ちょっと良い1日
アラームも無視して気の済むまで寝る。
授業は8時から。
あやふやな寝起きの僕がスマホに目をやると
時刻は7時49分。
久しぶりの寝坊だ。
二段ベッドの上段から下段にいるルームメイトを
起こさないようにしかしそれでいて急いでジャンプをした。
急いで洗面所に行って
コンタクトを入れて髪の毛のセットをした。
そしてそのまま1限へ急ぎ足で向かった。
朝ごはんを食べた方が自分にとってはメリットは
デカいのだろうとは思いつつ、世間体を気にする
僕はあくまで外から見える自分に重きを置く。
朝ごはん抜きでの1限は憂鬱だった。
頭の中はこの授業が終わった瞬間に朝ごはんを食べようという意思に支配されていた。
バレンタインデーに学校で平然とした顔をしている男子が本当は誰かがチョコをくれないかソワソワしているように。
自分にも周りの人にもバレないように手を抜いて平然とした顔で授業を受けた。
授業の終わった自分は即刻自分の部屋に向かい、
シリアルを少量だけ、フォークで食べた。
先日スーパーに行った時に、通常のミルクは売り切れで、脂肪0%のミルクしか売っていなかったため、
絶妙に僕の口に合わないミルクを使っているからだ。
フォークならば、
脂肪0%のミルクを味わうことなく済む。
そんな場面で16歳だか17歳だかわからないハワイ出身の陽気な(毎晩騒ぎ立てて僕をいらつかせる)彼が、
スプーン欲しいって言ってくれれば貸したのに。
と一言くれたが、理由を言うのもめんどくさかったので愛想笑いで誤魔化す。
そしてそのまま2限に向かったのだが、
そこにいたのはルームメイトと最近インターンで
この学校に来ていた英語がタジタジな先生だった。
気まずい雰囲気が僕を襲う。
ルームメイトとはいえ大して仲も良くない彼と、
ろくにコミュニケーションも取ったことない先生と
3人きりの教室は僕に取っては拷問部屋だった。
普段なら10人近く生徒が来るはずなのにだ。
インターンの先生は少し困惑しながらも授業を始めた。
基本的には会話は最小限に、
視野には相手のことを入れながらも淡々とタスクをこなしていく。
授業は普段よりも早く終わり、僕は矢継ぎ早に教室を去っていった。
自分の部屋に帰る時にも、ルームメイトが同じ部屋に帰ってくると気まずいのは自明なので相手の行動を視野に入れながら勝手に心理戦を繰り広げていた。
幸い彼は部屋には戻らない様子だったので、
僕は1人で教室に帰り、プロテインを飲み、
机に向かって座った。
次の授業まで40分近く時間を持て余していた僕は、
日本から送ってもらったエスプレッソを使ってカフェラテを作り、ギターを弾いた。
本当はココアの気分だったが夜のお楽しみとして残しておこうと思えたので、カフェラテに妥協した。
ギターは彼氏と別れた時にAmazonで衝動買いをした安物のギターで、1.2.3弦がプラスチックか何かでできておりろくな音が鳴らない。
しかし上にも言ったように自分は周りの目を気にする傾向にあるため、他の部屋にいる生徒に聞かれなくて済むと考えるようにした。
多くの人がそうであるように
自分は自分の声が好きになれなかったタイプなので、
音源に合わせながら弾き語る。
少し気分が乗っている時は音源なしに歌うこともある。今日は後者だった。
ギターが飽きてきたので、小説を読むことにした。
最近お気に入りの村上春樹の「羊をめぐる冒険」を読み進めた。時間はあっという間に過ぎ、またも駆け足で授業に向かった。
クラスを見渡し1番後ろの角の席が空いていたのでそこに座った。良い気分だった。
授業の内容は数学と言って良いのかもわからない
不等式の授業で、なぜこの授業を取ったのかもわからないが、僕はしっかりと先生の言葉を注意深く聞いていた。
授業の途中、先生が生徒を当てて答えさせる
誰も望んでいないであろうイベントが発生した。
僕は間違えるわけないという自信に満ち溢れた
珍しくハキハキとした声で回答を先生に伝えたが、
「It's incorrect」と一蹴されてしまった。
普段ならこんなことがあれば赤面して今すぐその場を立ち去りたい気持ちになるが、
今回はあまりにも自分が間違えたことが驚愕すぎて、
少しニヤついてしまった。
間違っていたのは不等号の伝え方が正しく英語で説明できていなかったゆえの誤解によるものであったが、本当は正しい回答分かっていることを主張するのも面倒だと思い、黙って先生が僕に向かって問題を解説するのを聞いていた。
授業の最後にはテストがあり、
まあまあな速度で終わらせ周りを見渡すとみんながまだ取り組んでいるのが見えた。
中学生の頃の自分であればえんぴつを机に置く音を誇張してみんなに伝えるところだが、
僕は見直しをしっかりとした。
生徒の1人が立ち上がり、
先生の机まで回答用紙を持っていった後も
3度目の見直しをしていた。
4度目の見直しをしていた時に、
提出した者から帰ってよしと先生が言った瞬間に
回答用紙を机まで持っていき、昼食をとりにいった。
食堂に行き普段であれば誰も座っていない机へ向かうところであったが、今日はチームメイトの座っているところへ向かった。
昼食後には他の授業から出ていた課題があったので、
寮へ戻り、リビングのようなところにあるソファに座り、のんびりと課題を解いていた。
普段は自分の部屋に直帰するところだったが、
今日の僕は一味違うらしい。
課題を終わらせると自室へ戻り、本の続きを読んだ。
本の世界へ没入した。
気がつくと45分ほど経過していたので、
バスケの練習に向かった。
最近は練習が憂鬱で全く身が入らないことが多かったが、今日は久しぶりに集中して取り組むことができた。
練習終わりには人が多く普段は避けているトレーニングルームにも向かう始末。
今日は気分がいい。
寮に戻り鼻歌を歌いながらシャワーを浴びた。
スキンケアをし、鏡に映る自分を見る。
最近育成している髭も良い感じだった。
部屋に戻りストレッチをし、また本を読んだ。
1時間また没頭していた。
夕食の時間になっていたことに気づき、食堂に行くと、友達が誰もいなかった。
仕方なく誰も座っていない机で1人で食べていた。
途中で自分の一番の親友が僕がいた机に座り、
たわいもない話をした。
僕が先に食べ終わっていたが、僕は彼のお皿にはまだ食べ物が残っていることを確認し、
彼が食べ終わるのを待っていた。
彼が食べ終わり、お菓子を売っている自販機で夜のお供の1つでも買っていたら彼が物欲しそうな顔で覗いていたので、彼の分も買ってあげた。
お互い自室に戻り、僕は熱々のココアを作り、
本を広げた。
1日で1冊を読破するのは初めてだった。
本を読み終わると言葉では説明できないモヤモヤに襲われ、何も考えることなくガムシャラに歯を磨いた。
9時過ぎにはすでに上段ベッドに横たわっていた。
どうにかこのモヤモヤを言語化したかった僕は、
読んでいた小説を解説しているYoutubeやらサイトを見て周り、自分の納得する表現を探した。
そんなことをしていると眠気も去り、
ベッドの上でこうして今日の日記を書いていた。
ベッドに行く前に香水をつけなかったことを後悔した。良い匂いは眠りに誘導してくれる。
眠れないなら無理には寝ないがモットーだが、
特にやることもない僕はこの日記の終わり方を考えている。都合よく睡魔が僕を襲う。
明日もいい1日になるといい。
おやすみなさい。