木々とつながりなおすための、グリーンウッドワーク(生木の木削り)
工業国(いわゆる”先進国”)の中で、国土に森林が占める面積の割合が世界一大きいのはフィンランド。次がスウェーデン。日本はその次で、世界で3番目です(国連食糧農業機関調べ、2016年の数字)。
このことをちょっと考えてみると……。工業国でありながら、人の暮らしと隣り合わせに森林がある度合いが高いのが、この3カ国なのではないかなと思います。
そんなこの3カ国に共通するのは、家や家具から食器まで、木を使って暮らしのさまざまなものをつくる割合が伝統的に高いこと。
△ フィンランドの昔ながらの木製スプーン置き場
△ せいろ、せいろの台、お盆、小皿、テーブル、すべて木製(写ってませんがもちろんお箸も)
△ごく普通に出くわす、こういうこテーブルセッティングも、オール木製……。
△わが家のある日の朝食後。木のスプンや器は、使い出すとやめられなくなります……。自分でつくったものなら、なおさら。
木々も、林も、森も、当たり前に身近にあって、私たちはなんとも思ってないフシがありますが、実はこれはとってもかけがえないことなんだろうと思うのです。身の回りの生活の品々に木製品の割合が高かったり、心情的にも木製のモノへの愛着が深かったりするのを、ともすると当たり前に感じてしまうところがありますが、実際は「森の国」ならではの文化の一部なんじゃないか、とも思います(おとなりの韓国では、お箸も器も、木製より金属製が好まれるのは興味深いところですね……)。
△ 高速バスの車窓から見える山林
当たり前にあるものは、かけがえなさがわかりにくくなって、大切にしにくくなってしまう、というのは世界中どこでもある現象だと思うのですが、この列島の森林は、先の台風でも病気を持った杉の木々が大量にあることがわかったように、手入れが行き届かなくなっていて、70%が”死の森”になっているそうです。
それをなんとか元気な森に蘇らせようと草の根でがんばっていらっしゃる方々の存在は、ほんとうに心強いです。林業も難しいなか、新しくがんばっているみなさんがいらっしゃること…。
代々人の手が入って保たれてきた、里山(深い森=”奥山”と人の生活圏との間にある緩衝地帯)についても、荒れてきてしまったことに気づいて、大切にしていこうとする取り組みが始まったりしています。
私は知らないことが多すぎて、少しずつ学んでいるところですが、森も、里山も、かけがえない宝物であることを、私たちは実感しはじめているんだと思います。
■グリーンウッドワーク(生木の木削り)をつうじて……
△ 伐ったばかりの枝などから、斧とナイフで削り出したスプンたち
生の状態の(=乾燥させていない、伐った後まだ水分が残っている)木々から、手道具を使って暮らしの道具をつくる「グリーンウッドワーク」と呼ばれる生木の木工を、私は暮らしに取り入れています。ひょんなことがきっかけで5年ほど前から学び始めたのですが、始めてから初めて、この列島の森林のことや木の文化のことに気づきました。
木々は前から好きでしたが、グリーンウッドワークを通じて木々と親しむようになって一層好きになり、身近に生えている木々に具体的に親しみを感じるようになりました。
そしてこの列島に、古くから生木を使った木工の伝統があったことも知りました。産業革命前から、森で木を伐ったその場で、乾燥前の木を手道具で割って削って刳って成形する木工が、長く営まれてきてたこと……。
シンプルな手道具を使って、みずみずしくやわらかな生の木々を加工するものづくりは、さらにもっとさかのぼれば、原始時代の営みにも連なる木工です。
斧とナイフで形を削り出していく作業に、こんなにも満足感があるのは、なにか原初的なものを思い出せるからなのかもしれない、とも思っています。
これから少しずつ、21世紀のここ日本で、グリーンウッドワークをたしなんでいる日々について書いていきたいと思います。機械を使わず、体力・腕力もそこまで要らないグリーンウッドワークは、木工経験ゼロの私にも始めることができた、心と体にやさしい木工です。
グリーンウッドワークをつうじて、自分がそうだったように、木々や森とのつながりや、木の文化のすてきさに想いを馳せる人がもし増えるなら、うれしいです。
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ぐり と グリーンウッドワーク:https://guritogreen.com