ジーユー
出会い編 part.1 その頃、コウジは東京拘置所にいた。 逮捕されてから2ヶ月が過ぎようとしていた頃、電車を乗り継ぎ面会に向かった。「車があったらな……」駅で切符を買い、改札を抜ける辺りでそう思った。車での生活がまだ抜けきらないのと、乗れない状況になったショックで、悔しさと後悔が入り混じった感じだ。 差し入れに持参したのは熱帯魚の図鑑と車の雑誌を数冊。コウジは熱帯魚を飼っていて、でかい水槽を持っていた。そう言えば逮捕されてから何ヶ月も経っているけど魚たちはどうなってい
プロローグ part.3 そんなどうしようもない状態の時、この車を買った先輩から電話が掛かって来た。 都川陽一だ。 陽一君と呼んでいたこの先輩は、今、逮捕されているコウジの兄だ。 「ジン、オマエ車のローン払ってねーだろう、うちにまで電話来たぞ」 「すいません、すぐに払いますんで」 「うちの信用問題にも関わるんだから、ちゃんとやれよ」 「わかりました」 そう言って電話を切った。 陽一君とはコウジが18歳の頃に一人暮らしをしていた学芸大学にあるマンションで出会った。
プロローグ part.2 当時、俺は渋谷区東で一人暮らしをしていた。 そこは東急東横線の狭い高架下に建てられた一軒家の二階で、六畳の居間と二畳の小さな台所にユニットバスが付いた部屋だった。 電車が通るたびに家が揺れ、車輪と線路の摩擦した轟音が部屋中にけたたましく鳴り響いた。そんな部屋にシンジは転がり込んできた。 ひょんなきっかけで一緒に住むことになったのだ。 そんな環境の悪い部屋に住む前は、 ・世田谷区のマンションで ・結衣という名前の彼女と同棲をしていた。 ・そこで
プロローグ part.1 先日、ネイルサロンとその運営をしている会社の広告制作を受注する事になり、打ち合わせの為その会社を訪ねた。 場所は渋谷道玄坂の百軒店(ひゃっけんだな)。 この界隈の事は良く知っていた、というよりかなり知っている。 何故なら昔はここら辺を拠点にして渋谷で遊んでいた。 というのも同級生の父が道玄坂でラブホテルを経営しており、高校の頃はそこがたまり場となっていた。 この地域は風俗や裏カジノにアダルトショップ、夜になると昔ながらの音楽喫茶やバーが看板を出