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「永原トミヒロ展」

2021/02/01 @コバヤシ画廊

12月に「眠り展」に行ってから気になってた。ご本人はコロナの影響で会場に来られないので、しょげてらしたけど…。

橋の絵が見たくてやってきた。写真を載せた絵じゃなくて、青みがかった、水門のような橋の絵。水とか青とか夢とか静寂とか、よく考えたら結構どストライクなモチーフに満ちているようなきがする。
元写真は岸和田のふつうの田舎景色なんだけど、人がいないせいか、異界のような独特の雰囲気がただよう。音の無い絵、というより、音を吸う絵、だと思う。雨や雪が、音を喰うように。
画廊のスタッフさんは、永原さんの絵が「懐かしい」と言われるのは、抽象化された田舎景色が、岸和田を知らない人にも原風景を想起させるからかと話していたけど、私はここに、子どもの頃よりもっとずっと前の景色を見ているきがする。死後の世界、あるいは生まれる前の世界は、天国も地獄もなく、こんなふうなんじゃないか。空間の造りはそっくりそのまま、時間の流れ方だけが異質。静かで、つめたくて、あたたかくて、暗くて、もやがかかった夢の中ような、そんなかんじ。
冒頭に挙げたモチーフのほかに、信号機のある絵と、すべり台のある絵もよかった。最初いっしゅん気づかないのだけど、絵の奥の暗闇を見ているうちに、手前に佇むそれらがぼうっと浮かんでくる。一旦気づいてしまうと、細く白く光るそれらが妙にきになる。すごくきになる。信号機やすべり台に、なにかとくべつな思い入れがあった気さえする。抑圧されたトラウマ的記憶を、思い出せそうで思い出せない、不安と安心のはざまの浮遊感にさらされる。

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