好きな映画

  とんでもない映画を見た。

  窮屈な世界から蠢く2人の少年は俺らがどう見ても美しかった。すべてが繋がってるお話が好き。ごめんねって抱きしめたくなった。自分を軸に生きてる人間には分かるはずもない卑屈さ。細やかな憎悪を俯瞰して見たとき、俺らがどう見ても彼らの存在は"怪物"そのものだった。初めて映画でこんなにもゾクゾクした。儚い子どもは新しい思考を湧出させてくれるなと思った。現実でもフィクションでも。視聴者に考えを巡らせる作品が好き。生涯明かされることのない、創作者に秘められた真実。監督も脚本家も本当を知らない映画もある。答えがない哲学、自由な道徳、柔軟な文学。溌剌な人間の魂が映像になって、目に届く。耳で拾う。頭で受け取る。緻密な哺乳類。中古のゲーム機や古本が並ぶレンタルショップでこの映画の元となる小説を見つけた。買った。宝物になった。大人は自ら輝きを探しに行く。どう見ても剣を持ったサムライ。

   明日のこと、考えすぎて破裂した風船。ひらひらと舞う銀紙は焼けて無くなった。少しだけ、焦げた匂いがした。
(「怪物」)

いいなと思ったら応援しよう!