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見知らぬ、誰か。

32−3年ほど前。
秋から晩秋にかけて。
北米の東海岸の旅の途中で僕はシカゴからボストンに向かった。
ボストンはもうかなり寒くて学生街でパーカーを買った。

ボストン美術館に行きたかったので数日滞在したのだけど、街歩きも楽しかった。知らない街を歩くのは苦にならず大学もあるので食事も楽だった。


マサチューセッツ工科大学だったかそれともハーバード大学だったのか。
よく覚えていないけれど大学の建物のあたりを適当に歩き回って学生の多くいる食堂のようなところで勝手に座ってコーヒーなんかを飲んでいた。

アメリカが大きなテロに襲われるなんて想像もつかなかったあの頃。
世界はずっと平和だったのかも知れない。



まだ、自分が何者でもなかった時代。
このまま行き倒れても誰も気に留めない。
どこから来たのかわからない、東洋人の 身知らぬ、誰か。
そんな刹那的な状況がとても心地よかった。

今ではすっかりいい歳になって。
大した何者にか、結局なれたわけではないのだけど。
あの頃よりは少し責任も担って誰かの役に立っていると思いたい。

そして今も、相変わらず街を歩くのは苦にならない。

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