西村朋子

脚本家・シナリオライター。月刊「シナリオ」2020年10月号の「シナリオセミナー」で習作「あばら家」を、髙橋幹子先生に講評していただきました……!

西村朋子

脚本家・シナリオライター。月刊「シナリオ」2020年10月号の「シナリオセミナー」で習作「あばら家」を、髙橋幹子先生に講評していただきました……!

マガジン

  • 小説『きっと伝わらないことの』

    残酷な家族ドラマと友情のクロス

最近の記事

『きっと伝わらないことの』

視線 「あと1か月で共通テストだ。クラスでみな進路は様々ですが、互いの状況を尊重して毎日を過ごすように」 朝のホームルームで白崎先生が生徒たちに諭すように告知する。その声は穏やかだ。うちの高校は超トップ校とまではいかないけど、大学受験する奴もそこそこいて、卒業したら就職する奴もいる、けっこうバラバラなタイプが集まっている学校だ。それで喧嘩が起こるわけではないけど、人間関係がきしむ場面もないわけではない。だからよく、担任や数学や国語の先生、生徒たちの摩擦を和らげるためにいろ

    • きっと伝わらないことの

      3 家族 「兄貴どしたん? びみょーにぼーっとしてん」 裕一が夕食のカレーをかきこみ飲み込んだタイミングで聞いた。 「う―――ん……」 テーブルには母さんが作り置きしてくれたカレーとサラダ、あとさっき淹れたほうじ茶を並べて、先に帰っていた裕一と遅い夕食を食べている。 「志望校のこと? 迷ってんの」 「お前さ、クラスメイトの名前って全員言える?」  裕一の釣り目がハア?と三白眼になる。 「なんだそれ」  サラダを口に放り込んでごくりと飲み込み、呆れたように、 「どうでもいいん

      • 「きっと伝わらないことの」

        1 冬の旧校舎で    おれは今、非常に難易度の高いタスクに直面している。  季節は冬、中村慎吾18歳高校3年生、来年度の春には取り壊される予定のーオンボロ旧校舎の裏手。 「紙ごみで捨てといて。優しいでしょお罰ゲームにしては。資源は有効活用しなきゃ」  息は白くみぞれ降る、栗色の巻き毛でクラス一のコメディアン女子、安村麻衣はちょっとおどけて目はマジで、冬空の下、俺に分厚い家族アルバム4冊をがっちり手渡し申し付けた。 「麻衣のお姉ちゃんって大学教授ってほんとう?」  昼休

        • 他者を見つめることを思い出したい

          物語を書いていて、ふと、自分以外の他者を自分はもう本気で必要としなくなってしまったから、一番大切な「なにか」が抜け落ちているんじゃないかって不安になる。大きな挫折を味わった日、その前はもっと、友達のことで一喜一憂したり、苦しんだり喜んだり笑ったりしてたのに。だけど、いまの自分は、他者のためにそこまで悩むことも喜ぶこともなくなって、だから物語の、一番大切な「なにか」に届かないような、そんなかんじがする。シナリオ、小説の核になる、「なにか」。一人で宙に浮いているような、そんなかん

        マガジン

        • 小説『きっと伝わらないことの』
          3本

        記事

          『新クラス始動―運命の日』

          ひとりぼっちで卒業証書を手に佇むわたし。 「わたしは友達ができないまま中学を卒業した……。」 だから、今日は負けるわけにはいかない! 今日は運命の日! 高校入学式! 桜の花ふぶきがきれいだけど今日はそれどころじゃないのだ! わたし、遠藤(えんどう)律子(りつこ)は校長先生の長い「入学おめでとう」話を聞きながらノートに目を走らせていた。このノートは、中学時代の反省と改善点をまとめたお守り。 反省点1,新クラス発足直後15分。 「よし……」 クラス分けを確認し足早に教室に駆け

          『新クラス始動―運命の日』

          去年コンクール応募した『湖畔の妖精』

          アニメ『湖畔の妖精』 西村朋子 アリサ(15) 子爵令嬢 ニケ(17) 妖精の少女 ギル(28) 骨董品屋 メアリ(30) アリサの姉 ジョン(40) メアリの夫 ターナー(70) 神父 ニンフA 男妖精1 町人1 町人2 老人 配達員 馭者 事務員 音楽隊 村人 農夫1 農家の女   アリサは両親を亡くし、一人で屋敷に住んでいたが、姉のメアリとその夫ジョンが屋敷を出るよう告げるので、つらい日々を送っていた。  そんな折、アリサは湖で、妖精の少女ニケと出会う。  アリサは

          去年コンクール応募した『湖畔の妖精』

          ファンレターを書くのが好きだ

          自分は好きな作家さん、漫画家さんにファンレターを書くときが一番楽しい。 もしかしたら、自分のシナリオや小説を書くとき以上に好きなのかもしれない。 十代のときからもっと好きな作家さんにお手紙を書いてればよかったな。 キャラやストーリーへの想いを書いて、封をして。 もう届いたかな読んでくれたかな、てドキドキする。 すごく大切な時間だ。

          ファンレターを書くのが好きだ

          美しい万年筆で手紙を書いてみたい

          美しい万年筆で、サラサラカッコよく手紙を書くのって、すっごいあこがれるんですよ! で、パイロットの、初心者向けの万年筆を買って、葉書でお手紙を、てやってみようとしたことあります。 しかあーし!!! 私は一つ致命的なことを見落としていたのです! 万年筆を使おうがボールペンだろがサインペンだろうが! 私自身の書ける「字」そのものを美しくすることは不可能なのです! はああああ、、、 せめてシナリオ小説の中だけでも、美しく万年筆を使いたいものです涙哀

