見出し画像

よしりんの思い出

よしりん先生をご存知でしょうか。漫画家の小林よしのり先生のことです。彼からは自分が小学生の時から影響を受け、いまなお影響を強く受けています。その遍歴を振り返ってみたいと思います。

1.おぼっちゃまくん

私が小学生の時、毎週出るコロコロコミックを母親がほぼ毎週、買ってくれました。理由はよくわかりませんが、ゲームや漫画には寛容な親でした。自分もゲームをしたり、漫画を読んだりはしていましたが。
その時のコロコロコミックのエースとして活躍していたのが、よしりん先生の描く「おぼっちゃまくん」でした。「ともだちんこ」とか「いいなけつ」とか、下ネタのオンパレードで、小学生男子にとってはこの上なく面白い漫画でした。単行本化もされ、さらにアニメ化もされます。全国の小学生が熱中したのでした。
我が家では何故か父親もこの漫画が大好きでアニメも一緒に見ていました。ある時、よしりん先生が近所の大学に講演に来るという情報を得ます。おぼっちゃまくんの大ファンだった私と父親はその日、意気揚々とでかけていにました。しかし会場に着くと雰囲気がおかしいのです。会場となった教室は、その大学の生徒で溢れていますが、彼らから笑い声は聞こえません。葬式のような静けさのなか、みな暗い表情で話を聞いています。教室の前では憧れのよしりん先生が話をしていますが、下ネタもバカ話もありません。内容は忘れましたが、ひたすらに真面目な話をしていました。雰囲気に圧倒された、我々親子は早々に帰宅したのでした。
いま思えば、このおぼっちゃまくん自体が金持ちを皮肉ったところから始まった漫画だそうで、細かい点を挙げるとキリがないので詳細は省きますが、時々、社会的に考えさせられるような部分が出てきたりもします。
おそらく本質的によしりん先生は真面目な方なのでしょう。そしてそんな方が子供相手に必死で遊んでくれたのが、おぼっちゃまくんのギャグ部分だと思うのです。また途中からおぼっちゃまくんの付録で、おこっちゃまくんというのが見開き2ページで始まるのですが、これがゴーマニズム宣言につながっていきます。そんな感じで、よしりん先生との(一方的な)付き合いが始まりました。

2.ゴーマニズム宣言

私が中学生の時に、オウム真理教事件が起こります。オウム真理教は、いまでは殺戮集団、テロ集団という認識ですが、当初は若者のカリスマ的な存在でした。私が中学の時に地下鉄サリン事件が起こり、オウム真理教に疑いがかかると、その流れが変わるのですが、一方で毎日のようにオウム真理教側が弁明の記者会見を開いていたため、人気が出ていたのも事実でした。上祐ギャルなんて、言葉も流行りました。私も友人も当時は中学生で、何も考えていなかったので、みんなで麻原の歌を歌ってみたり、何か不思議な状況になっていました。
そんな時によしりん先生と再会します。
一連のオウム事件の初期に起こった坂本弁護士一家拉致事件について、よしりん先生が興味深い私見を漫画で描いているという情報を聞いたからです。早速、母親が本屋でゴーマニズム宣言を何冊か買ってきました。まず坂本弁護士一家拉致事件についての回を読んでみると、推理小説のような感じでこの事件について私見を述べています。具体的には明言はしないものの、オウム真理教が犯人ではないかという内容で、とにかく推理の内容が非常にわかりやすく、納得がいったことを覚えています。なお当初から、この事件の犯人としてオウム真理教が限りなく疑わしい状況でしたが、警察の初動捜査がイマイチだったりした関係でなかなか捜査が進まず、ゴーマニズム宣言でこの事件が取り上げられた時は若干、この事件自体、風化しつつあるような時でした。また漫画が描かれたのは地下鉄サリン事件が起こる前で、世間的にもオウム真理教推進派の人たちもテレビによく出ていたような時期でしたので、この漫画の切り口はかなり斬新でした。実際の犯行の様子とは少し違っていましたが、オウム真理教犯人説を逆風の中、ぶち上げたのは勇気のいることだったと思います。
しかし他の話を読んでみると、中学生の私には理解できない内容ばかりでした。例えば被差別部落問題について。そもそも被差別部落という存在を知らなかったのです。ただ日本の闇によしりん先生の視点で切り込んでいき、それば非常に的を得ていることは理解できました。そして難しい社会問題を取り上げるゴーマニズム宣言を読みながら、小学校の時、近所の大学に講演に来ていたよりん先生の姿を思い出します。
「あ、これが本来のよしりんなんだな」
なんとなく納得がいった瞬間でした。ちなみによしりん先生はこの頃から朝まで生テレビなどにも出ていましたが、子供ながらに話があまり上手ではないなと思ったのを覚えています。ただ私が高校生くらいになった時にテレビでお姿を拝見した時、話が格段に上手になっていることに気づきました。その話を母親にすると、「慣れたんやろうな」と言っていました。

