ゲーセン慕情05 「その見つめる先には・・・」
電子音の本流に身を包まれた幼児は光るテーブルが並ぶ店内を忙しく眺め、時折気に入ったテーブルに近寄ったかと思うと齧り付くようにその光を凝視します。
幼児は特に何かをする訳ではありません。
ただカラフルな光の集まりが動き回る様を食い入る様に見つめるのです。
その幼児は恐らく特異な存在だったと思います。それでも異質ではありませんでした。
何故なら幼児の周りにいる大人達も幼児とは少々目の色が違いながらも一心にその光を眺めていたのですから。
夢見る空間と語るには程遠い汚れた空気とけたたましい雑音。そして目を焼く激しい光。
酷い外面とは真逆に、集う者たちにとってその場所は一種の桃源郷だった事は間違いないのです。唯一本物の桃源郷と違うのは俗世の欲と可能性が混ざりあった平穏とは縁遠いびっくり箱だった事でしょうか。
ゲームセンター・・・貴方はこの言葉にどんな感情を思い浮かべますか?
<次のお話>
<前のお話>
<ゲーセン慕情>
幼少期から積み重ねたゲームセンターに向けての想いを語っていきます。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?