孤独担当大臣?
一瞬、聞き間違いかと思いました。
少し前のことになりますが、2018年、イギリスのメイ英首相(当時)は「孤独は現代の公衆衛生上、最も大きな課題の一つ」として、世界初の「孤独担当大臣」を任命しました。
世代にかかわらず孤独の問題は政策的な対応が必要であるということを国がここまでカタチにするのはすごいですね。
「対孤独戦略」という2018年10月発表の報告書では、英政府は「孤独」について次のように定義しているとそうです。
「人付き合いがない、または足りないという、主観的で好ましくない感情」「社会的関係の質や量について、現状と願望が一致しない時に感じる」
そして、関連する委員会によると、「孤独状態は、健康に害を及ぼし、人とのコミュニケーションが難しくなる。」としています。つまり、「孤独」が医療費や経済を圧迫しかねない、ということを懸念しているんですね。
ロンドン大経済政治学院は「孤独」がもたらす医療コストをも算出しており、10年間で1人当たり推計約85万円、つまり1年間で8.5万円ということです。
ここで、「孤独」と「孤立」の違いについて考えたいと思います。
「孤独」:仲間付き合いの欠如あるいは喪失によって、好ましくない感じを持つこと。
「孤立」:家族やコミュティとほとんど接触がない状態のこと。
こう考えると、孤独は主観的な感情を意味するのに対し、孤立は客観的な状態だと言えます。
イギリスの対孤独戦略では、この孤独と孤立の両方を含んでいると考えられますね。
国立社会保障・人口問題研究所が公表した直近の将来推計によれば、2025年の単身世帯(1人暮らし)は、2015年より8.4%増え、総人口に占める1人暮らしの割合は16%となり、「6人に1人強が1人暮らし」に変わるとされています。
「孤立」と「孤独」のリスクが今後は一層高まると予想されます。
政策的な支援、社会的支援のポイントはまさにこの部分にフォーカスされていくのではないでしょうか。