【エッセイ】高校生の恋愛
高校生のころの話である。
ある日、別れた彼氏に話がある、と呼び出された。
彼とは私が高1、彼が高3のころに同じ部活で出会った。「バトルロワイヤル」という今思えばデートにはなり得ない映画に誘われたことから付き合いが始まった。
私は初めての彼氏だったので、浮かれて美容部員の従妹から服を借りてデートに臨んだが、やって来た彼はケミカルウォッシュのジーンズを履いてシャツをインしていた。それは思春期の私には並んで歩きたくないくらいダサくて嫌だったが「俺は足が長いのが自慢だからこうしている」と言われて「確かにそうかもしれない」と真に受けてしまったくらい私は熱に浮かされていた。
しかし私たちは半年で別れた。きっかけは彼は大学に進学し、クラスの女子の話をするようになった事だ。
「クラスの中にかわいい子が二人いて、すごく優しくていい子なんだ」
とやたらと言うようになって次第に私も腹が立ってきた。彼からすれば気をひきたかったのかもしれない。しかしそんな手を使わずとも、もっとやり方があるだろうと、私は彼に啖呵を切った。
「そんなに好きならその子と付き合えば!」
彼はしばらく黙って「・・・・いいの?」と言って急に泣き出した。
彼はその後気になる二人に告白して、一人と付き合うことになった。私の方は、別れた後も彼との縁を切れずにいた。嫌いになりきれなかった。最近連絡がこないな・・・と思ってたらこの呼び出しだった。
彼は見たことないくらい神妙な面持ちだ。「話って何?」と切り出すと、彼はうつむき加減にポツリポツリと話し始めた。
「俺・・・・あいつと結婚しようと思ってるんだ」
ちょっと面食らったが「そう。なんでそんなこと私に話すの」と聞いてみた。「俺、あいつといるとすごく心が落ち着くんだ。その・・・、なんていうか、お前が告白すればって言ってくれたからあいつと付き合えてるわけで…、お前のおかげで今の俺たちがいるんだなって思って、感謝したいなと思ったんだ」
あれれ?この目の前にいる人はなんだか盛り上がってるみたいだけど、私の心は冷え冷えとするばかりだ。おかげ・・・?感謝・・・・?なんだそれ。私は踏み台ってこと?彼の眼は心なしか潤んできている。私はこの人が別れる前も泣いていたことを思い出していた。
「で、最後に感謝の気持ちを・・・」と言って彼は私に抱擁を求めてきて、そこでハッと気づいた。確信した。この人の事私嫌いだ。
「バッ、バカにすんじゃないわよっ!勝手に幸せになんなさいよっ」
と明らかに動揺が伝わる上ずった声で叫び、猛ダッシュでその場を去った。いつもの指定席、校舎の隅の非常階段で横になって、深呼吸をし、二度と彼に会わないことを決めた。
下の階では仲睦まじくカップルが話している。「あんた達も、いつか私の気持ちがわかるようになるさ…」と呟いた。ものすごく自分が惨めに思えた。