布団
枕返しという妖怪を聞いたことがあるだろうか。
それの激しいバージョンなのか、という少し変わった体験をしたことをまたふと思い出したので今日はその話を聞いて頂こうかと思う。
まず一つ目。
これはその日に何があったのか全然覚えていないのだが、夜寝ていた時に起こったことである。
急にふと目が覚めた。目が覚めたが目はまだ開けてない状態だったと思う。
その瞬間物凄い勢いで敷布団が引っ張られた。
感覚的に言うと、時代劇などで殿様が座っている大広間の端から端までをジェットコースターくらいの速さで引っ張られていった感じである。
私は修学旅行で初めてジェットコースターに乗った時、怖すぎて現実に鼻血を出す経験をしたきり絶叫マシーンには乗ったことがないのだが、あれは確かにジェットコースター的感覚だった。
夢見たんじゃないのと言われればそれまでなのだが、怖くて、というよりも早すぎて身体中が固まっていたので自分的にはあれは限りなく現実だったと今でも思う。
それでふと力を抜くとまた引っ張られて、結局三回ほどそれが続いた。
ただ不思議なことに三回とも、目を開けると一ミリも動いていないのである。
因みに私が住んでいた家はびっくりするくらい狭い家でそんな広さはないし、なんなら家族が皆同じ部屋で寝ていたので、あの広間的距離も謎である。
そして二つ目。
その日は朝から体調が悪くて会社を休んでいた。
するとたまたまそれはユタさんが家に来る日だった。
部屋で寝込んでいたところ、どうやらユタさんが私に会いたいという。
ええー、と思いつつユタさんと対面したところ、“ああー、長らく彼氏連れてるなあ、ハッハッハ”という。
“どれ、それも取ってあげよう。”
と言いつつおもむろに立ち上がると、何やら呪文を唱えながら私の背中をさすっている。
ときどき唸り声を上げながらさすっていたが、どうやら思ったより苦戦していたそうだ。
何はともあれユタさんはこれでもう大丈夫だ、と言っており、私としてはまあそう言うならそうなんだろうくらいなものだった。
しかし問題はその後だったのである。
母親がユタさんを送っていくといい、私は家で一人ソファベッドでウトウトしていた。
そのソファベッドは一回座面を上げて下ろすとベッドになる、という仕様だった。
そうしてウトウトウトウトしていると急に凄い勢いで座面をひっくり返された。
あんまりの勢いに布団の時と同じように固まってしまった。
暫くして目を開けるとこれまた一ミリも動いた形跡は無い。
ええーと思いつつまた眠気に襲われるとまたひっくり返された。
流石に二回目で怖くなって起き上がったが、その後何が起きたとか何か見た、ということは一切無かった。
あのユタのおじさん結局祓えなかったのかなあくらいの記憶である。
この二つの出来事は一見共通点が無いように思えるかもしれないが、スピード感が全く同じ感じなので私の中ではセットで記憶に残っている。
同じような経験をしたことがある方がいたらどうか教えて欲しい。
何もかも謎な上に衝撃が大きかった、そんな話である。
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