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懐かしい“トイレの壁のにおい”に再会する瞬間

生まれたときに住んでいた家の、トイレの壁のにおいがたまらなく好きだ。

誤解しないでほしいのだが、いわゆる悪臭のことではない。おそらくトイレの壁の、塗料のにおいだ。

どんなにおいと言われると、言語化できない。ほかに似てるにおいを知らないからだ。小1で引っ越した次の家以降のトイレの壁は、あのにおいがしなかった。というか、におい自体ない。

だから普段は忘れているのだが、たまに出かけた先でトイレに入ると同じにおいがするときがあって「このにおいは!」とテンションが上がってそわそわするのだ。懐かしくなって、思いきり鼻から息を吸い込んでしまう。

通っている歯医者(治療が終わって1年行っていない)や、先日行った鬼怒川のホテルのにおいがこれだった。あと、たまたま入った飲食店のトイレとか。塗料の名前がわかれば突き止めたいくらい。

2歳以降の記憶がだいたいあるので、なんだか懐かしいのだ。便座の上に子ども用の便座を乗せて、用が足せたら母に「出た!」といったこととか。幼なじみとトイレの取り合いになって自分が入り、あわてた母が幼なじみを抱き上げて洗面所で用を足させたこととか、幼児期の思い出と一緒にあるのが、あの壁のにおいなのだ。何十年も経ったのに、そのとき嗅いだにおいってわかるのが不思議な気もする。

もし当時使われてていまは使っていない塗料だったら、あのにおいはどんどん減ってしまうのだろうか。またあの「このにおいは!」と思う瞬間にめぐりあいたいなと思う。

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