二番目_雲丹のグラティネのコピー

「グランメゾン東京」コースをご紹介

レストラン「グランメゾン東京」ついにオープン!

それに伴い、自信のあるコース1つのみで勝負をしている倫子シェフたち。

今回はその「グランメゾン東京」から3つのお料理をピックアップし、
料理監修をしてくださっているカンテサンス・岸田周三シェフのお話とともにご紹介していきます。

一番上)山羊乳のバヴァロア

Entrée
山羊乳のバヴァロア

山羊のバヴァロアは、カンテサンスのオープン当時からずっと出し続けている、いわゆるスペシャリテと呼ばれる一品です。
このお料理は、山羊のミルクを使ってゼラチンでかためているバヴァロアの部分に、マカデミアナッツと百合根が乗っていますが、このお料理で食べていただきたいのはそこではありません。この料理で食べていただきたいのは、お塩とオリーブオイル。それを食べてもらうため、バヴァロアやマカデミアナッツ、百合根の食感は、それぞれ個性はあるけれど、味は優しいものばかり。だからこそ、このお料理を食べていただくと、まず最初に感じるのはお塩でありオリーブオイルの香りなんです。
料理は材料が主役であって、そこに調味料で味をつける…という主従関係が本来のスタイルですが、このお料理では主従関係が逆転しています。調味料が主役であり、主材料があくまでも縁の下の力持ちであるということ。その逆転が、すごくおもしろいお料理です。
この料理を思いついたのは、当店の名刺代わりになる料理が作りたいというところからでした。当店の前菜の一番最初に出てくる品であり「これから始まる料理は、こういう味付けでこういう調味料を使っていきます」と、知ってもらうための「アントレ(前菜)」です。フランス語で前菜はアントレと呼びますが、この語源は玄関をさします。これがこのコースの入口になる、店の名刺代わり、という意味を込めています。
このお料理は、一年中出しているメニューで、材料は基本的に一年を通して手に入ります。しかし、ミルクを作る山羊の食事は、季節によって変わっていきます。春は青々とした牧草。冬場になるとそれが乾燥した牧草に。そうするとミルクの味も変わっていきます。スペシャリテとして毎回出ているお料理ですが、季節によって味の変化を感じてお楽しみいただくことが出来ます。

二番目)雲丹のグラティネ

Poisson
雲丹のグラティネ

「グランメゾン東京」のためのオリジナル料理です。
スタッフからのお題があり「第1話で雲丹の殻を使った料理があったと思いますが、お話の流れで、あの時と同じように祥平さんが尾花さんを手伝って、2人で料理を仕上げていくようにしたい。殻を使った料理を考えて欲しい」というお題をいただきました。
前回の雲丹の殻は、蕎麦の実の香りと雲丹の前菜でしたが、メイン料理の前のあたたかい料理ならではで、もう少しボリュームがあり、熱々なものにしようというのがあって、殻にほかの魚介類も詰めて表面をグラタン状に焼いています。
前回はスープのようなものでしたが、今回は熱々のグラタン。これらグラティネというのはフランス料理としては古典的なお料理です。洋食のようだと感じられるかと思いますが、昔からフランスにある料理で、ここでは「サヴァイヨン」という、卵黄を泡立てたものを使う、比較的クラシカルで、いわゆる正統派のフランス料理というイメージで作りました。
雲丹の掃除はすごく大変なんですよ。僕もフランス時代にやっていましたが、ちくちく刺さりながら、きちんとホールドしないと殻を開けられないし、でもちゃんと持てば持つほど、痛い。本当に大変な作業で、僕も雲丹の掃除は嫌いな作業の1つでした(笑)。
今回も改めてやっていただきました。申し訳ないなと思いつつ……

