMid Pushを実行。タイムアウトで相手の方針変更が来ることを先読みし、本気のスキルセットアップでMidを一切取らせません。

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↑アタッカー側OpTicのタイムアウト明けにMid Push (2022/07/13)

↑アタッカー側FURIAのタイムアウト明けにMid Push (2022/05/15)

↑アタッカー側G2のタイムアウト明けにMid Push (2022/04/18)
G2側、対策済みでPushをいなして即A攻め!

このタイムアウト逆Push戦略は、
・攻め側がLOUDのPushを想定せず、TOで決めたことを実行した場合→Pushにぶち当たって予定通りにいかない
・攻め側がLOUDのPushを想定している場合→上記G2のように相手のPushに対応する必要があり、TOで決めたことをすぐには実行できない
というように相手の行動を制限する効果が強く、対戦する立場としては「やりたいことが何もできない」状態になります。

Championsでは、いい加減TO直後のタイミングが読まれているという意図も含んでか、ゲーム序盤3~4ラウンド目で実行することが多くなっていました。

↑Push報告を受けてOpTic側は素早いA攻め、
完璧!と思いきやスパイクが~~!


Killjoy配置によるエリアキープ

Midを使った攻めに対するもう一つの対抗策として、より多くのエリア(特に両側のMain)をキープして挟撃に備える配置を取っています。特にこのような配置で探知系スキルを2つ持つKilljoyの採用が活きてきます。

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↑エリアキープ用配置。
KAY/Oのナイフによって確実にB~Midの初動を抑えることができる

シナリオ:守りのLOUDはAmainとMidのキープ狙い。攻めのZETAは1-3-1のフォーメーションでMidを取りに行くが、それを察知したLOUDはMidを放棄してリスク覚悟で素早くBmainの確保にシフト。ワインが取れているアドバンテージを活かしてAはさみを有利な形で迎え撃つ。

Push作戦や配置変更など手札の数が多く、かつラウンド状況に応じて適切に選択できるのは同じ構成での練度が非常に高いからこその技ですね。


◇おわりに

LOUDのAscentの守りの要素をいくつか紹介しましたが、列挙していて実感したのはAgentの特徴とチームが持っている強みをとことん活かしていることです。ただ単に上手にやっているというより、すべてが噛み合っているからこその圧倒的な勝率なのが改めてよく分かりました。

Champions期間をだいぶ過ぎてしまったこともありATK編は未定ですが、今後も定期的にVALORANTに関する発信を行いますので、ご意見ご要望などお待ちしております。


当記事はライアットゲームズが公式承認するものではなく、ライアットゲームズ又はVALORANTの製作・管理に正式に関与したいかなる者の見解・意見に基づくものではありません。VALORANT及びライアットゲームズは、Riot Games, Inc.の商標又は登録商標です。VALORANT © Riot Games, Inc.

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