三密スローガンの危うさと教育の役割

〜今やるべき「保健」と体育の始め方〜

生活習慣と科学

宮台真司がラジオで話しているのを聞いて悶々と考えた。

(J-Wave JAM the World 火曜日の「月一宮台」、口は悪いが理路整然としていて、冷静且つ鋭い視線が良い。)

私は教育に関わる人という以前に、社会に生きる1人の人間として、隣人が、とりわけ未来のある子どもが、死ななくて良い時に命を落とすことがとても辛いし、不健康で不幸な状態なのを見るのも辛い。

だから皆んなに幸せで健康でいて欲しい。

それを実現できるのは本人であって、
危険を防げる一番の人はその人自身だ。
(乳飲み子はまぁ別として)
そして、様々な危険を防ぐには知識が必要だ。

信号の赤は止まれ。
腐った臭いのものは食べない。
手を洗う。
などなど。

生活習慣化することで、自然と身を守っていて、身を守っていることすら忘れてしまう。
忘れてしまうが、そこには様々な「なぜ」から出発する科学がある。

これまでこんなに手洗いの重要性を認識し、
石鹸がウイルスを除去する仕組みや、
泡が手から指の隅々まで届く動画をじっくりみたことがあっただろうか。

でも、家から帰ったら手を洗いましょう!の習慣の裏にはそういう科学がある。
そうすると、4歳の私の子でも「バイキン全部落ちたかな〜」としっかり意識して手を洗えるようになる。

さて、日本で言われる「三密」だが、これはあまり科学的ではない。
どちらかというとスローガン。

密室って何㎡に何人いると密室なの?
密接って何m近づいたら密接?
もう一個の密ってなんだっけ…?
(もう一つは密閉だけど、いつも忘れちゃう)
みたいな感じ。

スローガンは空気を読み合いを加速させる

「三密」って口に出しやすいから、安心感はある。

でも具体的に科学的に分かりにくいから、なんとなーくこんな感じ?と周りを見渡したくなる。

「あれ?隣の人はいつもと変わらず井戸端会議してる」

「ここのスーパー、肉売り場の前は人がたくさん!」

「自粛っていうけど、まぁこのぐらい大丈夫なんじゃない?みんな結構近寄ってるし」

というように「みんながやってる」とか
周りの「空気」が「三密」を流動的にしてしまう。

責任の所在が曖昧になる

逆に政府は「三密って言ったのに守ってない!」とも国民を批判できるし、国民同士も批判しあうこともあるだろう。

まぁ、まさか総理大臣自らがこの危うさの隙を突いて答弁してたけどね…
しかも、私が思っていた構図とは逆パターンで。
「大分旅行は三密ではない」
「神社参拝は密閉ではない」
「三密が重ならないように伝えた」
スローガンが危ういのが、本当によく分かる。
2mって言ってたら検証できるけど。

つまり、責任の所在が曖昧。
総理大臣自らぶち壊しても、わかりにくいほどに。

だからキチンと「自分の頭で考えられるように」科学ベースの提示が必要だと思う。

日本以外でよく言われているのは
「ソーシャルディスタンス」
ソーシャルディスタンスは国によって、1.5m〜2mと具体的だ。
これは密接を防ぐ。

そして、1人当たりの面積はソーシャルディスタンスを2mとすると、2m×2m×π=4π㎡=12.56㎡(半径2mの円の面積)
単純に例えばスーパーの建物の広さを12㎡で割れば、一度にお店に入れる人数は決められる。
こうやって具体的な数字は、科学的に密接と密室を避けられるし、
色々な場面を判断する材料になる。

よく分からない4歳児にだって
「自分と相手の間にパンダ(約2m)が居ると思って間を開けるのよ」と伝えれば、距離感を感じつつ面白くソーシャルディスタンスを保てる。
WWFのソーシャルディスタンスの基準が最高に良いのよ。

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つまり空気を読む文化の日本には「三密」はちょうど生温くて心地よいのだろうけれど、
一番初めに戻るが、命を守る判断材料にはなってない。

いつ終息するのか分からない中で、
命を守りつつ、健康で居るためには、子ども自身が、そして大人も、一人一人が自分の頭で判断する必要があるだろう。
この状況において、スローガンの刷り込みは危険だ。
スローガンを掲げあっている間での、なんとなくの空気の読み合いになる。

もっと具体的に科学的に自分の頭で判断できる材料を、特に子どもには提供したい。

これが今すべき「保健」の授業じゃないだろうか。

というか、これまでの教育が空気を読んで良い子に振る舞うようにさせていたことを反省するときなんじゃないか。

そうじゃないと、子どもを家に押し込めることになるし、
また逆に外に出せば感染の恐れに晒すことになる。

外に出たらどう振る舞うのか、自分で考えられれば、緊急事態宣言が終われば、外で遊べるようになるんじゃなかろうか。

体育はまずはこの「保健」から始める必要がある気がする。

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