ブルーカラー猫の開発日記 Ver.2112

20XX年 4月2日

開発日記のナンバリングのまま執筆しているが、これは単なる愚痴である。

今回ばかりは我慢ならない。

日々私のブログを閲覧していただいている読者諸君には非常に申し訳ないが、私は今、限界である。


所以は、現在開発中のプロジェクトにおいて、非常に厄介な問題が浮上したためである。

というか、いちゃもんが付いたのだ。

全く、組織の上層どもは、商品を売ることしか考えておらず、我々開発チームには無理難題を押し付ける癖に、週刊誌やらニュースやらには媚び諂う。

道具はしょせん道具だ。

そこに善も悪もない。使い手の倫理の高さが表出するだけだというのに。

何故我々が愚かな世間の愚かな使い道を塞ぐために頭を使い、機能を制限しなければならないのか。

以前出した商品は、あらかじめ熟議の結果、出力を下げた。

結果世間は「使いにくい」「かえって危ない」などボロクソに非難したではないか。

そのさらに前に開発した商品は、我ながら良い出来であった。
世間からの評価も上々であった。

しかし、時計を読めない愚か者の死によって、24時間もの効果時間の猶予があったにもかかわらず、私は謝罪会見を開く羽目になった。

そもそもあの道具は極地開発や研究、危険作業者のために創られたものであり、物見遊山のためのモノではない。

あの道具のおかげで、宇宙開発や海底探索、スポーツシーンなどにおいても大きな進歩があったはずだ。

一部、擁護をしてくれた人たちもいたが、結局彼らも使用者ではない。

数人の愚か者の連続した愚行とそのドラマティックな死によって、今では格段に安い競合商品に無様な敗北を喫し、デパートでは割引のPOPが躍るワゴンの中が定位置になってしまった。

たかが化粧品もどきに万能ツールが敗北するなど、誰が考えただろうか。


今回開発中の道具も、半世紀以上叫ばれてきた物流危機を解決しうる可能性を秘めた道具だ。

正しく使えば生活をより豊かにすることは間違いない。

道具はおもちゃではない。

ましてや武器でもない。

生活を補助し、働く者たちを救うものだ。

なのに、「誤って人を踏みつけてしまう恐れ」だの、「突然の復元」「不意な発光」、「懐中電灯との取り違えによるトラブル」など、管理を徹底していれば起こりえないインシデントになぜ必要以上に気を使う必要があるのか。

そもそもこの商品は企画途中の他の道具も、効果は真逆ながら全く同じことがいえる。

その会議では「大きくなるというのは良いことだからな」などとばかげたことを満足げに語っていたくせに。



まあ、開発者の私にできることは開発だけだ。

これからしばらくは時間制限の実装と、復元光線の実装、出力調整についての会議三昧だ。

開発もいったん止まるので、のんびりやらせてもらおう。

いっそ、3V電池くらいで動くくらいの出力にしてしまおうか。

等と考えている、私である。


発売後、もし購入してくれるなら、読者諸君も入手してみてほしい。

小さいことは、良いことだ。

君の生活は、きっとスマートに、コンパクトになることだろう。

それでは。


次回は具体的な開発進捗の報告と共に、限定記事において設計秘話などを語る予定だ。


4月11日追記

今回の記事が、会社にばれてしまったようだ。今日中に限定公開記事へ移行するので、興味がある読者諸君は有料購読への移行をお願いしたい。

                               ブル猫

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