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「ゴールドフィンガー巨大金融詐欺事件」ネタバレ感想

最高でした!
としか言いようがないのですが、私見をいくつか

・チン(トニー・レオン)は人は殺していない
作中、殺害されるのはチンの敵ではなく、裏切る可能性のある仲間だけです。
つまり、殺人はチンを救うためではなく、本丸にたどり着く道を潰しているということで、あれらの殺人はチンの裏にいる人々、マネーロンダリング依頼人たちのために行われたものです。
ラウ(アンディ・ラウ)の妻子が襲われた際にチンが姿を見せたのは、脅しではなく無事を確かめにきたのだと思います。
と申しますのは、チンは愛妻家、子供思いの夫で父親だと思うからです。
ラウが安全のために妻子を海外に逃そうとした姿は、香港で一人(悪事を)働くチンと重なっているのだと思います。
・ツァンはどうなったのか
ツァンは殺害されたものと思われます。
が、息子は生き延びています。
罪を被ることと引き換えに生き延びたのだと思いますが、チンの意向も多少あるのではないかと思います。
息子は殺させないというのは、ラウの妻子を案じたこと同じ、チンの人間性の表れだと思うのです
・アンは殺害が明るみに出て、ツァンは不明なのは何故か
アンの殺害は、一事不再理のために敢えて公にしたのだと思います。
ツァンは他の協力者と違い、裏切る可能性ではなく実際に裏切っているので、えもいわれぬことになっているのだろうなーと思います。
・チンは何者か
冒頭の「人の役に立つ仕事をしたかった」はチンの人間性の根幹だと思います。
頼まれたら引き受ける、役に立ちたいと思っているから人間の機微に敏感で、そういう心性がこの仕事に資したのでしょう。
ただ、「得意を活かせ」と言われたときに見せた表情は、必ずしも詐欺を働くことを良しとはしていなかったことを伝えていると思います。
秘書のチュンとの関わりや、ラウの置かれた状況を合わせて見ると、チンも家族のために犯罪に手を染めていったのだと思います。
空っぽの金庫はチンそのものだったのではないでしょうか。
・チンとラウの関係性
家族の理解を得て(捕まえるまで帰ってくるなと言われて)十数年をチンの検挙に費やしたラウ、当初の仲間を失い、十数年を捜査の手を払って払って払って過ごしたチン。
敵対しながらも、互いが互いにとって一番近い他人であり、チンにとってラウは欺瞞、虚飾の必要のない唯一の理解者だったのだと思います。
ラウの「(自分がいなければ、あなたは)寂しかったでしょう」という言葉は、チンの真実でした。

チンの孤独と、ラウの強さ、どちらも良かったです。
「人の役に立ちたい」という善良な言葉にある、安易に自分を満たす弱さの恐ろしさも感じました。
最高でした。


ちょっと話は変わりますが
秘書のチュンも最初はタイピングの能力で仕事をしたかったはずです。
学校名を確認されて、開き直って煙草を吸う姿は切なく、採用されて必死で働いた先が犯罪への加担であったことが悲しいです。
そこに、貧しい密入国者チンと、おそらくは貧しさゆえに一度犯罪に手を染めたチュンという二人の弱者が見えました。
彼らは敷かれたレールを必死で走ったのだとも思いました。

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