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令和6年度地域づくり実践講座について(実施報告)

「三方良しのまちづくり」inみどり市

群馬県地域づくり協議会事務局の星野です。
みどり市に共催いただき、令和6年12月1日(日)に、みどり市大間々町で「地域づくり実践講座」を開催しました。
みどり市では”三方よし”「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の精神が受け継がれており、地域づくりでも活かされています。今回、みどり市に根付いている”三方よし”のまちづくりについて学んだレポートをお届けします。

ながめ余興場にて開会

創作落語鑑賞 ながめ余興場

みどり市合併10周年記念事業で、特色ある三都物語として後世に伝えるため、各地域の偉人や物語を題材とした創生落語の台本を作成し、落語家に演じていただきました。これを契機に100年後まで語り継がれる事業として、市内の小学校8校の6年生に授業を行っています。
12月には「ながめ余興場」で市内全小学6年生のための落語会を行っています。郷土に理解を示し、みどり市に誇りと愛着を持つ子どもに育ってほしいという思いにより開催されています。

みどり市の歴史と文化を知っていただく「創生落語」の鑑賞を行いました。
案内人:椎名 祐司さん(NPO法人ながめ黒子の会)
○東町「石原和三郎物語」演者:三遊亭楽麻呂
石原和三郎は、日本中で歌われている幼年唱歌「兎と亀」「花咲爺」「金太郎」などを手掛け、故郷では花輪小学校教員となり、校長も務めた人物です。そんな和三郎が教員になるまでのお話です。
○大間々町「大間々あきんど物語」演者:三遊亭満橘
大間々町は昔から水がない地域でした。明治28年4月26日に起きた大火事を天明7年(1787年)から続く醤油商店「岡直三郎商店」が、町のためにと大事な醤油で消火にあたったお話です。

ながめ余興場

話に入るまでの導入部分は、世間話や身の上話から面白おかしく入られていました。また、小道具を使用し、しぐさや音で何をしているのかが分かり、始終楽しく聞くことができました。
○笠懸町「岡上景能物語」演者:三遊亭王楽の落語もありましたが、時間の都合上、今回は残念ながら聞くことができませんでした。

フィールドワーク➀ みどり市大間々町内

案内:松﨑 靖さん(三方良しの会)
場所:岡直三郎商店 醤油蔵、三方良しの井戸、蔵人新宇 ほか

まずは、創作落語「大間々あきんど物語」の岡直三郎商店の醤油蔵を見学しました。明治の大火の際、水がない地域で、町役場、警察、小学校、銀行までが焼失しました。醤油蔵を管理していた支配人が、こんな時こそ近江商人の”三方よし”の心意気と苦渋の決断をして、一升瓶8,500本(約15~16トン)の醤油で消化にあたったそうです。この火災は、天皇陛下からお見舞いをいただくくらいの「大火災」だったことを教えていただきました。

岡直三郎商店の醤油蔵

また、醤油の製造についてお話いただきました。蔵内にある桶は30桶で、1桶約4,000~6,000リットル!蔵内の柱や梁などには糀がついていてその糀菌で醤油が作られています。なので、こうして見学できる所は少ないとのこと。貴重な体験になりました。

岡直三郎商店前

岡直三郎商店脇の細い路地を進むと「三方良しの井戸」があります。

三方良しの井戸

この井戸は、岡直三郎商店が周辺に住んでいる人たちも使えるようにという配慮から、塀の外側の路地に面して作られました。現在も井戸組合があり、井戸を使用されているとのことです。
また、三方良しの会でも、路地などをボランティアの皆さんと整備されています。

整備されている路地

次に訪れたのは、蔵人新宇(kurart ARAU)

蔵人新宇

蔵人新宇には、明治から昭和にかけて造られた土蔵群があり、2021年に蔵の一つを改装し「cafe蔵八」をオープンしました。100年前の蔵を次の100年につなぐため、できるだけ手を加えない方針で工事が行われ、大きな柱梁、土間や土壁の一部がそのまま残されています。cafeだけではなく、宿泊施設やShopなどもあります。入口から中庭に抜け、景観や蔵内に至るまで、とても素敵な空間です。「地域にある資源を大切にしていきたい」という思いから、このような取組をされているようです。

蔵人新宇の代表新井さん(右)

その他、様々なみどり市の歴史が織りなす場所を訪れました。

みどり市観光協会
大間々蔵屋敷MAP(制作:「三方良し」の会)
道路元標
道路元標前
みどり市大間々博物館前
清寧館(剣道道場・コメヤ商店)
三方良しの会事務所(旧小林眼科洋館)
三方良しの会事務所(旧小林眼科洋館)内

フィールドワーク➁ リノベーションまちづくり

場所:複合施設Haji-Maru

みどり市の事例発表
発表:二ノ宮さん(みどり市観光課)

みどり市観光課の取組発表の様子

リノベーションまちづくりとは、まちの財産である遊休不動産(空き店舗・空き家)、活用されていない公共空間を使って、民間の力で都市・地域経営課題を解決する手法ですが、遊休不動産に限らず地域の資源をフル活用して行うので、空間資源にとどまらず地域資源や歴史的資源も含まれます。この手法は、現在全国で100を超える自治体が取り組んでいます。
取組が行われた背景のひとつに、人口減少があります。令和4年度大間々町が過疎地域として指定されました。ふたつめが、経営戦略のアプローチとして、民間のプレイヤーの意見も吸い上げた中で戦略して創っていく必要性があるということでこうした動きが出てきています。

