「動物のカメちゃん」についての情報、余りにも無い問題

はじめに

 「動物のカメちゃん」という漫画がある。あった。確かにあったはずなのだ。自分はこの漫画が大好きだった。だから勿論単行本は全巻揃えたし、ノートにカメちゃんの絵を描いていたりもした。そんな子供であった。
 ところがそれから20年を経過した現在、人類の集合知たるネットの世界を漁っても、ほとんど情報が転がっていない。誰もカメちゃんを覚えていない。語ろうとする向きもないのである。
 今回、そんな現状に対して憤慨を覚えた筆者は、今や謎となってしまった「カメちゃん」周りの幾つかの情報について、主にネットを中心として調査を敢行した。当記事はその結果について、今後現れうるカメちゃん難民のために書き残すものである。

「動物のカメちゃん」について

 読者諸兄においてはこんな記事を見るくらいだから、その存在については重々ご存じであろうが、一応、以下にて通り一遍の説明をしておく。
 「動物のカメちゃん」は自らを「カメ」と称する謎の生き物「カメちゃん」と、その周囲で巻き起こる不条理な出来事に翻弄される人々を描くギャグマンガである。
 主人公「カメちゃん」は自らを指して「カメ」であると豪語してはばからないが、その手のひらサイズの体躯の、約半分を占める巨大な頭部に、着脱可能の甲羅を持ち、更には日本語による会話と直立二足歩行が可能であり、また物語開始以前にどのような人生を送ってきたのか、謎の人脈と技術をも持ち合わせている、謎に包まれた生き物なのである。無理にカテゴライズするなら妖怪変化の類であろうし、SCP財団の保護下に入れば、Euclidあたりに定義されるに違いない。
 そんなカメちゃんを中心として巻き起こる不条理極まりない状況に、殆ど被害者と言って良い格好で巻き込まれるのが、定期的に入れ替わる「ツッコミ役」たちの存在である。平凡なマルチーズ「ラッシー」、血統書付きゴールデンレトリバー「ジョン」、カメちゃんの甥という設定なのに何故か人間の「雄三」、そして天才的ツッコミを持ち合わせたカメちゃんの相棒的小学生「神田はじめ」。カメちゃんは彼らの日常からその人生に至るまで介入し、独特のボケ感覚でもって事態を引っ搔き回していく。
 著者は「猫ラーメン」や、最近では「猫ピッチャー」「ねこねこ日本史」等、素朴で可愛らしい絵柄を武器に、ほんわか系の皮を被った不条理漫画作品を断続的に世に放ち続ける、あの「そにしけんじ」先生。
 上記作品群を見ればわかるだろうが、先生は猫漫画の大家として名高く、また複数のアニメ化も経験されている。爆発的な売れ方こそしないものの、独自のセンスを持つ息の長い作家である。
 「動物のカメちゃん」は、そんなそにし先生のキャリアにおける最初期の作品であり、また週刊少年サンデーという一大メジャー誌に連載されていたため、少なくとも当時の自分の周囲ではそれなりに有名であった。
 ところがどうだ。今現在、「動物のカメちゃん」は、恐らく80年代中後期~90年代初頭生まれの一部の人間だけが知っているコアな作品の一つとなり果ててしまっているのである。

ネットで知り得た「カメちゃん」情報

 以下において、ネットの海をサーフィンした結果、得られた情報を適宜記載していく。

〇掲載・刊行関連

 動物のカメちゃんという作品について、とりあえずの情報を知りたいならまず参照すべきは上記のwikipediaページだろう。というより、googleなどの検索エンジンで出て来うる情報は殆ど上記のページに集約されていると言っても過言ではない。と言うか、上記ページ以外にカメちゃんの情報が記されているページがないのである。
 特筆すべき情報としてカメちゃんの複雑な連載事情があるだろう。カメちゃんが掲載されていたのは少年サンデー本誌だけではないのである。例えば、少年サンデーでの連載終了後には、別冊コロコロコミックで新シリーズ「闘う!動物のカメちゃん」が連載されていたのだった。
 当該シリーズは残念ながら書籍化はされていないようで、復刊ドットコム上に要望が出された気配があるが、書影が確認できない。下記の「外伝」の件から考えてみても、そもそも発刊自体がされていないものとして考えた方が良かろうと思われる。
 なおwikiには、当該シリーズについては8話で終了とあるが、これについて、wikiに掲載されていない情報として、「ギャグコロコミック」への出張掲載の件がある。
 「ギャグコロコミック」はコロコロコミックの別冊付録として本誌に付属する小冊子のうち、ギャグに振り切った掲載作品が選抜されて掲載されるものとして有名であるが、実は一度だけ増刊号として発刊されたことがある。これが2003年7月30日の発刊なのであるが、ここにカメちゃんが一度だけ掲載されていたのである。

 もう一つ。これも何故かwikiに掲載はないのだが、2000年10月~2002年1月までの間、カメちゃんは「動物のカメちゃん外伝」というタイトルで上記「週刊少年サンデーS」という雑誌に掲載されていたのである。また、この間の連載分については、下記のとおり「亀ちゃん そにしけんじ作品集」という他社発売の単行本で世に出ているのである。
 発行はジャイブ株式会社。音に聴く玩具会社タカラの系列として出発し、2006年にポプラ社の傘下となった出版社である。そにし先生は当時ポプラ社での連載を持っていたので、この単行本化はその縁で実現したものと思われる。

