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ココナッツムーンに惜別の花束を
比嘉清正さんの店、ココナッツムーンが閉業したのを知ったのは、来年あたり思い切ってココナッツムーンに寄り、清正さんに会わないとなあと現在のココナッツムーンの営業時間を確認しようとGoogle検索した矢先である。
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大慌てでFacebookのココナッツムーンアカウントに問い合わせたところ、数時間後にスタッフさんから連絡がきた。
「近日中に落ち着いたら投稿しようと思ってたのですが実は今月で閉店となりました」
しばらく呆然とし、アルバムを引っ張り出して想い出に浸るしかなかった。
ココナッツムーンに初来店したのは2003年の9月19日。往復6000円強のタクシー代を払うことも厭わずに、清正さんに会いたい一心でココナッツムーンへ向かった。
その時のエピソードがこちら。
汗と雨で濡れた紫のポロシャツと白のコットンパンツ姿で颯爽と現れた清正さんを見た時はときめきのあまり、椅子からひっくり返りそうになり、涙目でどもりながら挨拶をしたのを未だに鮮明に覚えている。
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「き、き、き、清正さまですか。比嘉清正さまですか?」
もろに挙動不審な私に清正さんは苦笑しながら応対し、「なんで清正さまなんて呼ぶの?清正さんでいいから、様はつけなくていいから」と注意された。
オリオンビールとタコスをオーダーし、タコスの美味しさに魅了され、西海岸独特の水っぽい潮風がすっかり真っ赤になった顔に心地よく、カウンターではスタッフの方が楽しそうに働いていて、私は眩しさに目を細めた。
以来、2009年までココナッツムーンは来沖する度に通う大切な場所になった。
リナママさんの絶品料理、歴代バーテンダーの方々による甘さ控えめのキリリとしたモスコミュール、私が来ても吠えずにくぅーんと鼻を鳴らしつつ足にじゃれつく看板ビーグル犬だったテキーラ、窓の向こうの夜の海、海に白い道を作るかのように光る月明かり、斜め向かいにそびえ立つルネッサンスリゾートオキナワの灯り、そして、カウンター席に座り、煙草を燻らせる清正さんの姿。
全てが愛してやまない、そんな店だったココナッツムーン。
ココナッツムーンには忘れられない想い出ばかりある。
リナママさんにオキナワンロック裏話を聞かされて驚嘆したこと、来店した途端に清正さんからいきなりジミー宜野座さんが音楽活動を終えた知らせを聞かされたこと。
沖縄で初めてできた友達であるさっちゃん同伴で来店し、清正さんかっこいいねというさっちゃんの言葉が自分のことのように嬉しく、誇らしくなったこと。
2008年の春、コザで受けた仕打ちに疲弊し、青い顔をした私を見るなり、清正さんに心配され、慰められつつ窘められたこと。
2008年の来沖最後の夜、泥酔した清正さんに思い切りおちょくられたこと、そして清正さんが仕込んだという肉の甘さと島唐辛子の辛味の余韻がするタコミートを使ったタコスを頬張ったこと。
そして、2009年。昼間のココナッツムーンにさっちゃんと共に来店し、清正さんのお孫さんと貝殻を拾って遊んだこと。帰り際に見た、楽屋にて扇風機に当たりながら半裸でギターを爪弾く清正さんの丸くなった背中。
想い出は今も鮮やかに脳裏を過っている。
しかし、2011年の春。清正さんに会いたくてふらりと来店したものの、清正さんは不在。落胆しながら見慣れない外国人バーテンダーにオーダーしたモスコミュール。その味のあまりの変わりようにダメ押しされ、俯きながら店を出てからココナッツムーンに行くことはなくなってしまった。
それからココナッツムーンの近状を人づてに聞くばかりで、寄ろうと思ってもいつかいつかと先延ばしにし、来沖してもコザか那覇ばかりしか行かず、恩納村へ向かい、ココナッツムーンへ行くことに躊躇してしまった。後悔先に立たずである。
普天間に店があった頃と合わせ、44年の歴史に幕を閉じたココナッツムーン。清正さんはこれから音楽に専念するのだろう。ココナッツムーンという会える場所がなくなったから清正さんに会えるのはいつになるのだろうか。
いろんな思いがループして止まらない。
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最後に。ありがとう、ココナッツムーン。
さようなら、ココナッツムーン。
私にとってココナッツムーンは宝物のような場所でした。そして清正さん、どうかお元気で。
貴方は今でも私にとって大好きな人なのです。
(文責・コサイミキ)