令和4年度からリノベーションまちづくり事業を行っています。
令和4年度事業周知期
「リノベーションまちづくり」を広め、まちづくりに興味のある市民、実践者等を中心に事業の周知を図るとともに都市課題の分析を行いました。
令和5年度体制形成期 
都市課題の分析結果をもとにまちづくりを行う民間体制『家守会社』の創出を目指して、家守塾を開催しました。​18名5チームで開催し、株式会社いろといろをはじめとして、現在2つの団体が法人化しました。
令和6年度事業推進期
実際にまちを変える人材を発掘・育成していくために、リノベーションスクールを開催。前年度に事前講演会を開催し、リノベーションスクールでは、まちなかの遊休不動産を題材にして事業計画を作成しました。

参加者の中には、実際に物件に居住して活動している方もいらっしゃいます。実際の遊休不動産を活用しているため、所有者や住民からの理解も得られています。市としてもバックアップを行いエリア全体の価値の向上を目指していきたいと考えているとのこと。

発表:高瀬さん(みどり市都市計画課)

みどり市都市計画課の取組発表の様子

リノベーションまちづくりで町の至る所に新たな兆しが出てきました。ゆくゆくは全体の価値向上としてつないでいければと考えています。行政としても動きを支援できるように。例えば、歩きやすい街中。歩道の整備など、滞在中の快適な空間づくりを行政としてできるところで支援していければと計画策定をしています。
計画策定のポイント
松﨑さん(三方良しの会)にもアドバイザーとして参加いただていますが、策定の段階からワークショップなどご参加していただき、官民連携で、策民間の意見・声を聞きながら作っています。
ひいては、都市計画課の計画に官民連携を入れたことで、みどり市のまちづくりを民間と手を取り合って出来ればと思っています。

株式会社いろといろの活動について
発表:片山 翔平さん(株式会社いろといろ)

株式会社いろといろ(片山さん)発表の様子

株式会社いろといろは、会社を始めて1年で、まだまだ発展途上とのこと。「暮らしを楽しみながら、変えていく」をコンセプトに、アンカンミンカンの富所さん、同市の木村さんと役割を分けて行っています。
地域産業振興が課題で、盛んに行われていた事業がなくなり、人も減ってきる中、残っている歴史をなんとかつなげている状況です。今まで通りのやり方では消失してしまいます。活性化するには、やり方を”選択”しなければならない社会となっていて、ここでも”多様性”が求められています。
複合施設Haji-Maruは、2階をシェアハウス、ゲストハウスとして使用。1階は、曜日ごとに借りられる場所にしたいと力強く語られていました。はじめは、入ってもらえる方を探していましたが、何かを始めるには、コストがあまりにもかかるため首を縦に振る方はいませんでした。そこで、自分たちがそのリスクを取って、回す手法に変換しました。
社会実験として、子どもが勉強する場所やもちつきイベントなど、エリアがどうやったら楽しくなるか、プロセスを楽しみながら活動しています。思い通りにはいかないけれども、みんなに恩返しをしながら、色んな人に意見をもらいながら、へこたれずにやりたいとのことです。

ほか各見学先にて、リノベーションスクール生徒の皆様から、現在の活用方法についてや活動内容、これからリノベーションをして活用していく内容をお話いただき、新たに踏み出そうとしている姿を拝見することができました。

リノベーション中の施設内
リノベーション予定の清見邸にて

最後に、総合案内人の椎名さんからの言葉をお送りします。
「今まだ発展途上です。官民共働でやってきましたが、見ていただきたいのは10年後にここからどう変わるか。そして5年、10年後に集まって、よくやったと言われるように活動していきたい。」

駆けつけいただいた須藤市長

実践講座を通して、今までのみどり市とこれからのみどり市が、生まれ変わりながらも歴史を継続していく様子をお聞きすることが出来ました。
共催いただいたみどり市地域創生課様、みどり市大間々町を御案内いただいた皆様、参加いただいた皆様、ありがとうございました。

みどり市リノベーションについては▼から

アンケートから抜粋(参加者からの意見・要望)

・三方良しの精神を随所に感じました。会の方々がスーパースターなので、次世代育成も楽しみにしております。
・みどり市大間々町について改めて深く知る事ができました。
・地域づくりのアイデアや事例を学びながら、地域に関わる人たちの熱い心意気に触れることができました。「三方良し」の精神、「売り手良し、買い手良し、世間良し」という考え方が、地域づくりにも深く根付いていることを改めて実感しました。
・空き店舗改修についての過程が見ることができ大変良かった。
・かなり充実した内容でした!また、現地での研修、お願いいたします。
・歴史的遺産、資源を活かし再構築させようと官民一体になって共創して行くまちづくりを進める構想について、ロングスパンでの地道な取り組みには良好な地域の未来が垣間見ることが出来ました。是非とも先進地事例になるようご奮闘、ご努力とご活躍をご祈念申し上げます。又、時期を見てお伺い致したいと存じます。今回のおもてなし、ご配慮に感謝しております。ありがとうございました。多いに今後の活動の参考になりました…感謝しております。
・充実した内容でありがたかったです。もっと沢山の方に参加していただければと、もったいない気持ちになりました。
・実際に地域づくりの現場を見ることができたり、いろいろな方と顔を合わせて話をすることもできたことが良かった。
・街づくりの初期の段階の難しさが理解できました。なるべく協力出来る事から、自分も参加したいと思います。
・活動現地の講座を開催することの大切さを痛感しました次第…年度に一回は、五感で感じ取れる講座を開催してほしい!
・学びが多いので今後も今回のようなリアルな研修を企画してほしい。

群馬県地域づくり協議会事務局

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