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【対話的読書】ミンツバーグの組織論 Session1(後編)

組織づくりの「アート」「クラフト」「サイエンス」

意思決定、戦略形成、マネジメントなど、組織で重要なことの多くは、「アート」と「クラフト」(技)と「サイエンス」の3要素の関係という視点で説明できる。

あなたはどこに位置する?

マネジャーとして、または人としての自分として、各行からひとつ当てはまるものを選んでください。

『ミンツバーグの組織論』図表3-1 あなたのスタイルは?

ということで、私自身やってみました。

『ミンツバーグの組織論』図表3-1をもとに筆者作成

私のことを知っている人からは、「いや頭脳じゃなくてハートでしょ」とか言われそうですが、いいんじゃない、自己診断なんだから・・・
とはいえ、いずれにしても私はクラフト志向(技・実践)のようだ。

意思決定

意思決定は、「考えること」を意味するばかりではない。それは「見ること」や「行動すること」である場合もある。サイエンス志向が強い人は、まず考えることから出発し、アート志向の強い人は、まず見ることから出発し、クラフト志向の強い人は、まず行動することから出発する場合が多い。

戦略形成

私たちは「戦略」という言葉を定義どおりの意味で用いていないことが多い。現役マネジャーたちに、「戦略」の定義を尋ねると、たいてい「目標」「方向性」「ビジョン」、そして何より「プラン(計画)」といった言葉説明する。ところが、同じマネジャーたちに、近年自らの組織で戦略がどのように追及されてきたかを尋ねると、あとから振り返って「実現されたもの」として戦略を見るのだ。私たちは、理屈の上では、戦略を未来に向けた計画と考えているとしても、実際には、過去に起きたことのパターン、その組織が実行してきたことの中に見出せる規則性として見ている。
意図されていた戦略が実現した場合、それは「計画的戦略」と呼べるだろう。一方、意図されていなかった戦略が実現した場合は、「創発的戦略」と呼べる。創発的戦略においては、行動を積み重ねることを通じて戦略を見出していくことになる。
組織は計画を立てるだけでなく、学習もする。つまり、考えることを通じて戦略を編み出すだけでなく、実際に行動を通じて戦略を見出す場合もあるのだ。戦略はものごとを総合することにより生まれるが、分析(=アナリシス)は総合(=シンセシス)をもたらさない。
戦略は、市場におけるポジションであると見ることもできる。また、組織のパースペクティブ(視点)、言い換えればビジョンであると見ることもできる。戦略の4つの定義(プラン、パターン、ポジション、パースペクティブ)を重ね合わせると、戦略をつくりだすプロセスが4種類見えてくる。

1)分析に土台を置くサイエンス志向の「計画モデル」

2)見ることに土台を置くアート志向の「構想モデル」

3)さまざまな行動に土台を置くクラフト志向の「冒険モデル」

4)まず行動し、その後試行錯誤を通じた学習を土台を置くクラフト志向の「学習モデル」

ここまで読んで、自分はどれか?というよりは、戦略や組織の形成段階によって1)→2)→3)or 4)に実務的には取り組んでいる気がする。

マネジメントとは

マネジメントは、実践の行為である。マネジメントは、おおむね経験を通じて学習されるものだ。そのため、マネジメントはクラフトの性格が最も強い。ただし、優れたマネジャーはかなりの量のアートも活用している場合がある。ある程度はサイエンスも必要だが、サイエンスの偏重、とりわけ数値計測への過剰な依存は、「現代型マネジメント」における厄災の源になっている。

マネジメントは、コントロールと意思決定であり、実行と取引であり、思考とリーダーシップであり、それ以外のもろもろすべての活動のことでもある。しかも、そうしたすべての要素の単なる総和ではなく、すべてが混ざり合ったものだ。

『ミンツバーグの組織論』図表3-6 マネジメントのモデル

情報の次元のマネジメント
マネジャーは情報の次元において、コミュニケーションを取ること、そしてコントロールすることにより、情報を活用する形で人々に行動をとらせる。
・周囲の世界全体とコミュニケーションをとる
・部署内をコントロールする

人間の次元のマネジメント
人間の次元では、情報の次元に比べて、マネジャーが実際の行動にいp@ぽ近づく。人々を導くこと、そして人々と関わることを通じて、人々に行動を促すのだ。

・内部の人々を導く

  1. メンバーを後押ししメンバーの能力を育むことにより、メンバーがより有効に役割を果たせるようにすること

  2. チームを構築・維持すること

  3. 部署のすべての人々を結びつけるための文化とコミュニティを確立・強化すること

・外部の人々と関わる

  1. 部署外の人的ネットワークを築き

  2. 対外的に部署を代表する「看板」の役割を担い

  3. 部署のニーズを主張したり根回しをしたりするなど対外的に影響力を振るい

  4. 外部からの影響を慎重に部署内に伝える

行動の次元のマネジメント

行動の次元では実務から一段距離を置いて、ほかの人たちがものごとをおこなうのを助ける。具体的には、変革の旗振り役になったり、プロジェクトに加わったり、トラブルに対処したり、取引をまとめたりする。
・内部でのものごとを実行する
・対外的に取引を行う

マネジメントという仕事は、円満にバランスがとれたものでなくてはならない。そのためには、マネジメントの仕事について回るジレンマの数々と向き合うことが不可欠だ。

マネジャーが避けることのできない8つのジレンマ

  1. 計画の落とし穴
    多忙をきわめる日々にあって、どのようにして未来を見据え、計画を立て、戦略を練り、ものを考えればいいのか

  2. 現場との関わり難題
    マネジメントという行為の性格上、マネジャーがマネジメントの対象から乖離することは避けられない。そのような状況で、どうすれば現場の情報を途切れることなく入手し続けられるか

  3. 分析の迷宮
    マネジャーは、分析によって細かく分解された世界を、どのようにしてひとつにまとめればいいのか

  4. 数値計測のミステリー
    数値計測に頼れないときに、どのようにマネジメントをおこなえばいいのか

  5. 権限委譲の板ばさみ
    情報の多くが私的なもので、文書化されておらず、マネジャーの地位のおかげで入手できるものである場合、どのように権限委譲を行えばいいのか

  6. 行動の曖昧さ
    微妙な差異が大きな意味をもつ複雑な環境で、マネジャーはどのように決断力を発揮すればいいのか

  7. 変化の不思議
    マネジャーは、継続性を保つ必要があるときに、どうやって変化をマネジメントすればいいのか

  8. 自信の罠
    マネジャーは、どうすれば、傲慢への一線を越えることなく、過度の地震を保ち続けるのか

マネジメントとは、何本ものさまざまなロープの上を同時に歩く、多次元の綱渡りだ。その綱渡りを行う際は、正しくバランスをとらなくてはならない。それも、絶えず変化する動的なバランスをとることが求められる。

第一部の学び

マネジメントを「アート」「クラフト」「サイエンス」の3つのパースペクティブで考えたことがなかったので、客観的にセルフアセスメントするこrとで、実感的に扱い方を学べた。また、自身が体系的に考えているマネジメントのスキル体系に関する部分(マネジメントのモデル)に触れられたので、自身の研究の糧にもなった。後半のパートは、マネジメントの実務で悩んでいる人には、一度自分の役割を俯瞰して見る機会になるのではないか、と感じた。少なくとも、自分自身は8つのジレンマすべてに日々向き合っているという実感はある。

第二部 組織デザインの基本的な構成要素 に続く


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