TURBULENCEのサードアルバム「BINARY DREAM」が前回に引き続き良かった
レバノン出身のプログレッシブ・メタルバンド、Turbulenceの3作目となるアルバム『Binary Dream』は、人工知能と意識の覚醒をテーマにしたコンセプトアルバムです。全9曲、約50分にわたり、ロボット「8b+1」の視点から物語が展開されます。
アルバムは、短いイントロダクション「Static Mind」から始まり、続く「Theta」では、ヘヴィなリフと複雑なリズムが融合し、バンドの技術的な熟練度を示しています。特にギタリストのAlain IbrahimとキーボーディストのMood Yassinの演奏は卓越しており、複雑なアレンジメントの中でもメロディアスな要素を失わない点が印象的です。
アルバムの中心となる14分に及ぶタイトル曲「Binary Dream」は、バンドの作曲能力と物語性を最大限に発揮しています。中東の伝統楽器であるカーヌーンのソロが取り入れられ、バンドの文化的背景を反映しています。この楽曲は、プログレッシブ・メタルの複雑さとオリエンタルな要素が融合した、独自の音楽体験を提供します。
ボーカリストのOmar El Hageの表現力豊かな歌唱も特筆すべき点であり、物語の感情的な深みを増しています。アルバム全体を通じて、バンドは技術的な巧妙さと感情的な表現をバランスよく融合させており、聴き手に深い印象を与えます。
『Binary Dream』は、Turbulenceがプログレッシブ・メタルシーンで独自の地位を確立しつつあることを示す作品であり、その音楽的探求と文化的融合は、ジャンルの新たな可能性を提示しています。このアルバムは、プログレッシブ・メタルファンのみならず、多くの音楽愛好家にとっても興味深い作品となるでしょう。
レバノンは、1990年まで続いた内戦や2006年のイスラエルとの紛争により国土が荒廃し、情勢は不安定な状況が続いています。さらに、シリアやパレスチナから多くの難民が流入し、そのうち約半数は子どもや若者であり、人道支援が必要とされています。社会的・経済的な発展の格差是正が今後の課題とされています。
このような社会情勢の中で、Turbulenceの音楽は、レバノンの複雑な歴史と文化を背景に、独自の音楽性を築き上げています。『Binary Dream』は、彼らの創造性と技術力を示すだけでなく、レバノンの豊かな音楽的伝統と現代的な要素を融合させた作品として評価されるべきでしょう。
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