オキナワンロックドリフターvol.34

転職して1ヶ月。最初はパートタイムという契約で入社したものの、なしくずし的にフルタイムになり、収入が僅かではあるが安定し出した。そんな時、私のサイトにも変化が起きた。
後追い世代のオキナワンロック好きがいるという珍しさからだろうか、色んな方がサイトの掲示板に書き込みをされた。
いちげんさんで終わる方もいたが、そのまま常連になられた方もいた。
しかし、その客層はふたつに別れた。
2003年のサイトリニューアル当初からいらっしゃる古参の方々がおり、中でも、リーダー格的存在で、鹿児島で公務員をされているワイアードさんと、その参謀格で神奈川在住のウェディングプランナーのコウさん。このおふたりと意気投合し、サロンを作り出していく客層。古参ではあるが、セミプロでギタリストをされている都内在住のアルタイルさん、そして新規に書き込みをされた福岡在住のイラストレーターのフランさんが前者だった。
そしてもうひとつはオキナワンロックや沖縄、ないし、それぞれの好きなことをがっつり語りたい客層で、島ナイチャーのダイさん、千葉在住のバンドマンのテルさん、大阪在住のGS好きなナオさん、福岡在住でCDショップ勤務のパティさんという新規の方々がそのタイプだった。
前者の方々にはサイト創成期に書き込みしてくださり、色々親切にしてくださった恩もあった。
が、悲しきかな所詮は後追い。だんだん話についていけないもどかしさもあった。さらに、ワイアードさんとコウさんの陣頭指揮でサークル的サイトが立ち上げられ、アルタイルさんとフランさん、8-ballからオキナワンロックを知った複数名が参加され、それぞれの得意分野でそのサイトは彩られていった。特にフランさんが描かれた紫メンバーを犬化したイラストには魅了された。私も一応そのサークルサイトの末席には入ることになったものの息苦しさは加速していった。
ワイアードさんとコウさんには申し訳ないが、私にとってこの頃はサイト運営の悩みの時期だったと思う。
正直、後者の方々が書き込みしてくださると気持ちが楽になった。ダイさんは80年代~90年代当時の沖縄を移住者の視点から語ってくださり、ナオさんとは70年代のイギリスのバンドであるユライアヒープやザ・ゴールデンカップス、テンプターズといったGSについて語りあえ、パティさんからはジャパメタについて色々教わり、テルさんは90年代のコザについて語ってくださり、特に全盛期~閉店までのアイランドや創成期のJETについて等私の知りたかったことを教えてくださった。
それぞれとまんべんなく接することができたら良かったものの、コミュニケーション能力のパラメーター値が低い私にはどだい無理な話で、だんだんサイト運営がストレスになっていくという本末転倒が起きていた。
そんな矢先に掲示板に荒らし書き込みがあった。
当時、掲示板には私がお絵描きソフトで作ったオリジナル紫やJETのメンバーのアイコンを使っていた。
“被害者の親族”と名乗るその人は正男さんの起こした事件をニュースサイトからコピー&ペーストし、正男さんアイコンの削除を要求する書き込みをされた。
最初は無視して削除したものの、間を置かずに同じように事件のコピペと正男さんのアイコン削除を要求され、私は動揺した。
この書き込みは常連さんたちの目に入り、ワイアードさんとコウさんが“被害者の親族”氏にやんわり注意すると、“被害者の親族”氏がさらに書き込みをし、さらにはワイアードさん、コウさんのサイト掲示板まで荒らしていく事態が起きた。
仕事と仕事の人間関係で疲弊していた矢先にこの状態は苦行だった。
時間が取れる休みの日に頓服を飲みつつ、全面的に戦いそうな勢いのワイアードさんとコウさんには「私がなんとかします」とメールし、“被害者の親族”氏向けにこう書き込んだ。
「弊サイトにお越しくださりありがとうございます。被害者の方のご親族様とのこと。正男さんがご親族にされたことはさぞ心を痛めておられるでしょうし、私自身も一ファンとして、そして女のはしくれとして、悲しみと憤りでいっぱいですし、ファンサイトを運営することに葛藤があります。しかし、私は紫やアイランドを通して正男さんの歌を知り、正男さんの歌声により心を救われました。いわば命の恩人も同等の存在です。それに正男さんもオキナワンロックの礎を築いた存在であります。なので、私個人の意見ではありますがアイコンは削除しません。勝手なこととはわかっております。もし、ご意見やご不満がございましたらメールにてお願いします」と。
以来、“被害者の親族”氏からの書き込みはぴたりと止んだ。
ワイアードさん、コウさん、フランさんからはよくやったとメールがきたものの疲労感と虚しさだけが残る不毛な一件だった。
疲れることは芋づる式で起きるもので、荒らし書き込みではなかったが、数日後、私のストレスをさらに増加させるメールがきた。
イハと名乗るコザ在住のエンジニアの方からだった。内容は簡潔に書くとこうである。
「城間兄弟メインのオキナワンロックのファンサイトをやっているけれど、貴女は城間兄弟のしたことを知っていて運営しているのか?」と。
文面を何度も何度も読み返したが、喧嘩を売っているのか、それとも素朴な疑問なのか?どちらとも取れる文面だった。
私はまた頓服を口に放り込み、水を一息で飲んでからイハさんのメールに返信した。

(オキナワンロックドリフターvol.35へ続く……)

文責・コサイミキ

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