歯抜けになった 女子高生
今から 20年以上前、高校2年生の私は、前歯を4本失った。
その日は、部活が長引き、帰宅時間が遅くなった。
周囲は 暗くなり始め、 早く帰ろうと焦っていた。
学校から家まで 片道自転車で40分。
車通りの少ない 山道を走るのは 怖い。
力いっぱい自転車のペダルを踏みこむ。
私の自転車漕ぐのに力がいる。
なぜなら自転車の籠に どでかスクールバックが入っているからだ。
私はろくに勉強もしないのに、毎日辞書と教科書を持ち歩いていた。
だから私のスクールバックは いつもパンパンだった。
信号機のない小さな交差点に差し掛かった時、自動車が走ってくるのが見えた。
私は急いで自転車のブレーキをにぎった。
車に気づくのが遅かったのと 自転車の籠が重くてふらついてしまったので 自転車と自動車が接触した。
その反動で私は顔面から地面に落ちた。
自転車はほぼ止まっていたため、自動車は無傷だった(はず)だが、
ぶつかった私の自転車は タイヤのフレームが曲がり 私は 前へ飛ばされ 顔面から地面へダイブした。
運転手のおじさんが 「大丈夫!!!?」とあわてて駆け寄てくれた。
私は 目の前で起きた現実が受け止められず 動くことが出来なかった。
おじさんが警察と 救急車を呼んでくれ 母親も現場に駆け付けた。
事故現場が騒がしくなると だんだんと状況を飲み込む。
救急車に促され 私は歩いて乗り込む
唇と歯 以外は無傷だった。
意識も問題なかった。
ただ 口の中がえらい状態になっていたのは分かった。
救急隊員や 母の問いかけに答えようと しゃべろうとしたとき
口の中に 硬い破片がたくさんあることに気づく
歯だ・・・・
口を動かすと さらにぼろぼろと歯が崩れ落ちていくのが分かった。
え? え? 私 歯が割れたの? 歯がなくなるの?
一生歯抜け??
歯が ぼろぼろ落ちてきたことで 急に焦ってパニックになる。
病院について 看護師さんから「こわかったね」と声をかけられると
涙があふれた。
「歯が・・・私の歯が・・・」
泣きながら訴える私に 看護師さんは
「大丈夫だから」と優しく慰めてくれた。
そこから診察があり 警察の事情聴取があった。
車の運転手のおじさんも いつの間にか 病院にいた。
「ごめんね ごめんね」と私に謝る。
その姿が、悲痛で 逆に申し訳ない気持ちになった。
歯は4本ぼろぼろに割れて 歯抜けの状態になった、
歯と唇以外は無傷なので
処置がおわったらそのまま帰ることになった。
母親が会計を済ませるのを待っていると
姉がやってきた
私の顔を見るなり
「なんだ 元気じゃん」と安心したように言う。
私が歯がなくなったことを伝える。
「うん・・・へも はは はくなちゃた・・・・」
(うん・・・でも 歯がなくなっちゃった)
前歯がないだけで 空気がぬけてしゃべれないことが発覚。
おばあやんみたいな しゃべり方になった。
姉は 驚いた顔をして
「あ・・・え・・・ ごめ・・・ふふふっ ア~ッハハハハ!」
急に 大笑いしだす。
あまりの 私の間抜け面としゃべり それに 安堵で笑ったんだと思う。
(たぶん)
私は 歯抜けになって絶望していたのに 大笑いされて
文句でも言ってやろうかと思ったが
あんまり愉快そうにわらうので つられて 私も 笑ってしまった。
なんだか 元気がでた。
家に帰って 母親が先生から説明されたことを聞く。
これから 差し歯をつくる治療が始まる。
時間がかかる治療で、差し歯の前に 仮の入れ歯を作るところからスタートするとのこと。
な~んだ わたし 歯抜けで生きていかなくていいのね。 と安心した。
でも まって! 入れ歯が出来るまでは 歯抜けで学校行くんじゃん!!!
気が付いて また絶望 (笑)
しばらくはマスクで通学しました。何とかなるものだ。
教訓として得たものは
①交通ルールはぜったい守る(一旦停止をする!)
②自転車の籠に重いものを乗せすぎない
③使わない辞書は学校においておく
自分の不注意で 家族に心配と迷惑(治療費など)をかけてしまった。
車の運転手のおじさんにも 多大な迷惑と心配をかけてしまった。
本当に 反省いている。
皆様 あの時は 申し訳ありませんでした。
流水 波子 41歳 元気にしております。
あの時を反省し ゴールド免許でございます。