 「外伝」は、当時の本線であったペットショップ万華堂を中心とする世界観とは違い、荒れた高校を舞台とし、そこに教師として赴任したカメちゃんが、不良高校生鮫島を東大に入れるという何とか桜っぽい世界観であり、本線からは完全に独立していた(一応鮫島は本線においても中学生として登場するが)。この点が「闘う!」と違い、単体の作品として単行本化できた理由なんではないかと思う。

〇グッズ展開・HP等

 yahooジオシティーズ亡き後、00年代のネット風景を今に伝える貴重な資料として、mixiは非常に有用である。調べてみると案の定、コミュニティの存在が確認できた。
 このコミュニティから得られた情報として、カメちゃんのグッズ展開が確認できた。どうやら一時期、ダイソー等の100円ショップでカメちゃんのぬいぐるみが発売されていたらしいのだ。ただ、トピックでは2006年当時で「結構前」と称されているので、連載中もしくは終了直後くらいの年代と思われる。
 また、これはwikiに記載があるのだが、「動物のカメちゃん -日本侵略計画-」について。これは東映アニメーションによるゲームサイトなのだが、カメちゃんを題材としたもので、長らく運営されていた痕跡がある。なお、当サイトは現在存在しない。2010年代後半には存在を確認した覚えがあるので、恐らくフラッシュが廃止となったことでゲームが維持できなくなったのだと思われる。
 mixiユーザーの記載によれば、このサイトにあるアンケートに答えることで「日本カメ党員」シールが貰え、更にそれを街中に貼り、貼った箇所を写真に撮って送ることで「カメ・グーグルマップ」上にカメちゃんマークが記載されるという一種のAR的ゲームも運営されていたらしい。今やったら完全に迷惑行為であるが……。おおらかな時代だったなあ。

ネットで知り得ないカメちゃん情報(情報求む!)

 まあ今後も調査は続けていくつもりではあるが、正直、ネットで当時の情報を集めるにも限界がある。WEBブラウザはみんなが知りたい情報に最適化されてしまったせいで個人サイトなどの細やかな情報をまったく拾わなくなったし、(何がブラウザだ!)。そもそもの個人サイトやブログも、今この瞬間にも消滅して行っている。ネットは最早人類の集合知などではなく、醜悪な宣伝装置に過ぎないことを今回まざまざと思い知らされた。
 そこで、今後の調査を行っていくうえで現在自分の中で疑問となっていることを以下に列挙していき、あわよくば誰かから何かしらの情報を得られればありがてえなと思う次第なんである。

〇「闘う!動物のカメちゃん」は本当に書籍化されていないのか?
 これなんである。正直、自分にとってのカメちゃんは別コロに載っていた「闘う!」が主なのである。だから出来ればもう一回見たい! 一応上記文章中では、「どこを探しても書影が見つからない点」、「幼児~少年誌掲載であり、単行本で出す意味が薄い点」、「連載が短期であり、また恐らく毎月掲載ではないであろう話数しかない点」、「別シリーズ(外伝)が別出版社から発行されている点」などから、未発行と断定したが、やはりファンとしてはどこかで出ていると信じたいものである。もしや、ごく少数部の発行で重版がかからなかったとか……。あったら、良いんであるが……。何か情報があれば追記する。

〇カメちゃんのグッズ展開について
 これも大分自分の希望が入っているが、カメちゃんのグッズ展開は100円ショップのぬいぐるみだけだったのだろうか。需要は別として、正直カメちゃんの可愛さは相当グッズ向きであると思う。とりあえず現在のヤフオクを調べた限り、QUOカードの存在は確認できた。これは恐らく、雑誌のプレゼント企画用と思われる。(一枚は2巻の表紙を流用したもの、もう一枚は1コちゃん登場時の某星戦争ネタを絵にしたものなのでほぼ同時期か。)しばらくヤフオクを眺めるだけになりそうだが、続報があれば追記する。

〇カメ党員侵略箇所は現存するのか?
 上記の「カメ党員」シールについて。mixiによると、遠くはイギリスのロンドン・ドイツはミュンヘンにも貼られていたとのことで、日本国内にも、もしかしたら相当数の貼り付け箇所があったのではないかと推察される。その中で、ほぼ20年を経過している現在ではあるが、残っているシールの個体がもしかしたらあるのではないかと疑っているわけだ。上記の文章中ではグラフィティアート感覚で屋外と言ってしまっているが、貼ってある箇所は必ずしも屋外とは限らない。例えばライブハウスやコテージなどにも貼っていた人がいるのではないか? 残念ながらカメちゃんサイトは現存しないのでその全貌は見えないが、今後の調査で場所が分かればそこまで出かけてみるのもやぶさかではない。続報があれば追記する。

〇カメちゃんを語りたい!
 これは調査とは関係ないのだが、やっぱりファンである以上、好きな作品を語りたいのは必然であろう(だよね?)。そこで近い将来、カメちゃんを語る記事を書きたいのである。まあ他の好きな作品と色々併せて書いちゃうかもだが。

 とりあえずこの文章はここらで終わりとしよう。今後何か分かれば、追記という形でこの文章を更新していこうと思う。ではその日まで。

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