関谷恭子句集「落人」感想 4
人日(2022〜2023)
花は葉に橋くぐるとき舟しづか
中七下五の措辞そのものが静謐です
橋をくぐる時の舟に橋の影が落ちるひととき、その少しの時間の静寂を見逃さない感覚の冴えと、それをこれほどシンプルに詠む技量、季語の斡旋が見事です
時間は移ろうもの、そして豊かなもの、その両方を伝えてくれる句です
ががんぼの沈みがちなるひとつがひ
沈むという表現がいいです
ががんぼの動きだけでなく、その重さが感じられます
番であればこそのリアリティだと思います
風筋の黒く立ちたる秋の波
波の表情の変化を風筋という的確な言葉と黒という色彩で見せた美しく強靭な句です
選ばれて牛は荷台へしづり雪
句集の中に、いくつかご一緒した句座や結社誌で拝読した句がありました
その時、自分が取ったかどうかは思い出せないのですが、この句も記憶に残る句でした
長々と感想を書き連ねましたが、読まれた方の鑑賞の妨げになりませんように願います
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?