上から3番目1117アップ)メレンゲのアイスクリーム

Dessert
メレンゲのアイスクリーム

カンテサンスには2つスペシャリテがあります。
前菜は山羊乳のヴァバロア。デザートは、メレンゲのアイスクリーム。
この2つはカンテサンスでは必ず出る料理です。これもオープンしてから毎日作り続けている一品。
フランスで修行していた頃、僕が驚いたことの1つに、すごく大きなメレンゲのお菓子がフランスの至る場所で売っていたことでした。日本だと小さいメレンゲを焼いたお菓子はありますが、フランスは本当にびっくりするくらい…野球帽くらいの大きさのものが、山積みになって売っています。「フランスの人って一人でこれ食べるの?」と驚いたのを覚えています。というのも、メレンゲの半分は砂糖作っているんです。勉強のために一回食べたことがあるのですが、覚悟はしていましたが、想像以上に甘かった!美味しいものがたくさんあるフランスで、なぜあるのだろうと僕は本当に理解が出来ず、好きになれないものが「メレンゲ」。実は大嫌いな食べ物なんです(笑)。この大嫌いなメレンゲを美味しくすることが出来ないか…というのがこのアイスクリームを作った最初のテーマ。
僕が思う嫌いなものは、改善点がたくさんあるもの。自分が嫌いなものをテーマに料理をつくることが好きです。なぜならそこにはたくさんの伸びしろがあるから。みんなが大好きで昔から愛されているメレンゲのお菓子があり、そこに伸びしろがあるのであれば、僕がそれを改善すれば、今よりもはるかに美味しいものを作ることが可能じゃないかと思いました。
メレンゲには課題がたくさんありました。1つは甘すぎるということ。けれど、焼いた香りは、他にはない、いい香りがします。メレンゲを形成するために、砂糖をたくさん使うことは避けられない、でもこの香りは伝えたい…でも甘さは控えたい。そう考えたとき、僕はこのメレンゲを通常どおりに作ってから、粉々に砕いて、その粉をアイスクリームの生地の中に入れることを思いつきました。アイスクリームには、牛乳や卵も入っていますが、砂糖も当然入ります。そのメレンゲを砕いた粉を砂糖代わりにしました。
アイスクリームの種類は世の中にいっぱいあって、種類は出尽くしています。新しいアイスクリームを作るにはどうすればいいかと考えると、自分が一度作ったお菓子を原材料として使うことで無限の可能性が出て、メレンゲのアイスクリームという、今まで世の中に存在しなかったアイスクリームを作り出すことができました。
嫌いから始まり、いい部分を取り出し、嫌な部分をなくしている。
このアイスクリームが僕、大好きです。
そして、カンテサンスで一番人気があるのは、このアイスです。
メレンゲのアイスはそれで完成しますが、そこに最後にひと手間。
能登のお塩屋さんで、海水を濃縮して5倍くらいになったものを霧吹きにいれて、アイスにかけています。
塩キャラメルやスイカに塩をかけて、塩分をほんのちょっぴり感じると、甘さを際立たせる効果があると思います。僕、塩キャラメルもそんなに好きじゃないのですが(笑)、なぜかというと、お菓子なのに最後までずっと甘じょっぱい塩分を感じ続けるから。塩味は後に残るんです。デザートなのに塩分が残るのは嫌ですよね。
それに対して、スイカに塩をふる行為。あの調理法には意味があり、スイカの中に塩分があるわけじゃなくて、上から振っていることで、最初の一口は塩分をたくさん感じるけれど、二口目、三口目と、塩分は減っていく。最後の後味は甘さだけ。だから、メレンゲのアイスクリームも中に塩を加えるのではなく、できあがったアイスクリームに、霧吹きで塩分をかける。そうすると単調なものではなく、塩分にグラデーションが発生していく。デザートとして、最後は甘さで終わることが出来るんです。そこがすごく大事だと思っています。

日曜劇場『グランメゾン東京』ドラマ公式サイトでは、
放送直後に登場したお料理のストーリーをどこよりも早く掲載中です。
今週放送の第6話のテーマは「お魚」
目にも美味しいお料理の登場をお楽しみに。


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