今よりもきれいな花を咲かせよう
Dragon AshのアルバムBuzz Songs
最後の曲の後にある隠しボーナストラック「Iceman」
スマホのサブスクで見つけて不意に記憶が蘇った
あの時、ボクは自転車を激走させて聴いていた
※
眠れない夜、どんなに必死に目を瞑っても
目蓋に映る景色がボクを寝かせてくれない
それは1999年の夏だった
ノストラダムスの大予言は見事に外れて
世界はまったく変わらない朝を迎えた
大学一年生のボクはサークルの一つ年上の先輩に恋をしていた
サークルの新歓コンパであった時からひとめぼれだった
ボブカットにゆるくパーマをかけた小柄な女性で
ずっとニコニコしているような人だった
新歓コンパの時も緊張している僕を気遣って話しかけてくれた
おかげでサークルにもすんなり馴染むことができた
こんな人が彼女だったらいいな
だけど先輩には彼氏がいて、
到底ボクなんか敵わないイケメンの彼氏だった
駄目もとで告白したら案の定、あっさり振られた
サークルの男の先輩たちは
ボクの勇気に感心したらしく、慰め、褒めたたえてくれた
だけどもボクの心はちっとも晴れなかった
この気持ちは無かったことにしよう
そう思えば思うほど心臓が高鳴る
気がつけば外は朝になっていた
まだ外の空気は冷えている
開けっ放しの窓から風が入ってきて
白いカーテンが呼吸をするように揺れた
ボクはいてもたってもいられなくなり
外に飛び出した
自転車の鍵を外してまたがり必死にペダルを漕ぎ始めた
彼女が出来た時後ろに乗せれるように
自転車屋で後ろ乗せを取り付けて貰った自転車だ
まだ、そこには誰も乗ったことはない
自転車屋のオヤジは
「学生さん、何乗せるの?」と訊いてきた
ボクは「彼女です」と言った
その時の自転車屋のオヤジの苦笑いがふとよぎる
イヤホンをつけてMDウォークマンを再生する
Dragon AshのアルバムBuzz Songs
「Under Age's Song」がかかる
悔しくて涙が出てきた
行く当てもなくペダルを漕ぎ続け
気がつくとボクは河川敷まできていた
自転車を止める
頭上は太陽が昇りはじめていた
最後のトラック「陽はまたのぼりくりかえす」がかかる
頬の涙が乾いていく
川は太陽の光を反射して輝いている
曲が終わってふと静まり返る
ボクは深呼吸する
胸は晴れていない
不意に激しいギターリフが流れる
隠しトラックの「Iceman」がかかる
ハンドルを強く握り
ボクは思いっきりペダルを蹴り漕ぎ出す
この想いをふり絞るように
立ち漕ぎしてスピードを上げる
視界がぼやける
風で前が見えないのか
涙で前が見えないのか
気が付くとボクは大声で「Iceman」を歌っていた
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