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【対話的読書】ミンツバーグの組織論 Session5

4つの組織形態でそれぞれ大きな役割を果たしている力があるように、3つの力(文化の注入、上からの分離、対立の浸食)に対しても、それぞれの影響力が大きい組織形態がある。「分離」による自律性の影響が強い場合は「事業部型」、強力な「文化」の影響が強い場合は「コミュニティシップ型」、「対立」の影響が強い場合は「政治アリーナ型」とでも呼ぶべき組織形態が生まれる。

事業部型組織

事業が発展していくと「多角化」が進む。多角化の出発点は、既存の製品やサービスと関連のある製品やサービスに乗り出すこと。そして、最終的には、当初の製品やサービスと関連のない製品やサービスにも乗り出し、コングロマリットに移行する。多角化は「事業部化」をもたらす。複数の別々の事業をおこなう会社は、それぞれの事業ごとに別々の部門を設けるようになる。そして、本社部門が成果基準を課すことにより、それらの事業部をコントロールする。ただし、そうしたコントロールは「監督」と呼ばれる場合もあれば、「見落とし」というほかない場合もある。

事業部型組織への移行プロセス
・ステージ1 垂直統合
最初は事業活動の「チェーン」に沿って、組織が完全に統合されている状態から始まる。この「垂直統合」と呼ばれる段階では、「チェーン」の両端で、ほかの会社を買収したり、社内で新しい事業を育てたりする。

・ステージ2 副産物による多角化
統合されている状態の企業がより広い市場を目指す場合、中間製品を市場で他社に販売しようとするケースもある。こうしたケースでは、事業活動の「チェーン」に切れ目が生じる。

・ステージ3 関連製品による多角化
このステージへの移行は、副産物の販売が元々の製品の販売に匹敵するくらい重要になったときに始まる。

・ステージ4 コングロマリットによる多角化
事業部ごとに扱う製品やサービスが完全に差別化されているケースだ。

事業部型組織は分権的と言えるのか?
業務機能別の部署によって構成されていた大企業が多角化に乗り出すと、異なる事業観で業務機能の調整を行うことが難しくなってきた。その点、事業部型組織へ移行することにより、それぞれの事業部のマネジャーたちは、自らの担当する事業に集中できるようになった。問題はこれを分権化とみなせるかどうか?事業部型組織への移行は、垂直方向への分権化を限定的に実行しているにすぎない場合がある。組織構造の一段階下部へ、権限を委譲しているだけなのだ。

コングロマリット化の弊害
コングロマリットにはいくつかのメリットとデメリットがある。
①資本の効率的な配分
②ゼネラルマネジャーの育成
③リスクの分散
④戦略的機敏性

コングロマリットの利点は、この形態を採用することで解決できるとされている問題ー資本市場の非効率性や、独立した企業の取締役会の弱体性などーさえ是正されれば、もはや存在しないと言えるかもしれない。むしろ、自社の参加にある事業の中身をよく理解できていない場合は、真の多角化ではなく、いうなれば「偽りの多角化」にしかならない。

人は「効率」という言葉を聞くと、無意識に最も数値化しやすい要素に目が向くのだ。効率は、「数値計測可能な効率」に単純化されてしまう。このような傾向は、3つの深刻な問題を生む。

①コストは概して便益より数値計測しやすいので、効率を追求すると、単なる倹約の推進になってしまうことが多い。

②経済的コストの方が社会的コストより計測しやすいので、効率を追求すると、社会問題を悪化させてしまう場合がある。

③経済的コストの方が社会的コストより計測しやすいので、効率を追求すると、金銭重視の思考様式になり、質が低下しかねない。

マネジャーが数値指標にコントロールされる度合いが高いほど、みずからの行動が社会に及ぼす影響に意識が向かなくなる可能性が高い。その結果、事業部型組織では、マネジャー社会に対して無責任とは言わないまでも、社会に及ぼす影響に無関心な状況が生まれやすい。この点は、今日の組織が直面しているなかでとりわけ重大な問題のひとつだ。

コミュニティシップ型組織

あらゆる組織は文化(もしくは文化の不在)の影響を受けるが、文化が「メンバー」に及ぼす影響力がひときわ強力な組織もある。人々を同じ方向性に引き寄せる力がとりわけ強く作用する組織だ。
コミュニティシップ型組織では、メンバーはルールよりも「言葉」に従う。組織内で共有されている信念や、信奉するイデオロギーがもつ引力の力が強いのである。コミュニティシップ型組織には構造らしい構造がほとんどない。複雑なルールや規則、システム、階層の類いはない。その結果、コミュニティシップ型組織は、最も分権的な組織形態と言える。ほかのどの組織形態よりも、権力が均等に分散しているのだ。

コミュニティシップ型組織の長所と短所
コミュニティシップ型組織は良くも悪くも魅力的な組織形態だ。コミュニティシップは、私たちを鼓舞する半面、私たちを隷属させる場合もある。この両方が一緒くたになっているケースもある。
事業部型組織が断崖絶壁の突端に位置しているとすれば、コミュニティシップ型組織は、狭い尾根の上を歩いているようなものだ。孤立することを避けつつ、しかし同化することも避けながら、ミッションに向けて前進しなくてはならない。

政治アリーナ型組織

対立が充満している組織は、「政治アリーナ」とでも呼ぶべき状態になる。組織のいたるところで政治的ゲームがおこなわれるようになり、正式な権限はことごとく、取り除かれたり、一時的に機能しなくなったり、政治的な目的のために利用されたりする。
政治アリーナ型組織には構造がない。ほかの6つの組織形態では、調整のメカニズムのいずれかが重要な役割を果たしているが、政治アリーナの場合は、いずれの調整のメカニズムも大きな役割をもたないことが特徴だ。

政治アリーナ型組織の長所
組織論の分野で最もよく発せられる問いは、「どうすれば、この組織を変えられるのか」というものかもしれない。「組織をもっと政治的にする」という答えは聞いたことがない。しかし、組織で確立されている権限や専門知識や文化が変革を抑え込んでいる場合は、政治こそが前進への道なのかもしれない。政治的対立による激しい分断が生じることの利点として2つ挙げるなら、第一に、既存の権力秩序がいわば耐用年数を過ぎても存続し続けている場合は、政治アリーナで政治的対立が燃え盛ることにより、その体制を取り除ける可能性がある。第二に、政治アリーナの形態をとることを通じて、機能不全に陥っている組織の崩壊を加速させられる可能性がある。


【第5部からの学び】

3つの組織形態を読みながら、自分自身が身を置いている組織を当てはめて考えてみた。事業部型組織は、まさに長年所属している組織そのもので、コミュニティシップ型組織のような形態を渇望しながらも、なぜそうならないのかが分かった気がした。複業で所属している組織は、コミュニティシップ型組織そのもので、これも居心地が良い理由が分かったと共に、そこに内在するリスクについても考えさせられた。政治アリーナ型組織は、記憶の限り所属したことがないし、その必要性もわからなかったが、クーデターや革命の類いが起こる国家や、創業者と対立を生むような企業内闘争などが当てはまるのか、と想像しながら、組織も生命体であるなら、その在り様は、果たしてどこまで意図して変えられるものだろうか、とも考えた。

▶ 第6部 組織類型の枠を超えて作用する力 に続く


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