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企業価値評価:第1章なぜ企業価値か?

本noteでは、マッキンゼー&カンパニー著、企業価値評価(第7版)について僕のまとめを書きたいと思っています。第1章では、資本主義の中心である株主価値の創造のエコノミクスと評価のプロセスを学ぶことの動機となる、2022年の現代資本主義が抱えている論点が列挙されていました。


  1. 株主価値を創造するとは?

  2. 根強い短期志向?

  3. 株主資本主義ですべては解決できない?

  4. ステークスホルダーの利害は一致させられるか?

  5. 価値創造を忘れることの危険性は?

  6. 本書について


価値創造の基本原則は、資本コストを上回る資本収益率で成長する企業価値を創造する、という極めてシンプルなものだ。

マッキンゼー&カンパニー ”企業価値評価” 第1章

この価値創造の基本原則、特に株主志向への批判が集まっています。これに対して”企業価値評価”では、経営者や投資家の誤用と誤解がインターネットバブルや金融危機を起こした、としています。では、どんな誤用や誤解があったのでしょうか?そして、誤用や誤解の原因はどこにあるのでしょうか?


図1 短期志向になる原因の分析

価値創造の原理原則の誤用と誤解は、経営者や多数の投資家の意識が短期志向に偏ることで発生するようです。例えば、環境への配慮、従業員の安全などの意思決定項目に対し、価値創造を”短期的な利益の最大化”と誤解し、最優先であると誤用することです。

本来は短期的な利益と長期的な価値創造を両立すること。これが経営者に求められます。しかし、長期的な価値創造が短期的数字に表れにくく、経営者による打ち手の周りからの評価が難しい。加えて、投資家から短期的志向のプレッシャーがある。これらの要因から経営者の地位に立ち続けるためには、構造的に短期志向に陥りやすい。そう説明ができそうです。一方で、長期的な価値創造だけを期待されている訳ではないが故に、投資家からのプレッシャーを否定することも間違いと言えそうです。


図2 資本主義で解決できない構造要因の分析

次に近年、資本主義に対する批判があります。前述の短期的志向を抑制したら、解決できるのでしょうか?どうやら、短期志向だけが原因ではない。そう言えそうです。

例えば、CO2排出量の削減といった環境問題の解決することは、ビジネスリーダーの決定範囲を超えています。つまり、国連や政府による規制や税制への介入が必要です。

ステークホルダーの利害の不一致を本質的に解消するためには、社会的価値に投資して、経済活動の繁栄が世界に広がり、顧客数が増えることが重要なようです。

インターネットや金融工学といった新技術は、経営者や投資家に価値創造の基本原則を忘れさせる力があるようです。ただ、新技術に適応した経営戦略や投資行動を行っても、持続できず破綻を迎えました。新技術は、価値創造の基本原則を壊すことができなかったのです。

価値創造の基本原則が新技術で簡単に壊れないのは、なぜなのでしょうか?僕の現段階の仮説は、価値創造の基本原則が創造性と効率性であり、変異と適応による生物の進化と類似しているからでは?と思っています。なお、生物の進化は、生物発生から35億年、世代を超えて環境適応しながら継続中のシステムです。

最後に”進化思考”を引用し、本記事を終わりたいと思います。ありがとうございました。

生物の進化は、変異と適応を繰り返すと自然発生する現象だ。遺伝子のコピーエラーから生まれた変異のなかからは、自然とその状況の空間的関係と時間的関係に適応したものが傾向として生き残りやすくなる。その往復を繰り返すと形態は自然と収斂し、ときには生存戦略が分岐する。それが生物の進化だ。

太刀川英輔 ”進化思考”

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