第2話 コインランドリーとふたり①
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山を下りて人間のように生活し始めてから、雨が憂鬱になりました。
梅雨の時期は、特にお洗濯が大変です。突っ張り棒を駆使して部屋干しされた洗濯物たち。エアコンを除湿モードにしてサーキュレーターを使っても、晴れの日のようなカラっとした渇き方はしません。
節約のためエアコンをつけるのは居間だけ。いつもは自室で執筆する梨花ちゃんも、この時期は居間にノートパソコンを持ってきてカタカタとさせています。
コーヒーのおかわりを淹れようと立ち上がった梨花ちゃんですが、背が高いので歩く度に洗濯物が引っかかって、タオルなんかバサバサ落としちゃってます。
山にいた頃は雨が好きでした。
お昼の雨は、おとうもおかあも食べ物探しはやめて、一緒に巣穴で寝てくれました。みんなでくっついて丸まっていると、寝息と鼓動が感じられて安心できたのです。
でも今は、毛皮にまでカビが生えちゃった気分です。
何もやる気が起きません。狸の姿で座布団の上に転がるしかありません。落ちた洗濯物をもう一度干していた梨花ちゃんが心配そうに話しかけてきます。
「奈子、大丈夫?」
「梨花ちゃぁん……座布団がジメジメです……」
「ずっと干せていないもんね」
「ふわふわでホカホカの木の葉の上で寝たいよ~」
「……じゃあ、行ってみる?」
行くって、山に?
むくりと突っ伏していた顔を上げると、梨花ちゃんが1枚のチラシを見せてくれました。近所にコインランドリーがオープンしたというお知らせのようです。
「部屋干しじゃ限界はあるし、乾燥だけでもやってみようよ」
「でも……一応サーキュレーターで間に合っているから……」
「それにここ、布団も洗えるみたいだよ」
「え!?」
びっくりです。でも、梨花ちゃんから受け取ったチラシには、確かに布団専用洗濯乾燥機ありと書いてあります。
「うっ……お値段はまあまあするね……」
「よく考えた結果使ったお金ならいいんじゃない?」
梨花ちゃんはノリ気みたいです。
それに、やらないという選択をしたら、寝るときジメジメの布団の中でずっと後悔して朝を迎えそうな気がします。
「……来月ちょっとだけお菓子代を節約すればいいよね」
「私もお酒控えるよ」
こうして、ウチらは車に二人分のお布団を乗せて出発したのでした。