          美しい万年筆で手紙を書いてみたい

          明るいシナリオ小説も書きたい

          なんのことっていうか、コメディって意外と難しいー少なくとも私には、、、 「もう鬱展開は置いとこう! 私は心の温かくなる、そんでクスッと笑える話 書くんじゃー!」て、始めるんだけど、、、 なんかいつのまにか「また」鬱展開になってんねん、、、 書いてる私までボロッボロ鬱涙よ。 そんなの時には忘れたいよ。 たまには心から笑える話書いて、ほえーっとぽやーっとしたいよ。 弾けるように楽しいコメディ書いて、自分でも笑いたい。

          明るいシナリオ小説も書きたい

          かっこいい「必殺技名」とか考えたいけど……恥ずかしくなっちゃうっておはなし

          はい。今回の記事はノウハウとかじゃないです。 ただ、かなり切実です。 脚本書いててそんなこと言ってる場合かとかアニメ書きたいんだろ自分とか思います。 しかし……しかしです。 いや、いちファンとして、今、はまってるアニメを見て、キャーキャー言ってるときは、ぜんぜんオッケーなのに。 「自分で」アニメの脚本を考え、自分の作ったキャラクターの「必殺技」っつうか、いろいろイケてるかっこいい技名とか考えるんですけど…… むちゃくちゃ恥ずかしい! どうすればいいの?! ネタノー

          かっこいい「必殺技名」とか考えたいけど……恥ずかしくなっちゃうっておはなし

          書いてない時間にやることで、忘れちゃいけないこと

          書いてない時間に、物書きがやることといったら、まずインプット、妄想、妄想、妄想。 タイトルで「忘れちゃいけないこと」なんて書いたけど、ものを書こうって人でこれを「忘れてる人」なんていないのはわかってるんだけど、自戒をこめて、あと一つ、言葉にしておこうと思った。 有料マガジン月2回更新って設定しちゃったから有料設定にするけど、書くのが慣れてきた人は、「なあんだ、当たり前じゃん」な内容。 書いてない時間に忘れちゃいけないこと。 それは、 「ぐだぐだ悩むこと」。 そして

          書いてない時間にやることで、忘れちゃいけないこと

          まだ誰も見つけてないアイデアってどこにある?

          ドラマ、アニメ、映画、漫画で、「新しいアイデア」を見つけるためにどこを探そうかって、どこを探したらいいの? て、クリエイターの永遠のテーマだ。 正確には、最初に引っかかった「なにか」をいろいろ組み合わせたり、新旧取り混ぜて「古きを訪ねて新しきを知る」で、もう若い人は誰も知らないような映画と自分の中でそのとき渦巻いてる感情がいきなり心の中で化学反応起こしたりとか、とにかく「心の中」にいっしょくたに入れて混ぜこぜにしまえるものは、なんでも「アリ」だ。 そのときに、なにげにほか

          まだ誰も見つけてないアイデアってどこにある?

          シナリオと小説の違いは、「目的」の違い?

          自分は最初小説から書き始めて、それからシナリオの勉強を始めてーというかんじで、手探りで小説とシナリオの違いをぼんやり考えながら、うまく言葉にできないかなあともやもやしてきたのですが、なんというか・・・・・ あくまで私の「主観」なので、「違うわい!」みたいな突っ込みどころがあれば、どうかご容赦ください。 小説は、それ自体が、言葉のひとつひとつが「作品」として、読んでくれる人がいるんですね。読者にとっても、小説の言葉ひとつひとつこそが「目的」っていうか・・・・・小説であるじゃ

          シナリオと小説の違いは、「目的」の違い?

          西日

          西日がドアの隙間から漏れてくる。 差し込み式のポストから、溜まった郵便物やら新聞を一気に引き抜いた瞬間、茜色の光が一瞬室内を照らしたのに、篤は見とれた。そして目をそらした。 ほぼ自分が入居する前の借主に対するダイレクトメールだな、と確認しながらわずかな安堵感と同時に、だれも、俺を思い出して一筆よこしても、きやしないんだな、あいつらもーーー 結局途中で、篤がダイニングにそれらを雑に投げ置くと、束の中から一枚の絵葉書が泳ぐように足元に流れてきた。拾い上げようと片足をついてか

          アニメ書きたいから中2病精神取り戻さなきゃって思うこのごろ

          ひさびさにアニメ見て、ワクワクする気持ちを味わえて、同時にそれが自分にとってご褒美みたいな、貴重なことになっているのに気づくんだよね。 まずアニメ書きたい! て、3年前シナリオの世界に飛び込んで。 でも、十代のころの、病みつきになるような熱病みたいな幸せな感覚は もう、そうそう簡単には味わえないんだなーて、感じながら、シナリオ書いてる今。 そりゃ作り手側の、脚本の世界に入って、ファンの、しかも青春十代と同じじゃ困るじゃん当たり前ってそうだけど。 でもあの頃の、あの空

          アニメ書きたいから中2病精神取り戻さなきゃって思うこのごろ

          高2の夏ー太宰治で読書感想文を書こうとして挫折した話

          まず、ダザイストの方々に謝罪します。 これはあくまで遙か昔の思い出話であり、いまやいい年の私が太宰治の文学的価値を否定しようとか、けなそうとかそういう意図ではないことをまず宣言させてください。 そう。 あれはまだ私が青春のさなか、高校2年の夏でした。 国語の授業で文学史を習い、そのとき名前を知ったのが、太宰治でした。 教科書でもその文学的価値を述べられており、日本文学について素人だった私は意気揚々と図書室で太宰治の小説を5冊ほど借りて、よしよしこれで私の夏休みの読書

          高2の夏ー太宰治で読書感想文を書こうとして挫折した話