外さないウゴとまばたきの多いカウア
人にはそれぞれ『癖』ってもんがあるやん?
ある人はクビをクネクネしながら、「あんちゃんさー」なんて言うてみたり、デッカい鏡餅みたいな髪のせて鼻摘まんだよな声でルールルルールル音楽が流れる部屋で早口お喋りしてみたり、人には特有の癖ってもんがあんねんな。
今日はそんな『人の癖』ってもんについて教えといたるわ。
★★★★★★★★★★★★★
地域地域で、ブラジルとか南米の人をいっぱい雇ってる会社ってあるやんか。そんな会社が近くにあれば、南米の人が沢山住む地域ができるのも必然やろ?
ちぃと昔のことなんやけどな、ワシが前に住んでた団地群がまさにそんな感じやってんな。
家族で出稼ぎに来てるブラジル人やったり、日本の人と結婚して永住権とった元外人さんやったり、それぞれ国籍はバラバラなんやけどな、その中にペルーから出稼ぎに来てた『ウゴ』てのがおってん。
ウゴは南米出身やのにシャイな男で、慣れるまではぜんっぜん挨拶もしてくれへんかったわ。ま、ワシが必殺のワンカップ握らせたったら1発やったけどな。ワンカップは世界を救う最終手段やで。
で、そのシャイなウゴなんやけど。
ある日突然、母国の国家を歌いだしてな。知らんけど母国の記念日だかなんだかで、それこそ急に歌いだしてん。
でもそこで、ワシびっくりしてんな。
だってな。
ウゴの奴、メッチャ歌ヘタやってんもん。
元の曲知らんけど、絶対こんな歌とちゃうわってことだけは、ワシにも分かったわ。こんな音痴の奴もおんねんなーて思ったのをよく覚えてるで。
でもまだ話はここからやねん。
ある日、近くの公民館で催しもんがあるからて、外人達に呼ばれて行ってみたことがあってな。そしたらたまたまそこが、ピアノのある部屋やってん。
そしたらな、何を思ったか、急にウゴが目の色変えてな。
「私にひかせてください!」
なんて本気の感じで言うねん。これはきっと相当腕に自信があんねやろ思って、その場にいたみんなが、それこそ期待してウゴをピアノの前に座らせたんや。
それからしばし緊張の間ぁがあって、
「ショパンの子犬のなんちゃら」って曲を誰かにリクエストされて頷いたウゴが、いよいよピアノに手を置いてんな。
あの時の堂々としたひき始めは、
ワシも思わず息を飲んだで。
だって、1個も音があってへんのやもん。よく聞けば、子犬のなんちゃらどころか、鍵盤の配置すら知らへんて言うやん。
あれほど完璧な小ボケはなかなかお目にかかれへんから、その日からウゴのあだ名は『外さない男』になったわけや。
音痴やけど、外さない男。
それがウゴや。
で、「結局癖の話はどこいったん?」て思ってる人もおるやろ?
焦りすぎや。
もう一人おるの忘れたんか?
そう、それが『カウア』やねん。
カウアは、日本来てすぐ花粉症になってんて。せやから目ぇがカイカイで、すっごい勢いでまばたきすんねん。それが癖やねんて。
はい、癖の話終わりー!
こんな感じで、すぐ面倒くさくなんのがワシの癖やねん。
ごめんちゃい💘