3.戦争論

高校に入ると、部活ばかりで漫画も含めて本を読む習慣がなくなるので、またよしりん先生からは遠ざかります。
私は一年の浪人生活を経て大学に入学したのですが、好きだった予備校の講師から多々、言われていたのは「しょうもない受験勉強は今年で終わりにして、大学生になったら本をたくさん読んで本当の勉強をしろ」ということでした。そして大学生になるとその言葉通り、活字中毒のように様々な本を読みました。その中でたまたま古本屋で見つけたのが、戦争論でした。
実は戦争論自体は私が高校生の時に出版され、話題にもなっていたのですが、そんなことはつゆ知らず、発売から数年を経て、古本として手に入れることになりました。これが2度目のよしりん先生との再会の瞬間です。
この本は自分の歴史観を変えるような一冊でした。
実は私は左翼の強い地域で育ったため、学校で「君が代」を習わないとか、国旗を掲揚しないということが小さい頃から当然のように行われており、私自身、それが普通と思って育ってきました。戦争については強い自虐史観を持っており、「日本は悪だ」くらいに思っていました。
戦争論では、日本を必死に守ろうとした先人たちのことが書かれており、彼らをリスペクトすべきということが書かれています。こういった内容に衝撃を受けた私は、この考えについて色々な人と話し合いたいと思うのですが、同級生で戦争の話に乗ってくれる人はなかなかいません。結局、大学の第二外国語の先生(おじさん)とひょんなことからサシ飲みすることになり、酔った勢いで「日本を大事にしなければならん」という演説をかましてしまいます。予想外だったのは、この先生が以外にこういう話が好きだったことで、夕方にサクッと飲んで終わるはずが、結局、5軒くらいハシゴし、最後に連れて行かれたスナックのトイレで私は嘔吐し、スナックの近くにある公園で眠りこむという事態に陥りました。その先生が救出してくれたので、特に問題にはならなかったのですが。ちなみに戦争についての熱い議論ができたのは、後にも先にもこの時だけでした。
さて再び、よしりん先生にはまた私は戦争論2も3も購入しますが、話がややこしくなっており、理解がついていけず、仕方がないので他のゴーマニズム宣言なんかを少し見ながら、よしりん先生とはつかず離れずでおつきあいさせていただく事となります。たしか薬害エイズの話とかは真面目に呼んだ記憶があります。
そして大学卒業後、働き始めてからは忙しくて、よしりん先生から再び離れる事となります。

4.コロナ論

そして10年以上が経ち、ひょんなことからよしりん先生と再会します。それがコロナ論でした。たまたま子供と本屋に行った時に発見し、すぐに購入しました。知らぬ間によしりん先生はコロナと戦っていたのでした。
彼の主張は、日本人はコロナを過剰に怖がりすぎている。データを見れば、普通の風邪と大差ないのだから自粛なんかしないで経済はまわすべきというものです。また指定感染症を外してどこの病院でもコロナ患者をみることがさできるようにすれば医療崩壊は防げる、医療従事者の給与をあげろなどといった主張もされています。なおワクチンについてはあまり賛成していないような印象でした。以前は漫画でしか、よしりん先生の話は聞けませんでしたが、いまはYouTubeなどでも発信されています。
彼の話を聞いて、戦争論以来の考え方が変わる感覚を体感できました。一方で、なかなか現実的ではないなと思う点も多々、あります。特に高齢者がコロナで亡くなるのは仕方ない、インフルエンザで毎年、もっと亡くなっているし、交通事故などと比べても少ないというような主張。統計的にはわかるのですが、医療側からすると理解が難しいかもしれません。いくら統計でモノを言われても目の前の患者さんが、自分がみた患者さんがすべてなので。確率が低くても、現実に目の前で容体が悪くなっていく患者さんを一例でもみてしまうと、新型コロナで死ぬのは仕方ないとは言えないのではないかと思ってしまいます。
一方で、政治家は統計でモノを言わなければいけません。いかに大多数の人が幸せになるかを考えるのが政治家の仕事なので。むしろ政治家がコロナ論は読んだ方が良いのではないでしょうか。

5.まとめ

小林よしりん先生との思い出を振り返ってみました。よく考えると小学生の時から40歳近くまで影響を受けているのはすごい話だと思います。これからもよしりん先生には、新しい気づきを与えていただけるとうれしいなと思います。
本当はAmazonのリンクとか貼れればよかったのですが、数が多いので割愛させていただいています。
今回も長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!